勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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信じられない……

 作戦会議が終わると、ルビー鉱山が乗っ取られ、奪還するために動くことを屋敷内に広めた。また同時にメイド長を泳がす意味が無くなったので拘束して牢に入れている。これでバドロフ子爵への情報漏洩は止まったはずだ。

 

 翌日になると朝日が昇る前にヴァリィとトエーリエが率いる兵とテレサ、臨時で雇った冒険者は町を出発して村の防衛へ向かう。

 

 一方のアイラは馬車を一台用意して乗っている。俺とベラトリックスは先頭、護衛の兵二人は馬車の後方を警備配置だ。全員馬に乗って走らせているので昼過ぎぐらいには目的地へ到着するだろう。

 

 天候はよく、移動は順調だ。

 

 ルビー鉱山へ向かう途中に襲撃か罠ぐらいあるかと思って警戒していたが何も起こらない。平和だ。

 

「どうして仕掛けてこないのでしょうか?」

 

 馬を操作して俺の隣に来たベラトリックスが聞いてきた。

 

「格下に本気を出す必要ないって思われているんだろうよ。それか攻めに来ても返り討ちにする戦力があるかだな」

 

 俺たちがどう動いても奪還なんてできないという傲慢な考えが透けて見える。

 

 それだけ今回の作戦に自信があるのだろう。

 

「子爵ごときがポルン様を下に見ている? 生意気な……」

 

 魔力の制御が甘くなって髪の毛が蛇のようにうねりだした。

 

 殺気すら漏れ出していて馬が怯えている。

 

 バドロフ子爵が舐めているのは俺じゃなくアイラなんだが、そんな単純なことにすら気づけてないほど感情的になっているのだ。

 

「ベラトリックス」

 

 やや厳しめな口調で名を呼ぶと、ハッとした表情になって俺を見た。

 

 理性が残っているようで安心したよ。

 

「申し訳ありません。つい……」

「気持ちはわかる。が、怒りは表に出して発散するんじゃない。内に秘め、決して折れることのない闘志に変えるんだ」

「はい」

 

 しゅんとして肩を落としてしまった。

 

 言い過ぎてしまったか? まだルビー鉱山にすら着いてないのに戦意を落とされても困る。フォローしなければ。

 

 馬を近づけると手綱を握っている小さな手に触れる。温かい。俺よりも体温は高いみたいだ。

 

「ただ、俺のことを思ってくれたのは嬉しい。ありがとう」

「いえ! そんなことはっ!?」

 

 山の天気のようにコロコロと表情がよく変わる。

 

 元気になったようで安心したよ。

 

「あぁっ」

 

 手を離すと残念そうな声を出されてしまった。もう少しつながっていても良いかなと思わせるほど、切実さがこもっていたのだが今回は諦めてもらうしかない。

 

 まだ距離はあるがルビー鉱山のある山が見えてきたのだ。標高は低い。子供でも山頂に行けるぐらいだ。

 

「麓に管理小屋がある。俺は先行して状態を確認しにいく。馬車の護衛は頼んだぞ」

「お気を付けて」

「そっちもな」

 

 馬の腹を軽く蹴って見通しの良い街道を走らせる。

 

 しばらくして山が近づくと木々が増えてきた。誰かが隠れている様子はなく引き続き順調だ。

 

 待ち伏せもなく小屋の近くにまで来たので馬から下りて木につなぐ。

 

 槍を手に持ち、木々に隠れながら管理小屋に近づいた。

 

「やはり、こうなっていたか」

 

 燃えかすしか残っていない。地面がえぐれていることから火炎系の魔法――ファイヤボールを使って破壊したとわかった。

 

 周囲に人の気配はない。

 

 さらに近づいて炭になってしまった管理小屋に使われていた木を触る。

 

 冷たい。時間が大分経っているのでルビー鉱山を襲撃するときに破壊されたのだろう。

 

 さらに調べていくと黒くなった死体を五つ発見した。ルビー鉱山に派遣された兵の一部だ。肉体は散り散りに吹き飛んでいるので爆発に巻き込まれたことがわかる。これじゃ即死だっただろう。

 

 苦しみを感じずに死ねたのであればよいのだが……。

 

 安らかに眠れることを祈っていると、草を踏む音が聞こえた。

 

 振り返り構えると、金属鎧を身につけ、剣を抜いている兵らしき男が三人いる。ヴォルデンク家は、このような立派な装備は用意できない。仲間でないことは明白だ。

 

 様子を見ていると俺を囲むように動いた。

 

「お前は冒険者か?」

「違う。今はヴォルデンク家に仕えている」

 

 リーダーらしき男が聞いてきたので正直に答えると、殺気が高まった。

 

 わかりやすい反応をされてしまえば正体なんてすぐにわかる。

 

「バドロフ子爵の子飼いか。ルビー鉱山を返してもらうぞ」

 

 俺の左右に回り込んだ兵が同時に斬りかかってきた。

 

 大きく後ろに下がって回避すると、槍で二連の突きを放って鎧を突き抜けて心臓を穿つ。

 

 これで数の有利はなくなった。

 

「なっ!?」

 

 圧倒的な力量の差に怯え、兵のリーダーは後ずさる。

 

「お前には聞きたいことがある。すべてを話せば生きて返してやるが、どうする?」

「嘘だ。信じられない……」

 

 一瞬でためらいもなく殺してしまったのが原因なのか、俺の言葉は受け入れてもらえなかった。失敗してしまったな。

 

 覚悟を決めたような顔をされてしまう。

 

「うぁぁぁああああああッ!!!! 死ぬ前に殺すんだッ!」

 

 叫び声によって恐怖をねじ伏せ、剣を振り上げて走っている。

 

 お粗末だ。

 

 リーダー格だと思った男は、新兵レベルの技量しか持っていない。装備だけが立派な張りぼてだったようだ。

 

 振り下ろされた剣を柄で弾き、蹴りを放って腹にぶち当てる。

 

 ゲロをまき散らしながら地面に転がって倒れてしまった。

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