【悲報】10年間ツンデレだと思っていた幼馴染に本当に嫌われていた   作:島流しの民

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いっそのこと

 

 

 

 

 さて、少し整理をしよう。

 どこから話すべきだろうか? 

 俺が目の前にいる幼馴染である二宮凉夏をツンデレであると勘違いしてストーカーまがいの行為を十年以上にわたってし続けていたことはもう皆様の周知の事実であるとする。悲しいね。

 

 そんで結局ツンデレかどうかを本人に聞いて、笑っちゃうくらい普通に否定された。そこから少しだけ気まずくなって疎遠になってしまうかな、なんて思っていたが別に俺たちの関係性は大して変わることもなく、今まで通り少し距離の遠い関係だったはずだ。

 

 ……だったはずなのに。

 

「今度、一緒に勉強する?」

 

 俺の目の前にいる凉夏の可愛らしい口からそんな言葉が飛び出した。

 にわかに信じられず、目を瞬かせる。何度瞬きしても、涼夏は相変わらず美少女だった。

 涼夏は手持無沙汰なのか、控え目にだが玄関を見渡している。なんか変なもの置いてないか心配になってきた。あ、あの靴ベラダサくないか? 「っぷ、緑の靴ベラってw」とか思われてたら俺は死ねる自信がある。

 

「じゃなくて……今なんて?」

「今度一緒に勉強する? って聞いただけなんだけど……」

 

 何度聞いても答えは変わらない。

 じゃあもしかして、本当に凉夏との勉強会に俺は誘われたというのだろうか? 

 

「えー、あ、一時間三千円くらい?」

「どんなぼったくり勉強会よ……無料よ、無料」

 

 無料!? 今無料って言ったのか……? いやそんなはずないだろ、だって涼夏と勉強会だぞ? 「ほら、ここ間違ってるわよ」とか、「ここはテストに出そうね……」みたいなこと言ってくれるってことだろ? なんて不健全なんだ! こんなサービスが無料でいいわけがないだろ! あまりの衝撃に風邪も吹っ飛んだわ。いや吹っ飛んでないけど。めっちゃ喉痛いけど。

 

「あ、「無理よ」か。三千円じゃ全く足りないわよってことね、おっけ。二万とかでいいか?」

「もっとひどくなってるじゃない。無料、タダよ、タダ。なんで一緒に勉強するのに給料が発生するのよ」

 

 腰に手を当てて、涼夏が呆れたように言った。なんだか最近涼夏のいろいろな表情が見れているような気がするのは気のせいだろうか。

 

 しかし無料、か。なんでだ? 

 考えれば考えるほど、疑問がわいてくる。だって涼夏からしたら、長らく自分にストーカーまがいの行為をしてきた男が、やっとのことで離れ始めたところだろ。そんなときにわざわざその男と一緒に時間過ごすか普通? 

 

「それって凉夏にメリットなくね?」

「あなたはどれだけ私のことを薄情な人間だと思ってるの……」

 

 ジト目でこちらを睨みつける涼夏。これだけ美人だったらジト目も超人的な美しさになるんだな。涼夏のジト目で新たな扉を開いてしまいそうだわ。

 少々気まずいので、目を逸らし大きめの咳を一度挟む。もちろん口は塞ぎつつ。

 

「まあ、多少は?」

「ひど、そんな風に思ってたの?」

「……多少?」

「多少って言えば緩和されると思ってるでしょ」

「多少」

 

 あ、ため息吐かれた。

 あのねえ、と言葉を続ける凉夏。

 

「目の前で困ってる人間を無視するほど薄情じゃないわよ、私」

「優しすぎませんか凉夏さん……」

「多少ね?」

 

 いたずらっ子な笑みもキュート。あまりの威力に俺は直視できなかった。

 

「ま、嫌なら別にいいんだけど……」

「嫌じゃない! ぜひお願いしたい!」

 

 

 喉が痛んだが、それ以上に心臓がドキドキと痛かった。

 凉夏はなんでもないような顔で「オッケー」と言って、肩からずり落ち始めていた鞄を掛け直した。

 

「じゃあ早く治してね」

「3秒で治すわ」

「はいはい。じゃ、またね」

 

 勉強会の日程を軽く決めた後、凉夏は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 ……ドアが閉じられた途端、どっと疲れが押し寄せる。多分、風邪のせいだけではないだろう。あれだけ嬉しかった凉夏の訪問も、彼女が去ってしまえば疲労感しか残らなかった。

 

 リビングに戻りソファに座る。手渡された袋を覗いてみると、パックのお粥やゼリーなどが入っていた。

 凉夏の暖かさがコンビニのちっぽけな袋を通してこちらに伝わってくるようだった。その暖かさが心に刺さった。

 

「ほんと、勘弁してほしいよな……」

 

 仲良くなりたいと願ったはずだった。それなのに、ちょっと距離が近くなったと思ったら、仲良し以上を望み始めてしまっている。そんな学習能力がない自分に辟易してしまう。

 

 もちろん凉夏と一緒にいられるのは嬉しい。だがそれも結局仲がいいのではなく、凉夏の優しさに甘えてしまっているだけなのだ。勘違いを重ねた結果、今の関係になってしまったんだ。

 最近、彼女と触れ合えば触れ合うほど自分自身の情けなさが際立って見えるように感じる。

 

「いっそのこと、嫌わせてくれねえかなあ……」

 

 どうせ何されても嫌いになることなんてないだろうけど。

 憂鬱な気分のまま、袋の中にあるものを机の上に出す。

 

 あ、そうだ、まずやらなきゃいけないことがあったわ。

 携帯を取りラインを開く。

 

『俺今度凉夏と勉強会開くことになったわ^^』

 

 もちろん馬鹿二人に自慢である。気分は落ち込んでいるが、それはそれ、これはこれなのだ。

 すぐに二人から返事が来た。

 

『お前、ついに幻覚症状まで……』

 

『大丈夫? 薬持って行こうか?』

 

 

 …………まあ俺も二人の立場だったら絶対に信じないだろうな。

 

 

 




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