国の性質は基本的にステレオタイプになります。
一部正確でない表現があるかもしれません。その時はご指摘お願いします。
先日ニュースとなりました、紅茶に塩を入れるか否かで発生した250年ぶりとなるアメリカとイギリス間の外交論争を見て書きたくなりました。
主人公→アメリカの擬人化
父親→イギリスの擬人化
妻→日本の擬人化
です。
「久し振りだな。」
「……親父か、何のようだ?」
一人で紅茶を楽しんでいるある日。少し肌寒い昼下がりのことだった。妻が出かけて間もなく、紳士面したクソ親父が尋ねて来た。せっかくの休日を邪魔されて、無性に腹が立つ。
「紳士を騙るならせめて事前に連絡しろ。礼儀がなっていないんじゃないのか?」
苛立ちを隠さずに言葉をぶつけてやるが、ありとあらゆる罵倒を浴びてきた親父には通じない。まるで気にする様子は無くニコニコと朗らかに話し掛けてくる。
「いやいや、いきなり訪ねた方が面白いだろう?いやなに、お前が健康な生活を送れているのかも気になっていたんだよ。お前は大切な息子だからね。」
心にも無い事を…と喉元まで登って来たが間一髪で抑え込んだ。こんな事を言っても仕方が無い。それに言ったところでケラケラ笑われて流されるだけだ。
「ところで、お前が飲んでいるそれは紅茶か。それなりの茶葉を使っているようだね。」
スッ……と目を細める親父。いちいち言動が鼻につくのはどうにかならないものか。それにかなり面倒な事になった。親父は紅茶にはやけに煩い。
だからあの時、茶葉を纏めた箱を庭園の立派な噴水にぶち込んでやったわけだが……。それはさておき、こんなことになるんだったらアイツが飲んでいた緑茶を貰うべきだった。
「どれ、父上にも一杯頂けないかな?」
エセ紳士はニッコリと、しかしどこか粘り気と威圧感を感じる笑顔で要求した。面倒だしさっさと帰って欲しい。クソ親父の要求を呑むしか選択肢が無かったのが無性に腹立たしかった。
「うん、少し安っぽい味がするけどやはり紅茶は良いね。しかし驚いたな。お前がティーポットに茶葉を入れる事が出来るようになっているだなんて。感動したぞ。」
あの時の事を未だに根に持っているのか。陰湿な事だ。いつかの誕生日に「紅茶の淹れ方」という本を渡された時は殴ってなろうか本気で悩んだのが懐かしい。
「あぁそれは良かった。親父こそ、息子を褒める事が出来るようになるなんて丸くなったもんだな。」
「お前は特に元気で大きい子だったね。昔は辛く当たった事は覚えているよ。いやはや悪い事をした。立派な子に育って私も鼻が高いよ。」
本音じゃないですよ、と言わんばかりの態度でつらつらと口を滑らせる態度には最早敬意すら湧いてくる。俺が人の事を言えた義理では無い事は知っているが、それでも親父には敵わない自負がある。
「俺はともかく親父の方は暇なのか?表の車は仕事用じゃなかったか?」
暗に帰れと促す。あまりにも浅い言い回しだから通じていない訳が無い筈だが、どこか様子がおかしい。さっきから怪訝な表情で紅茶をチビチビと口に運んでは、味を確かめるように息を吸い込み、首を傾げている。
「おい、聞いてるか?」
「この紅茶に何か入れたか?」
「……何って…少し塩を入れてみただけだが……。」
俺の返答を受けて、目を閉じて深呼吸する親父。心なしか手がワナワナと震えているように感じる。
「すまない、急に耳鳴りが鳴ってしまってね……。もう一度言ってくれないか?」
何かコイツの気に障る事を言ってしまっただろうか。特に思い当たる節が無かったからさっきの答えをそのまま返した。すると、
「なんて事をしてくれたんだ!」
と怒鳴られた。身構えている時に死神は来ないものだ、とは良く言ったものだ。俺は完全にオフモードだったから、驚いて椅子から転げ落ちるところだった。
「紅茶の苦みを抑えるのに塩が良いんだよ。」
拘りが強い化石老人にこれは応えたか。だが面倒だ。
「お前は正気か?!紅茶に塩なんて滅茶苦茶だ!」
まさかここまでキレられるとは思わなかった。曲がりなりにも紳士の仮面を着けている親父が素を出すのはとても珍しい。
たかが紅茶、されど紅茶。反抗期と呼ばれる時期の、若気の至りをいつまでもネタにし続けるくらい陰湿な側面もある親父には確かに地雷だ。
「あら、御義父様。いらっしゃっていたのですね。事前にご連絡をくださればおもてなしの準備をしましたのに……。」
どう収集を着けるか悩んでいたところに、いいタイミングで妻が帰って来た。いや、この様子だと狙って入って来やがったな。今夜覚えていろ。
「これはこれは、お見苦しい所をお見せして申し訳無い。このドラ息子がですね……」
「偶然御義父様のお声が聞こえまして。事情は大方把握しております。」
ニコニコととても楽しそうな笑顔で俺と親父を交互に見る妻。絶対に楽しんでいるぞこのクソ女。
「ちゃんとティーポットに茶葉を入れられるようになったのですから、次は紅茶に入れる物を覚えましょうね?あなた?」
額に青筋がピキピキと浮かんで来ているのが分かる。しかし、こんなに煽る女だったか?まぁ良い、クソ親父が帰ったら仕置きは確定だ。
「あぁそれが良い。今度は私と二人で息子に教えてあげるとしましょう。」
「あらまぁ、嬉しい。久し振りの共同作業ですね?御義父様?」
親父と妻はかつて一緒だったと聞いている。そのせいかこの二人は妙に距離が近い事がある。気に食わない。
「確かにそうとも言えますね。」
二人はハハハ…ホホホとお上品に笑っている。いつの間にか俺が完全に蚊帳の外になっているのも気に食わない。だがやる事は決まった。まずはクソ親父を追い出すところからだ。
「おい親父、用事はまだ残っているんだろう?さっさと帰れ。それと、お前は後で話がある。良いな?」
「ム……まぁ良い。邪魔したな、息子よ。それでは、失礼します奥様。」
気取った態度で妻に優雅に一礼すると、親父は漸く出て行った。せいせいした。
「お前、楽しんでいたな?」
「まさか。」
涼しい顔で否定する妻。こういう時はどうするか、それはそこそこの付き合いで分かっている。
「あっ……。」
妻の尻を揉みしだく。すると、妻の声に色が混ざる。見た目の割にかなり淫乱な女だ。俺を怒らせて乱暴にされるプレイがお望みなんだろう。機嫌も良い事だし、今日はその欲望を叶えてやるとしよう。
「行くぞ。」
「はい♡旦那様♡」
腰に手を回して寝室に誘導する。妻は抵抗しないどころか、従順そのものな上に足取りはどこか軽やかだ。
そう遠くない未来に、この女とクソ親父に紅茶講習を受けさせられるのが憂鬱で堪らないが、今は妻で欲を吐き出すとしよう。