The New American Dream   作:古魚

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第四二話 主砲五十二糎三基九門

「敵艦を観測機が補足!」

「主砲照準、調整よろしい」

「全砲塔主砲弾装填よし!」

 

 準備は整った。

 

「撃ち方はじめ!」

 

 古賀の号令で、《大和》《武蔵》の各砲塔一番砲が炎を噴き出す。

 

「うおっ!」

 

 砲撃時の反動と音に、艦橋要員たちが怯む。

 

「凄い、これが《四十五口径四四年式五十一糎砲》の迫力か」

 

 有賀艦長も思わず唾を飲む

 

 超大型戦艦、《大和》型戦艦。

 全長289m、全幅40mの巨艦に、45口径51センチ砲三基九門の巨砲が備える。艦中央部の周りには、防空駆逐艦《秋月》型などに搭載される九八式十糎高角砲を十基二十門。各所に25ミリ、13ミリ機銃が設置されその数合計170挺。

 

 アメリカからの鋼鉄、技術輸出の恩恵を受けて、1944年12月8日に《大和》、14日に《武蔵》が就役を果たした。

 

「観測機より入電、ただ今の砲撃、全弾近!」

 

 その報告の後、修正座標が送られる。砲の調整が終わると、再び51センチ砲が吼える。

 

 

 

「なんだ! なんなんだ今の砲撃は!」

 

 中華民国海軍の戦艦、《秦》《漢》《楚》《隋》《唐》の五隻が単縦陣を敷いて、日本艦隊へ目指して進む中、凄まじい爆音とともに届いた砲弾に衝撃が走っていた。

 

「上空に日の丸をつけた観測機を発見!」

「敵艦は!?」

「測距儀では確認できず!」

「水平線からの射撃だと!?」

 

 艦橋では動揺が広がる。

 見えない敵からの砲撃、自分たちには回避行動をとる他無い。

 

「再び飛翔音! 砲弾来ます!」

 

 その報告が、戦艦《漢》から聞こえた最後の一声だった。

 

「《漢》……爆沈」

「たった……1撃で……?」

 

 戦列の2隻目を進んでいた《漢》に、二発の砲弾が突き刺さると、それは全ての装甲版を貫通し、弾薬庫で爆発した。

 艦がきしむ音すら聞こえず、沈みゆく姿すら見せず、《漢》は、まるで飴細工でできた艦の如く、砕け散った。

 

「う、狼狽えるな! 敵戦艦は二隻のみ、接近し、砲撃可能距離まで近づけば、まだ勝機はある!」

 

 中華民国の艦隊司令官は、そのように声を張り上げる。

 

「予定通りならば、今頃やつらの元には陸上攻撃機の大群が襲い掛かっている頃だ、この機を逃さず、接近するぞ!」

 

 

 

 15時44分。

 

 遂に中華民国は、主砲射程に《大和》《武蔵》を捉えた。

 

「ここまで近づかれたか……」

 

 古賀が双眼鏡で敵艦を睨みながら呟く。

 現在日本艦隊は、中華民国軍の第四次陸上攻撃隊から攻撃を受けていた。

 

 《大和》艦上には、いくつかの爆撃跡が残り、機銃座が数基破壊されてはいるものの、一切弱った様子が見えない。

 

「長官! 敵艦より電報です!」

 

 慌てて駆け込んできた伝令が、興味深い報告をする。

 

「読め」

「はっ! 『貴官らと我艦隊の戦力差は明らかである。攻撃隊もこの先何度も飛来する。本土から、空母、戦艦の応援要請も行った。率直に言って、貴官らに勝ち目はない。貴官らの武勲と勇気を称え、艦隊撃滅を見送ることができる。即刻この海域より離脱せよ』以上です」

 

 その言葉に、小さく古賀は笑い、砲術長に指示を出す。

 確かに、中華民国は現在、戦艦4、巡洋艦4、駆逐艦18、陸上攻撃機多数を引き連れてこちらに向かって来ている。たいして日本艦隊は戦艦2、巡洋艦2、駆逐艦8と、戦力差は大きい。

 空母の護衛や、輸送船護衛のために、小型艦たちも後方へ置いて、この二隻は敵砲戦部隊と向き合った。

 

「対空戦闘止め、砲撃用意」

「了解、砲撃戦用意!」

 

 群がって来る攻撃機たちへの対処を完全に護衛艦にまかせ、《大和》は敵艦隊を睨んだ。

 

「返信は――」

「そんなものは送らん」

 

 伝令の言葉を遮って、古賀は言う。

 

「向こうに、我々を見送る意思など毛頭ない。惑わせ、自分たちが接近する時間を稼ぎたいだけだ」

「砲撃準備よろしい!」

 

 砲撃長の言葉に、古賀は即座に返答する。

 

「砲撃始め!」

 

 甲板にけたたましい警報音が響き、51センチ砲が咆哮を上げた。

 

「そんな姑息な手段を用いる奴らには、砲弾での返答がお似合いだ」

 

 

 

 砲戦は続いた、いや、砲戦と言うにはあまりにも一方的な殲滅作業と言った方が適切だろう。

 

 中華民国海軍は必死に砲撃を敢行し、《大和》《武蔵》に、間違いなく命中弾は出ていた。しかしたった一発も致命打を与えるには至らず、空しい火花と金属音を立てるだけに留まる。

 航空機からの爆・雷撃が続くも、二隻はその程度の攻撃を一切気にすることはなかった。周囲の護衛艦が一切の航空攻撃をシャットアウトしていたのだ。猛烈な対空砲火、《神風》の迎撃によって、この短時間で数百機を数える中華民国の機体が海へと没して行った。

 あまりに《神風》が敵機を落として回ったため、この戦闘機による攻撃を総じて『神風特別攻撃』と中華民国は命名し、通常の航空機では太刀打ちできない特別な攻撃として畏怖の対象になった。

 

 運よくそれらを切り抜けた二機が、《大和》へと雷撃を敢行した。その魚雷は、確かに《大和》右舷後部を捉えた。しかし、艦橋にいた古賀たちは一切それらを気にすることはなく、何事もなかったように砲撃は継続された。

 

 また、痺れを切らした中華民国海軍の小型艦艇たちが肉薄雷撃を敢行しようと前へ進出してきた。だがこれも、重巡《伊吹》駆逐艦《雪風》《満潮》《不知火》《高波》の五隻と《大和》《武蔵》の10センチ対空砲、15、5センチ副砲が完膚なきまでに叩きのめした。

 魚雷を投下することも撤退することも出来ぬまま、突っ込んできた巡洋艦2隻、駆逐艦10隻は沈んだ。ある艦は無数の破孔を打たれ、ある艦は魚雷が誘爆し、海中へと没した。

 

 17時11分。

 

 海上には、旭日を掲げた旗だけが残っていた。

 

 

 

 その後、日本軍は朝鮮半島へ上陸。現地の反乱軍と共同で戦闘に当たり、瞬く間に朝鮮、満州を解放した。

 

 4月23日には北京が陥落し30には上海が陥落、戦線は南京に迫っていた。

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