【悲報】10年間ツンデレだと思っていた幼馴染に本当に嫌われていた   作:島流しの民

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ちっぽけな存在

 

 

 

 おかしな噂が流れ出したのは、その次の週の月曜からだった。

 

 噂はすぐに私の耳にも入ってきた。私が土曜日に、不審者と会って何やらよくないことをしていたという噂だった。多分、彼との勉強会のことだろう。誰かに見られてたのかな。

 

 今必死になって弁解するのもおかしいし、ただ黙っていた。

 

 今まで仲が良かったと思っていた友人は、その噂のせいで、私と話したがらなくなった。

 いや、仲が良かったといっても、それは元からどこか壁を感じる友人関係だったのだ。それは入学した時から流れていた「彼」との噂のせいか、それとも私自身の問題か。

 

 彼が私に話しかけなくなってから、他の男の子たちがよく話しかけてきたり、時には告白されたりもした。

 全て断ったのだが、そのうち女の子たちの私に対する態度が、目に見えて厳しくなってきた。

 調子に乗ってるとか思われてるんだろうなあ、なんて思っていたが、まさかここまでやられるとは思っていなかった。

 

 

 

 私は何もしてないのに、あちらの気分だけで嫌われる。これほどに辛いことがあるだろうか。

 そう思った瞬間、気づいてしまった。

 

 私が彼にしていたことも、それと全く同じじゃないのか? 

 

 

 周りの子が男の子と仲良くしないから、私も彼と仲良くしない。

 彼は何もしていなかったのに、ただ私の気分と弱い心のせいで無意味に傷つけてしまって、それに加えて仲良くなろうとこちらに歩み寄ってくれた彼のことを面倒臭いと切り捨てて、無視までもしてしまっていた。

 

 ちらりと彼を見る。彼は教室にいなかった。

 なんだか、すごく寂しくなった。世界に一人だけ取り残されてしまったような孤独感。

 

 なんとか持っていた本を開いてページをめくるが、内容なんて入ってこない。

 しばらくすると彼が教室に戻ってきた。なのに、全く目が合わない。

 

 もし彼にも嫌われたらどうしよう。そんな思いが一人ぼっちの心の中を埋めて行く。

 今まで嫌われてもしょうがないことをずっと続けていたんだから、もうすでに嫌われてるかもしれない。

 そう考えると、無性に泣きたくなった。

 なんでこんなに自分のことしか考えられないんだろ、私って。

 

 

 ▽

 

 

 放課後になっても不安は消えないままだった。

 バス停の前でポツンと立って、空を見上げる。黄昏色の空の中に、お腹だけ紫色になった雲が一つ浮かんでいる。みんなとは違う色で一人ぼっちの私みたいだった。

 目の前にバスが来る。ドアが開くが、なんだか乗る気が起きなかった。ドアは閉じて、滑るように発進していった。

 

 いくつのバスを乗り過ごしただろうか。後ろから足音が聞こえた。

 振り返ると、彼がいた。彼の驚いた表情にすごく安心した。

 

「や」

 

 無理に明るい声を出すと、彼は困惑した表情を浮かべたまま手を挙げた。

 

 それから、彼と他愛無い話をした。バスに乗って、一緒に揺られながら、ひたすらに話をした。車窓から差し込む蜜色の夕陽が彼の困惑した顔に差し掛かっている。

 どこか不安定な私たちの会話は、結局家に着くまで続いた。

 

 

 

 

 一緒に帰ることは私たちの日課になった。彼とバスの中で話す数十分が、私の世界の全てだった。

 彼との繋がりをなくしたくはなかった。

 

 

 私のことを思いやってか、無理に明るく振る舞う彼の優しさが私の心をさらに締め付けた。

 

 

 私は、あなたのことを嫌ってたんだよ。あなたを無視してたんだよ。

 なのになんでこんなに優しくしてくれるの? 

 

 

 そう聞いてみたかったけど、答えを聞くのが怖かった。だから無理に笑って誤魔化した。彼も無理に笑っていた。揺れるバスは歪んだ私たちを抱いてどこまでも走っていた。

 

「じゃあ、また明日」

「おう」

 

 お互いの家で別れて、家に入る。母さんがおかえりと言ってくれて、家の中での生活が始まる。

 今日も学校のことを隠しながら母さんと喋らなくてはいけないことがひどく心苦しかった。

 

 部屋に入りベッドに腰掛ける。擦り切れた心を何とか治したかったが、一人になった瞬間に世界中の孤独が押し寄せてきたような感覚に陥り、私の心は余計に疲弊するだけだった。

 彼がいたら、この心もなんとかしてくれるかもしれない。そんな思いに駆られ、自分で嘲笑してしまう。

 

 彼が近くにいることを徹底的に拒んでいた他でもない私が、彼が近くにいることを今更望むのか。なんて都合のいい人間だろうか。

 彼を見ていると自分が矮小な存在に思えてきてしまう。

 

 壁に背をつけて膝を抱えて座った。この壁の向こうには彼の部屋がある。

 こんなに近くにいるのに、私たちの心はどこまでも遠かった。

 膝に顔を埋めて、耳を澄ませる。真っ暗になった世界には何もなくて、私の息遣いしか聞こえなかった。

 

 明日はもっといい日になりますように。ちっぽけな私はそう願うことしかできなかった。

 

 

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