【悲報】10年間ツンデレだと思っていた幼馴染に本当に嫌われていた   作:島流しの民

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人影と屋上

 

 教室の中にいる生徒(廊下をすれ違う生徒含め)から心なしかいつもより冷たい視線を浴びせられ続けた一日もようやく終わり、放課後になった。

 最近冷たい視線を集めすぎてもうそういう目に慣れてしまっている自分がいる。睨まれ屋とかやったら儲かるかもな。いや儲かるわけないわ。

 

「じゃ、俺は生徒会長の手伝いしてくるわ。チミたちは……ま、いつもみたいに非生産的な放課後を送ってくれたまへ」

「殺す?」

「いいよ」

「決断早すぎじゃね?」

 

 無駄口を叩きつつ教室を出る。ふと視線を感じた。

 どうせ誰かに睨まれてるんだろうなと思いつつも視線の方へ顔を向けると、涼夏とばっちり目が合った。いきなり目が合ったことに驚いたのか、涼夏はさっと顔を逸らしてしまった。わりと凹むわね。

 

 数か月前に比べて距離が近くなったとはいえ、俺たちの関係性は未だに曖昧だ。仲良くなったと勘違いしたところで、それらは全て涼夏の善意から来たものに過ぎないのだ。だからこそこういった反応は俺と涼夏の現在の距離感を教えてくれる大事な役割を持っているといえる。

 

「じゃ、行くか……」

 

 昇降口へ向かう生徒とは逆方向へ歩き、時には睨まれながら歩いていく。雑用や人探しとは言われたが、正直俺が出来ることなんて限られている。ある程度生徒会長の重荷を取り除けたら万々歳ということにしておこう。

 こういう雑用をこなす姿を見て俺がみんなから再評価される路線とかないかな? ……なさそうだな。

 

 生徒会室は四階にあるらしい。あまりその辺に行ったことがないのでウロウロしながら探してみるが、やはり先輩たちが多くいる階層は少し緊張してしまう。

 ……まあ、先輩とか関係なく話しかけまくってたんだから今更緊張する必要ないだろと言われたらそれまでであるが。それとこれとは別問題だ。

 

 生徒会室が見えてきた。どうやら屋上へと続く階段のすぐ傍にあるらしい。たまに通る階段が見えた。

 

 

 

 ふと、階段を上る一人の生徒の姿が見えた。

 透き通るような白い肌の女性だった。ぱっと見俺と同じくらいかもう少し高いくらいの身長で、腰辺りまで伸びた髪は雪のように白く、横顔からちらりと見える深紅の瞳がその白さを際立たせていた。肌の白さと髪の白さも相まって、無表情で階段をゆっくりと登っていく姿はまるで幽霊のような妖しさを秘めていた。

 

 見たことのない生徒だ。先輩だろうか? 

 

 その女生徒は急いでいるというわけでもないのか、ゆっくりと階段を上って屋上へ行ってしまった。放課後に一人で屋上に行くとは、よっぽど時間が有り余っているのだろう。いや、俺もこの前行ったんだけど。

 

 まあ、見たこともない女性にそこまで注目する必要もない。

 俺は気を取り直し生徒会室のドアを開け──ようとして、ようやく気づいた。

 

 

 俺が見たことのない生徒? 

 少し前までの俺ならその考えに引っかかることはなかっただろうが、今の俺が見たことない生徒がこの学校にいるのだろうか。なんせ俺は理想のヒロインを探すために校内中の女子と喋りまくったという黒歴史があるくらいなんだから。

 

 俺が見落としていただけだろうか……いや、そんなはずはない。ちゃんと一人一人に話しかけたし、あんな綺麗な髪の女の子が学校にいたんだったらその存在を忘れるわけもない。

 となると、彼女は一体誰なのだろうか。

 

 

 少し気になってしまい、生徒会室の前から離れる。心の中ですぐに戻りますのでと生徒会長に向けて謝罪をしながら、俺は屋上へと向かった。

 

 

 しばらくぶり(HR前)に訪れる屋上は、相変わらず暑かった。この場所に涼しい時間帯なんてないみたいだ。

 

 当たり前っちゃ当たり前だが屋上は閑散としており、人の声など全く聞こえてこない。風が通り抜ける空虚な音だけが響いていた。

 辺りを見渡すが、人の影一つ見当たらない。

 

「あれ?」

 

 塔屋の後ろはもちろん、上も誰もいない。あるのは寂れた給水タンクだけだった。

 となれば、先ほど階段を上がっていった少女は一体どこへ行ったのだろうか。

 

 幻覚か或いは幽霊か……そんなことを思って、俺は思わず失笑してしまった。

 

 馬鹿馬鹿しい、いくら暑くなってきたとはいえ幻覚なんて見るわけないし、幽霊なんて現実的に考えてこの世界に存在しているわけがない。幽霊の存在を認めるよりかは俺のことが好きでたまらないツンデレ美少女がいるということを認める方がまだ現実味があるだろう。

 

 

 見間違いだったんだろうな、そう思って立ち去ろうとすると、視界の端に何かが見えた。

 

「苗木?」

 

 それはプランターに植えられた何かの木だった。果樹だろうか、もう植えられてかなり長い時間が経っているのか、枝についている小さな花は萎れ落ちかけている。

 誰かがここで育てていたのだろう。

 

 そういえば、俺が涼夏に馬鹿げた質問をしたあの日も、花びらがどこからともなく飛んでいたような気がする。

 

「ま、どうでもいいけど」

 

 塔屋から降りて屋上を後にする。どうでもいいことで無駄に時間を使ってしまった。

 

 

 ▼

 

 

 階段を降り生徒会室の前へ行くと、そこには予想だにしない人間が立っていた。

 

「あ」

「え?」

 

 丸く見開いた目がこちらに向けられる。携帯の待ち受けにしたい表情だった。

 

「何してんの? 涼夏」

 

 

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