「ウルトラ怪獣いけんなら仮面ライダーもいけんじゃない?」
「モッチーの葉っぱとジオウのベルトでなんか似てなくない?」←似てない

ぐらいのテキトーさから書いた作品です。
思ったより上手く混ざらなかったのと多分他の誰かがすでにやってると思うので、特に続きません。

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仮面ライダモンスターファーム(仮)PV的な短編

 世界がひとつの大陸であったころ……

 大いなる災いがおそった

 人々は天に祈り

 天は“あらたな命”を創った

 しかし“あらたな命”は

 あらたな争いを生み

 

 天は――

 ……天、は

 

 外より来る我らが神は、錬金術なる秘術を用いてその難局を乗り切った。

 石版に封じ込めた異世界の戦士たちの力を用いて邪悪なる怪物となったその命たちを打ち倒し、円盤石の中に封じ込めることに成功した。

 

  それより後、世界は安寧を取り戻し、浄化された『モンスター』たちを封じた円盤石と、異界の戦士『仮面ライダー』たちの力を秘めた石版『メモリカ』

 

 人々はそれらとめぐりあい……

 そして今日もまた、あらたな力と娯楽を求め続ける

 

 〜〜〜

 

 鉦が鳴る。

 鼓が打たれる。

 大笛が吹かれる。

 

 互いが互いに争うように折り重なる音は、かのスタジアムに来場したゲストや、その戦いの場に整列した主役たちの心も滾らせる。

 

 対峙する数人の男女と、それに混じる性別定かならぬ怪人たを見下ろせる、実況席の高みにあって、イベンターのエテックは大きく息を吸って整え、そして声をマイクに向けて張った。

 

『さて、今年もやって参りました、エキビジョンカップ! この日ばかりはグレード制が廃され、全てが対等、全てが平等! 本大会の戦績如何によっては、即時昇格、あるいは降格も検討されるとあって、若き闘士たちは願ってもない下剋上のチャンスに、また既に高みにある者はその座を死守せんとすでに互いに燃えております!』

 

 実態はともかくとして、そう熱っぽく弁を振るう三十そこそこの男の、そして数百千にも及ぶ観客たちの眼下で、かの『催事』が進められていく。

 

 現れたのは、先に整列していた闘技者……所謂『ブリーダー』たちの内、二人一組。

 一方はスカーフを観客に手を振り、多少あざとさが目立つも愛嬌のある栗毛の少年。もう一方はそれとは対照的に、トックリを思わせる顎鬚な特徴的な、ターバン姿の大男である。

 

 ただし彼らは、並び立つのではなく、向かい合う。互いに今から死力を出して試合う敵であった。

 

「両者、ドライバーをセット」

 芝生の上、彼らの間で審判が均等かつ適切な間を置いてそう命じる。

 

〈ブリードライバー〉

 それが彼らが腹前に据えた灰褐色の機材の名であった。

 土器のような、だが何者にも侵し難いような光沢を放つベルトが、その装置より伸びて腰回りを絡め取り彼らの身柄と自らとを接合させる。

 

「円盤石を」

 次いで指図が飛ぶと、少年は茶色味の深い石を、大男はやや緑がかった黄色の同型物を腰元のホルダーより抜き出した。

 

 いずれも、それなりの厚みを有した平面の、円き石塊である。色は違えども、表面いっぱいに背を丸めた甲殻類のような刻印が彫まれているのは共通している。

 固定されたバックルの中央カバーを開き、片手に余す程度のサイズ感のそれを、セットして締め直す。

 

〈ハム〉

〈ネンドロ〉

 少年と大男の装置が、内蔵された怪物の称名を抑揚のない少女の声で読み上げる。

 

「次いで、メモリカを」

 続けて促されるまま彼らは円盤石よりも一回り小ぶりな、黒い石版を手の内に握り込んだ。

 

〈ナックル〉

〈バイス〉

 それぞれに、シンボルが刻印されたそれを、箱の上辺のソケットへ。

〈Loading〉

 というアナウンスとともに、装置内部で円盤石が回転を始める。

 

「へーんー身!」

「変身!」

 

 おどけたように頭の上で長耳を模して指を立てて見せる少年と、力瘤を作って見せる男。いずれも観客に向けたアピールである。

 だが次いでボタンを押した時、彼らを中心として、劇的な変化が起こる。

 変身。その宣言に相応の。

 

〈ブリードライド! ハム×(クロス)ナックル!〉

〈ブリードライド! ネンドロ×バイス!〉

 

 モンスターと、異形の戦士を模した民族的な像が地表から突き出て彼らを挟み込む。円盤石の幻像が彼らの足下で回る。そこから放たれた光の泡が、彼らを包み、鎧や未知の質感の皮革となって彼らを異形の仮面の騎士へと変える。

 

 少年がまとうは関節部を茶褐色の毛皮で、肉体の要所をごつごつとした種子のごとき軽装甲とメットで覆う。

 円く赤い瞳と、オレンジのメットの上から飛び出た兎の耳が、全体の無骨さの中で浮いている。

 何よりも目を惹くのが、両方の拳であろう。

 そこだけが、宝珠の光沢を放って何処よりも分厚く守られ、拳闘に用いるグローブのようでさえある。

 

 一方で、大男はそれとは対照に、節目のない、流線型かつ黄土色のボディースーツの上から、そして頭から、ピンク色のロードランナー種がごとき被り物をしている。その堂々たる体躯、いかった双肩はそのままに。

 児戯に使われる泥人形と前衛芸術の狭間に立っているかのような意匠である。

 

 そして像が崩れ落ちて消滅し、両者の変身の残光が収まると同時に、試合開始を告げる銅鑼が打ち鳴らされた。

 先に仕掛けたのはウサギのライダーである。

 ややフライング気味に先手を取り、跳躍と共にパンチを突き出した。

 

『赤の方角! 仮面ライダーナッツ! 新進気鋭のスピードスター、ナンディー・ストーク! ルーキーながらにその愛嬌と変身者のルックスで女性人気の強い選手です!』

 

『だがそんなことは関係ない! 青の方角、仮面ライダーオクレイマン! 通称新人狩りのオクレイマン、フリット・オリーバ! その剛拳で屠ってきたルーキー数知れず! 死人や再起不能者を出したというのは本当か!?』

 

 熱っぽい紹介の下、試合は早いテンポで推移していく。

 相手からの攻撃を避け、少年戦士……仮面ライダーナッツは四方を軽やかなフットワークで跳ね回りながら拳を繰り出していく。のみならず、足技も織り交ぜる。重戦士を相手取るには理想的なヒットアンドアウェイ戦法、試合運びであった、

 

 一方で、仮面ライダーオクレイマンは、我からその場を動くようなことはしない。動けばかえってその隙を突かれることを経験から知っている。背を丸めるようにして耐える。反撃は最低限の手数に抑える。

 そうして木偶を装い、逆に相手の油断を誘った。

 果たして未だ幼いこのファイターは、自らの優勢を過信した。

 安全圏の範疇を一瞬、一寸逸脱した。その瞬間を、オクレイマンの剛拳は穿った。

 無論、それとて平常ならば届く前にナッツは逃れ得ただろう。

 だが腕は伸びた。拳の先は四角く変形し、拡張した。

 

「あ、ヤバ」

 少年の声で、迂闊を嘆く声が漏れた。

 ハンコ型に変形したオクレイマンの腕がナッツを直撃した。

 マッハのパンチは音を追い越して、スタジアムの端まで吹き飛ばされた。

 さながら敗北を刻む焼印が如く、ナッツの顔面から胸部正面にかけて大々的に、アヒルとも悪魔ともつかない朱判が捺されていた。

 

「勝者、仮面ライダー……オクレイマン!!」

 

 まさしく一撃必殺、一発逆転。

 ナンディ少年を守護していた存在が泡となってほどけていく。それを見届けた審判がオクレイマンの立ち位置に向けて手を突き出した。

 

 歓声と、それと同等の悲鳴やブーイングの中、オクレイマンは両腕を曲げて突き上げつつ、中指を立てたのだった。

 

 〜〜〜

 

 伯仲。拮抗。あるいは圧勝、瞬殺、鎧袖一触。

 本来の階級差を飛び越えた戦いは、様々な戦いの模様やドラマを生み出し、人々を興奮のるつぼへと叩き込む。

 

〈ホッパー×ゼロワン!〉

 

 灰色の稲妻が一筋、天地を余すところなく駆け巡る。

 それは時折速度を緩めて攻撃のモーションに入ると、姿がかろうじて見える。

 ネズミとも熊ともつかぬ魔物を鎧にあつらえ直したかのような、小柄かつシンプルな甲冑姿。機動性をどこまでも追及したかのような無駄のない造形だが、その脚にはどことなくバッタのような趣があり、大きめの赤目にはどことなく小動物的な愛らしさがある。黄色いラインがボディスーツの節々を、回路のようにつないでいた。外したパーカーのように、黄色い母衣が後頭部や頸を保護している。

 

『速い、速いっ、とにかく速い! 西からやってきたスピードスター! 仮面ライダーハリマオー! キーボ・ナダル! Dランクにおける最年少選手、次世代を担う若手のホープです!』

 

 空気裂く雷鳴に負けじと声を張る実況に、

「いや、なんやこの解説!? スピードしか能ないみたいやんけ!?」

「そう? けっこう的を射てると思うけど?」

 と、流れる血筋がそうさせるのか、思わず突っ込んだのを、組み合う対戦相手が自然体で返す。

 

 こちらも十分に奇形である。

 その上腕も、頭も、とにかく方形めいたパーツで固められている。濃い緑色が主体となっているから、さながら、ブリキの青虫といった塩梅だ。

 四角で平らな顔面の中心に、全体色と同じ緑の単眼が光る。

 

「抜かせっ!」

 と繰り出したフックは、その頭部にあえなく叩き落とされる。

 如何な戦士とて、思わず、痛みに悶絶する硬さだった。

 

〈コロペンドラ×電王!〉

 

『その前に立ちふさがるのは、Cランク! カガヤ・ミタマ! 仮面ライダーピボルスっ! こちらもCランク最年少! ハリマオーがスピードスターならば、こっちは変幻自在のトリックスターだァ!』

 

 と紹介された通り、その両腕自体が、奇手である。

 形状のみならず、その手段もである。

 

 正拳のように突き出した腕の先端から、丸められた弾頭の如きものが朱色の放物線を描いて飛んだ。あるいは、煙突のない汽車か。

 それは自身の軌道上に枕木を生み出し、レールを敷いて、飛び退いたハリマオーに追い縋る。

 そして残された腕部の横から射出兵器が展開して、エネルギー弾による投石や砲撃を盛んに浴びせてかかる。

 

 だが、流石の速さである。

 本来足場のない空中でさえ自在に滑り抜けて、蛇行する線路や弾頭を巧みに抜けていく。

 

 そしてその網の中を小柄な身柄を利用して一気に突き抜けると、急接近。雷光を帯びた飛び蹴りを放たんと狙う。

 

〈ダブル!〉

 それを仰ぎ見たまま、冷静な手捌きで、ノールックで、ピボルスはメモリカを緑と紫の刻印が描かれたものに付け替えた。

 

 空中に散らされた線路や弾頭が泡と消え、代わりにその両腕は別のガントレットに置き換わった。

 左には黒字に、道化者の靴のような紫の刻印が。本体よりもやや明るい緑の右手の甲には翠風の刻印が。

 どことなく割符を想わせる方形状のガントレットの内、右側を掬い上げるように築き上げた。

 だがその拳風は、翠に色づき、やがて竜巻へと変わる。

 

「のわっ!?」

 無数の線の攻撃を躱したハリマオーも、面の攻めには抗えない。

 ましてや軽量短躯と来ては、たまらず巻き上げられる。

 そして自らが生じさせた風に、ピボルスもまた乗り上げた。

 ハリマオーと同じ高さに至ると、今度は左手を突き出して彼を殴りつける。

 

 その拳の特性たる、致命的なクリティカルを喰らったハリマオーは、そのまま地面に墜落したのだった。

 

 〜〜〜

 

 それぞれが自らの勝利のために繰り広げる真剣勝負。であるが故に、そこに余計な軽口叩く戦士はそうはいまい。

 

 だが、その道化師は良くも悪くも違っていた。

 

〈ジョーカー×ウィザード!〉

「おら、来いよ。するんだろ? 下剋上」

 

 よく喋る。よく煽る。

 指輪を嵌めた五指を前後させて挑発し、飛びかかってきた上下三色のライダーをいなし、その延髄に高らかに蹴りを回し入れる。

 そのアクロバティックな動作のたびに、首元から腰にかけてはためく黒いロングコートの真紅の裏地が、さながら夜の灯火のごとくちらつく。

 顔には、涙化粧をした道化をやや幾何学的にアレンジしたマスクがかぶせられている。

 胸板から腹回りを、ルビー、あるいは血の結晶を塗り固めたような装甲が保護してはいるものの、そこに達した敵の攻撃は、ただの一度とてなかった。

 

〈あまりに不遜! あまりに不敵! フェアプレイの精神はこの男にはない! だがそれが許される! それがゲームメーカー、仮面ライダーカーマイン! 炎の道化師クィン・マーロン! 試合開始より仮面ライダーカプランを翻弄し続け、一方的な試合を展開しています!〉

 

「ちっくしょー! 好き勝手言ってくれちゃって! オレだってなぁ!」

 という憤懣は、実況、対戦相手いずれに向けたものだったのか。

 仮面ライダーカプランから発せられたのは、中年男の甲高い裏声。だが、その恰好は丸みを帯びた感じにデフォルメされた鷹頭に虎模様の腹、バッタの脚に平たい足裏というアンバランスなもので、こちらも大概に道化者である。

 

 だが、せめてもの意地か。

 気を吐くと同時にカプランの身体はその配色に合わせて三分割された。そして別方向から一斉に攻撃を仕掛けた。

 

 すなわち鷹。長く伸び上がった首でカーマインの頸部を締め上げ、頭に気を取られているうちに、背中より回した虎の腕力と爪とで羽交い締め。そしてバッタの脚が逃れ得ぬよう両脚を絡めとる。

 

「どうだ! これでも一方的か!?」

 得意げにそう嘯く怪人に、

「あー、こりゃ抜けらんねーなー」

 などとうすら寒い調子で困って見せた直後、

「……なんて、言うと思うか?」

 と、その発言を翻す。

 

〈リキッド プリーズ〉

 何処からともなく流れた呪文とともに、カーマインの身体は液状と化した。

 そして水をまき散らしながら脱出マジックを果たしおおせ、再び実体化するとともに、三パーツまとめて、蹴り上げた。

 

 

 再集結しながら転がるカプランの前で、カーマインは自らのメモリカを換装させる。

〈ジョーカー×龍騎!〉

 道化師の笑い声に交じり、鏡の割れるような音が聞こえると同時に、彼のコートは表面が赤黒く染まり、胸の装甲と正真正銘、正統派の騎士のそれへと置換される。顔面は、銀竜の頭部を象り、本来は竜の額に当たる部位の、三本筋の隙間から道化師の揶揄の眼光が潜む。

 

 このわずかな時間こそがチャンスと、体勢を立て直したカプランが飛びかかる。

 だが、先の脱出劇で散らされた液体の反射から、いわゆるドラゴン種とはまた形の異なる、蛇のごとき鋼の竜が現れ、横合いからその突撃を打ち崩す。トビウオよろしく、水たまりから水たまりへと飛び移りながら、不意打ちを度々食らわせていく。

 

 だがそれさえも、カーマインにとっては本攻めではない。

 本命は、彼がバックルのボタンを押したときに発動する。

 

「トドメだ」

〈ガッツ・フルバースト!〉

 

 内蔵されたジョーカーの円盤石がその回転を速め、車輪が滑るがごとき雑音がシークエンスを表すかのように響く。

 その合間に、カーマインは前転や側転をくり返して逆に自らカプランの下へ攻め込み、そして間合いに在って高く飛び上がった。それに呼応して、水鏡より這い出た赤竜が、背を反らすようにして伸び上がった。

 

 そして主人と共に空中に飛翔してうねり、そして吐き出した火焔をもってその推進力とする。

 

〈デスファイナルベント!〉

 

 加速したカーマインは炎を宿した脚が、鎌刃の鋭さを帯びて大きく横に振り抜かれる。彼の敵……否玩具へ向けて撃ち出したそれの直撃を受けたカプランは、羽をもがれたアヒルのような悲鳴、そして爆炎と共に彼方まで吹き飛ばされたのだった。

 

 〜〜〜

 

 その後も、種々様々な、動植物と非生物を混ぜ合わせたかのようなブリーダー、もとい仮面ライダーたちが、現れては互いに鎬を削る。

 

〈ゴースト×スカル!〉

『トレードマークはシルクハット! 地獄からの使者! シブカワとかでバトル以外のところで今大人気、仮面オフリィ!』

 などや。

 

〈ピクシー×セイバー!〉

『人気ならばレジェンド級! 凛々しく麗しいルックスと戦闘スタイルは、男性女性人気一位も納得です! Sランクの紅一点! 華一輪! それが仮面ライダーシアラだァ! ……え、えーとルージュさんを忘れていました。失礼しました。ルージュさんご本人から猛抗議が入ったので訂正させていただきます』

 だとか。

 

〈デュラハン×ゴースト!〉

『公式発表一切無し! 全てが謎に包まれた剣士! その正体は本物の首無し騎士(デュラハン)ではないかとさえ噂される、愛無き幽玄剣豪! その名も仮面ライダーラブレスだぁッ』

 だの。

 

 いささか誇張の強い言い回しで紹介された中、あるいは観客はこのマッチを期待していたのかも知れない。

 ……それの戦いではなく、しょうりではなく、奇跡のような敗北を。

 

『さて、名残惜しくも残る試合もあと一戦! 手にした切符は天国か地獄か!? それと戦う栄光にまみえたのは、仮面ライダーピラトー!」

 

 オウム貝の殻を胸部に袈裟懸けに突き刺したような意匠。機械と古代生物が、黄色がかった薄いピンクのボディースーツと紅の外殻。頭の両端に取り付けられた円形は、ヘッドライトか目玉なのか。

 その重装甲に見合わぬ手数の速さでBランクに上り詰めた、売れ出し中のライダーである。

 故に、彼にしても今日集まった猛者たちの中でも、決して劣ることのない実力者なのだが、それでも心無しか、()()と対峙しては萎縮し、気圧されているように見える。

 

『そう……彗星のごとく突如として現れたその戦士は、デビューより無敗にして常勝! その剛柔自在の戦いぶりであらゆる猛者を打ち破って瞬く間にチャンピオンの座をもぎ取った白き魔王……仮面ライダーモストだぁ!」

 

〈モッチー×ジオウ〉

 畏怖と共に迎えられたライダーは、素体自体は黒の下地である。

 それええもなお、白きと紹介された所以は、頭頂から首に、胴体部にかけて被るようにしてセンターラインとなっている白き鋼のベルトがためであろう。

 捉えようによっては、鉄の葉で包まれているようにも見える。

 その顔の中央よりやや上のあたりには、ゴーグルが、バイザーが取り付けられており、濃いピンクの直線が組み合わさりながら羅列している。これが所謂視覚ユニットであるらしい。

 造形としてはシンプルで、輪郭もやや丸みを帯びてはいるのだが、他を圧する尋常ならざる気配によってかえって異形感を浮き上がらせる。

 

 そして両者は僅かな間を挟んで対峙する。

 心なしか、その堅牢さとは関係なしに、ピラトーの動作は硬い。

 だが、開始の合図とともに仕掛けたのは、彼だった。

 

 胸の貝殻が、高速回転を始めるとともに、風を巻き込み、取り込み、自らの推進力とする。

 そのうえで、その車輪の隙間から飛び出た触手が展開する。四方八方に散らされたその先端から、放電がまき散らされ、電撃の折を形成し、牽制とする。

 最初から、トップギア。不意打ち上等、フルスロットル。

 否、彼が勝つには、この戦法以外にありえなかったのだろう。

 

 観客も非難よりも驚愕の声が先に来る。

 だがその声が鳴り止まぬうちに、気づけばモストはその牽制の外、自身に特攻を仕掛けてきていたピラトーと背中合わせになっていた。

 

 そしてそのままスタスタと、物静かな足音を立てて彼から遠のいていく。

 

『え、えぇーっと、これはどうしたことでしょうか? モスト選手、敵の攻勢には目もくれず、そのまま場外に出ようとしている様子ですが……』

 これまで何百という仕合を見て来たであろうエテック実況者が、当惑のコメントをこぼした。

 慌てて審判が、モストの前に立つ。リングアウトに対する警鐘を鳴らすと同時に、そのうえで棄権の意志を確認する。

 

 だが、白き魔王は無言でその横をすり抜けた。

 ――いや、そも背を向けた相手に、ピラトーが無反応というのがそもそも妙な事態であった。

 

 そして審判は、モストの背の向こう側で、どうと巻貝がバランスを失ったかのように、ピラトーの身柄が大きく傾き、そして横臥するのが見えた。

 

『K……KO! KOです! いったいいつ勝負が決したというのか!? まるで時間でも停められたかのように、ピラトー選手、為す術なく敗れましたァ! まさに! The most powerful!』

 自らの口蓋に張り付く舌を懸命に動かし、必死に声をあげる。

 だが一方で観客席は、それこそ彼の言うところの『時間を停められた』かのような静けさで、退場していくモストを見送るよりほかなかった。

 

 ~~~

 

 仮面ライダーモストは、控室に向かいがてら、円盤石とメモリカを引き抜き、その変身を解いた。

 その異界人然としたライダーとしての佇まいとは裏腹に、中の人物の恰好は、多少カジュアルなきらいはあるものの、常識から外れたものではない。

 後ろ向きにかぶったキャップ。使いこなされた革靴。履いたハーフパンツに達する――長い金髪。

 

「お疲れ様」

 その『少女』に、また別の中性的な若者が近寄った。

 背は高いが、睫毛も長い。服装は少年のそれだが、挙動は柔らかい。タイプの違う人間的魅力をいくつも内包しているような、不思議な気分がある好人物だった。

 

 にこやかに、人懐っこい笑みを綻ばせる同世代……カガヤ・ミタマに

「別に疲れてなどいない」

 と見向きもせず、歩みを止めもしない。

 

「はっ」

 その前途から、失笑が飛んだ。

 待っていたのはカガヤだけではない。

 長い裾の、民族的な上衣を羽織った青年が、壁にもたれている。

「相変わらず、ファンサ度外視で、無駄のない試合だこって」

 紅いメッシュ入りのエクステを弄りながら、ややトゲのある言い回しをしたのは、クィン・マーロンである。

 

「そういう君は無駄が多いな。カーマイン」

 そこで初めて、彼女……仮面ライダーモスト、カイゲン・カラクサは足を停めて、切れ長の目線のみを二十歳そこそこの青年へと傾けた。

 

「君ならば、カプラン程度に一瞬でも捕らえられることはないだろうに、わざと攻撃を受けた。よしんば不意を突かれたとしても、ブリードチェンジなどせずとも正攻法で圧し切れたはずだ」

「ショーだからな。多少相手にも見せ場を作ってやる必要があるし、演出だって必要だ。これでも色々と苦労してんだぜ、俺?」

 

 手をひらひらと躍らせておどけて見せるマーロンに、

 

「では励むと良い。私にとっては無意味としか思えないが、君にとっては時間や労力を費やすに足るのだろう?」

 と、真顔で答えた。

 

「――ハッ」

 カーマインは肩をすくめた。

「さすがさすが。チャンピオン様は皮肉も一流でいらっしゃる」

 そう言って両手を掲げる彼の横を、それ以上の挨拶もなく、カガヤを伴い、カイゲンは去っていく。

 

 ――先の飄々とした態度からは一転。

 忌々しげに顔をしかめると、クィン・マーロンは拳を壁に叩きつけた。

 

 ~~~

 

「皮肉……? 彼はいったい何を言っているのだろうか?」

 カーマインから、どことなく剣呑な雰囲気を嗅ぎ取りつつも、通り過ぎてから、カイゲンは小首をかしげた。

 

「……フツー、ああいう言い方されたら誰だって腹を立てると思うけど?」

 呆れたように、カガヤが追従した。

 ますますカイゲンは困惑の色を深めた。

 

「わたしは別に、間違えたことは言っていないと思うが……彼の事情にも忖度した発言だったはずだ」

 

 さもそれが当然のように言い返すとカガヤ、仮面ライダーピボルスは溜息を吐いた。

 ……そう、間違ったことは言っていない。相手がその言動にありもしない裏や悪意を読み取っただけで、彼女は何ら己を偽ったり、相手を蔑んだりしているわけではない。毎度のことながら。

 

 だがしかし、結局のところ、マンディー砂漠に住まうサソリに海の広さなど説いても詮無いように、常勝の魔王に常人のコンプレックスを説明するだけ、無駄なのだ。

 

(それにしても)

 お互いに立場も事情も違うのだろうが、共に頑張ろう。

 そんなニュアンスをあそこまでヘタクソに表現できる人間がいるのかと、呆れを通り越して感心してしまう。

 

「そんなんだから、友達できないんだよ、君」

「何か言ったか?」

「なんでも。ほら、行くよ。パブス先生と食事の約束あるんだろ?」

 

 そう促される少女は、歩幅も歩速も変えずに連れだって控室へ戻っていく。

 

 ……ややあって、

「う、ううん……」

 その通路の片隅、据え置きのベンチの上に転がっていたシーツが、身じろぎした。

 置き忘れの資材か何かだと心得て、素通りしていたカイゲンらであったが、実のところ、その中には何者かが包まって眠りこけていた。

 

 そのうめき声は布の中でくぐもっていて、男か女か、大人か子どもかさえ確かではなかった。

 実のところ、彼女たちに一つ、明確な見落としがあった。

 それは、シーツから伸びた手が握るもの。

 

 掌の内には、白い円盤石と、黒く無地の石板(メモリカ)が収まっていた。


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