【悲報】10年間ツンデレだと思っていた幼馴染に本当に嫌われていた   作:島流しの民

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 涙目の生徒会長と鬼をも殺せそうなほどに冷たい目をした涼夏の登場によりさらに混沌の地と化した教室。

 これ以上ここに留まっていると本当に殺されかねないので、場所を変えて話し合うことにした。

 

 生徒会長、智、知己、そして涼夏を連れて、屋上に行く。俺の横に涼夏、前に智と知己、そして後ろには生徒会長という、何とも不思議な行列である。

 先ほどから涼夏と全く目が合わないが、無言の圧がえぐい。そして生徒会長はずっと後ろでぐずっている。俺ってそんなまずいこと言った? まあ多分言ったんだろうな。

 

 屋上のドアを開けると、夏の始まりを思わせる熱気が足元を擽っていく。どこまでも透き通った空は、まるで青く燃え盛る炎のようだった。

 ──いや、そんなポエムを綴っている場合ではない。俺の信用と命がかかっているのだ。

 

 

「それで、何があったか説明してもらってもいいですか?」

 

 

 屋上へ向かう最中に知ったのだが、生徒会長は先輩らしい。雰囲気が同級生っぽいので同級生かと思っていた。雰囲気が同級生っぽいってどういうことだ。

 俺の言葉に生徒会長は涙目のまま、こくりと頷いた。

 

 

 ▼

 

 

 そして、生徒会長の口から語られた物語は、聞くも涙語るも涙の壮大かつ繊細なストーリー……というわけではなく、めちゃくちゃ単純な話だった。

 

「つまり、一ヶ月くらい前にいきなり彰が来て仲良くなりたいって言ってきたから一緒にお話しして、その中でお願いをしたら快く引き受けてくれたのにそれ以来全く会いにきてくれなかったから自分から会いにきたってこと?」

「そう、そう!」

 

 こくこくと激しく頷く生徒会長。小動物のようなその動作は、思わず暖かい笑みが浮かんでしまいそうなほどに癒しパワーに満ちている。そしてその後の俺を見る皆の瞳の冷たいこと。思っている以上にみんなの目がすごく厳しいですねえ。いやまあ、俺がとんでもないことしでかしたからなんだけどね。

 呆れたような表情を浮かべた知己が口を開く。

 

「で、彰の言い分は?」

「いや、違うんですよ生徒会長。俺実は双子の兄弟がいて、もしかしたらそいつのせいかもしれないです」

「え、そ、そうなの?」

「違います。この男は一人っ子です」

「おい!」

「な、なんで嘘つくの……?」

 

 泣きそうな顔で訴えかけてくる生徒会長。なんだろう、そんな反応をされるとちょっと心苦しいぞ。

 こつん、と肩を叩かれる。見ると、涼夏が冷たい目で俺を見ていた。

 

「嘘ついたらダメ」

「すみません生徒会長。嘘ついてました」

「やっぱり嘘だった!」

 

 両手で頬を押さえて叫ぶ生徒会長。ムンクの叫びみたいな顔だ。先ほどから表情が豊かな先輩である。

 

「ていうか、なんでいきなり生徒会長に話しかけたんだよ」

「あれでしょ? 理想のヒロインを探すために全校生徒に話しかけたってやつ」

「あー、あれか。あんな馬鹿げた行為にも被害者がいたんだな」

 

 そう言われ、やっと思い出す。

 そういえば涼夏にツンデレじゃないと言われて絶望してから、理想のヒロインを探すために全校生徒に話しかけている際に、生徒会長らしき人とも話していたんだった。ていうか馬鹿げた行為ってなんやねん。あれはあれで大切な思い出やっちゅうねん。

 

 つまり、時系列的に言うと、俺が涼夏にツンデレじゃないと言われる→絶望して理想のヒロイン探す→生徒会長に会ってお願いを聞く→その後涼夏以上のヒロインがいないことに気づく→お願いを忘れる。

 といった感じだろうか。あれ、俺ゴミクズすぎないか? さすがに申し訳なく感じてきた。

 ふと視線を感じたので横を見ると、涼夏がジトっとした目でこちらを睨んでいた。

 

「理想のヒロイン……?」

「いや、その……」

 

 その冷たい瞳に何も言えず、俺はただ縮こまるしかなかった。

 過去の俺は一体何をとち狂ってあんなことをしでかしたんだ! 今すぐ過去に戻ってあの時の俺はぶん殴りたい。

 どうやら他の皆も生徒会長の味方らしく、あからさまに先ほどよりも冷たい視線を俺によこしていた。

 

「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、まさかクズでもあったとはな」

「さすがに約束しておいてそれをほっぽかすのはよくないよ……」

「はい、すんません……」

 

 正論すぎるので何も言い返せない。俺はひたすらに皆から投げつけられる暴言を受け止めた。この暴言を受け止めて俺は大きく育つんや! 歪に育ちそうでちょっと怖い。

 

「それで、生徒会長がしたお願いっていうのはなんだったんですか?」

 

 涼夏が生徒会長に問いかける。しかしこの二人が並んだ絵、あまりにも神々しすぎる。多分この二人は神様が集中して作った傑作たちだろうな……そして俺と智は傑作を作ったことで腱鞘炎になった神様が利き手じゃない方の手でほじくった鼻くそ程度の存在なのだろう。

 

 生徒会長(どうでもいいが、彼女の名前はなんだろう?)は、その言葉に表情を引き締めて、言った。

 

 

「その……一緒に新しい生徒会役員を探すのを手伝ってほしくて」

「「新しい生徒会役員を探す?」」

 

 どこまでも高い夏の空に、俺たちの声が響いた。

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