【悲報】10年間ツンデレだと思っていた幼馴染に本当に嫌われていた   作:島流しの民

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落書き

 

 

 

 近くの喫茶店に入り、端っこの方の席へ案内してもらった俺たちは、ドリンクバーとちょっとしたデザートを頼んで机の上にカバンの中身を広げた。

 クラシックのような音楽が静かに床を撫ぜていた。

 

「よし、じゃあデザート食べよう」

「勉強よ」

 

 びしっとつっこむ凉夏。なるほど、凉夏は勉強し始めたら勉強に集中できるタイプか。

 俺? いきなり掃除したくなるタイプ。

 

 筆箱を開き、鉛筆を取り出した凉夏は、まるでそれが勉強前の作法だとでも言わんばかりにアイスコーヒーを飲んだ。彼女の白い喉がこくりと動くのを、俺はぼんやりと見ていた。なんだか圧倒される光景である。

 

「じゃあ、何から勉強する?」

「あ、じゃあ、数学で」

「おっけー」

 

 数学、と聞いて凉夏が違うノートをカバンから取り出す。

 

 しかしながら、なんだろうこのシチュエーション。

 向かい合って座る二人の男女。一方は絶世の美少女で、もう一方は不審者。通報されてもおかしくないなこれ。

 

 メロンソーダを手に取る。コーヒーは苦手なのでメロンソーダを選んだのだが、格好良くコーヒーを飲む凉夏を見ていると、なんだか自分が子供のように思えてきてしまう。

 同意するように、グラスの中の氷がカランと音を立てた。

 

「…………」

「…………」

 

 鉛筆を走らせるだけの静かな時間が流れていく。すぐに集中力が途切れた俺は、なんとなしに正面に座る涼夏の顔を眺めた。

 

 

 それにしても、やはり凉夏は美少女だ。思わずじっと顔を見つめてしまう。

 薄く化粧を施しているのか、彼女の肌はいつものようにただ白いだけなのではなく、透明感のある白さだった。鉛筆の動きに合わせて左右に動いていく瞳には言葉にできない美しさがあった。

 ノートに何かを書き込むその表情は真剣なもので、長い睫毛が瞬きに合わせてふわりふわりと動いている。

 

 いけない、このままだとまた今回も俺の主観的な涼夏像を書き並べるだけで終わってしまう。

 今日の勉強会の本当の目的は、俺が好きなのは果たして凉夏なのかツンデレなのか、それを見極めることなのだ。……いや本当の目的は勉強か。

 

 とにかく。

 

 いつもみたいに凉夏の可愛さにやられてばかりじゃダメだ。今日こそははっきりさせないといけない。

 

 

「──ねえ、聞いてる?」

「え?」

 

 凉夏の声で現実に引き戻される。前を見ると、こちらをじっと見る凉夏と目が合った。

 

「ちゃんと聞いてた? ノート開いたまま全く動かなかったけど」

「あ、ああ聞いてる聞いてる。ちゃんと聞いてる」

「じゃあ今私が何説明してたか覚えてる?」

「あれでしょ、織田信長×豊臣秀吉=本能寺の変、みたいな?」

「ここの空調ちょっとキツイわねって話だったんだけど」

 

 そういう引っ掛けはよろしくない。

 

「それと、それを言うなら織田信長×明智光秀=本能寺の変でしょ」

「わざとだよわざと。俺のギャグで笑うのって知性必要だから」

 

 全くと呆れた様子の凉夏。いけない、またこんな調子で彼女を呆れさせてばっかりだ。今日くらいは真面目にやらなくては。

 俺も凉夏を真似て教科書を開く。

 

 自分で解いてみて、わからないところがあれば凉夏に聞く。同学年だというのに、凉夏はなんでも知っているようだった。

 店内の落ち着いたBGMが心地よい。

 

 デートっぽくはないが、これはこれでいいのかもしれない。

 耳に髪をかける仕草をする凉夏を見ながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。

 

 ふと、涼夏が開いているノートをのぞき見してみると、ノートの端に何かが書かれている──いや、描かれているのか? 

 

「ノートの端のやつなに?」

「え? あ、これは……」

 

 ノートの端に描かれていたものは、何やら妙に腹の立つ顔をした小さなウサギのような生き物だった。

 そのウサギがページの隅からにゅっと手を伸ばして看板を出している絵で、看板には「とても重要!」の文字が書かれていた。その文字は間違いなく涼夏が書いた文字だった。

 

 涼夏は、まるで見つかってはいけないものが見つかってしまったかのように手でそのウサギを隠すと、若干赤くなった頬でこちらを見た。

 

「これは、あれだから……その、あれだから!」

「大切なこと教えてくれるオリジナルキャラ?」

「そ、そういうのじゃないから……」

 

 急いでそう言い、ページを捲っていく姿を見ながら、俺は心の中で叫んだ。

 

 

 

 

 やっぱり金払わせてくれ! 

 




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