転生した先は異世界──だけど普通に日本じゃんね! しかも令和じゃんね!
ところで何の共鳴もしてないけど出会い多すぎて逸脱しそうなんですがそれは。

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怪異に出会い過ぎて共鳴値がヤバい

 転生した場所は、なんでもない現代日本だった。

 今や使い古された転生トラックにより異世界送りにされ、神の間に通されお茶を出され、色々話しての転生。

 異世界って言うからTHE☆ファンタジーを期待したのにどうですかこの現代日本。

 文化レベルとかそういう話じゃない。なんなら令和。教科書見た感じ歴史も特に変動なし。どうしてくれるんですかファンタジー技能。

 

 転移ではなく転生なので、一般家庭に生まれて、一般幼稚園に通って、一般小学生を通過した。

 いやね、幼稚園と小学校でそこまで大それたことはできませんよ。いや僕がどうこうするのは良いんだけど、周りの子が多感な時期ですからね。僕がとんでもないことをすることで与える影響ってものがね。

 しかーし、最近の子は、うん、あれだよ。やばいね。

 フツーにスマホ持ってるの。僕とかあれですよ。DSですよ。初めて親に買ってもらった電子機械。確か中学校とかの時。DSのカセットとアドバンスのカセット挿してポッケモンを送りましたよわざわざアドバンスの方プレイして。

 それが、もはや、据え置き機よりケータイソシャゲですって奥さん。悲しい。悲しいよ僕は。

 

 いやどうでもいいんだよ現代日本の小さい子事情なんて。勝手にすればいいよスマホ便利だし使うよ別に。

 

 で。

 で、だ。

 いやね、ちゃんとね、ファンタジーだと思ってね、色々な能力を貰ったんだわさ。こんな現代日本だって思ってなかったんだわさ。

 だからこういうの全部腐るかなーとか、だったら未来視とかで株とか投資系の貰っておけばよかったなーとか思ってた矢先。

 

「──私、綺麗?」

 

 口裂け女に会いました。

 

 

 1dm<=3 (1DM<=3) > [7] > 0 > 成功数0 失敗

 

 

 猛ダッシュである。

 流行り病のせいで昨今珍しくもないマスクをつけた女性。後ろ姿でわかる美人感に目を奪われたのが運の尽き、そのまま彼女はくるりと振り返って、そしてマスクを外してのアレである。

 いやね、良いと思うよ。良いと思うよ僕は。別に口の端が裂けてたって個性だと思うよ。多様性の時代じゃんか。そのままドーナツ好きで身体がお餅になれば頼れる兄ちゃんになれるよ。

 

 違うじゃん。

 そうじゃないじゃん。

 

 そうだね、オカルトはファンタジーだね。都市伝説は確かにファンタジーだねーってでもそうじゃないじゃん!

 見渡す限りの森林! そびえたつ山々! あり得ない大きさの樹木! 天を衝く程の山脈! あれ同じこと言ってない!?

 なんであれそれが僕の求めてたファンタジーであって、ホラーじゃないの!

 

 だから猛ダッシュである。ダッシュ中にスマホが鳴る。思わずBを押しかけたけどそんなものはない。はいもしもしこちら転生者。

 

『私メリーさん』

「ねえ!」

『えっ』

 

 電話を切った。おかしい、中学校に上がった途端のこの遭遇率。何かあるに違いない。とりあえず早く家に帰って……家。家か。

 現代の都市伝説で家関係……風呂場の手とか、あと邪道だけど赤い洗面器を被った男とか。

 うー、今生の家族はとてもいい人たちだった。巻き込みたくはない。ならばどうするか。

 

 撃退しよう! 相手がホラーだろうとなんだろうと、僕には転生チートがあるのだから。

 

「っは……っはぁ、っはぁ……」

 

 荒い呼気。僕じゃない。

 呼吸にも声色というものは出る。それで聞き分けられる。

 今僕の背後にいるのは、それでゼーゼー息をしているのは、さっきの口裂け女だ。

 

 覚悟を決めて──振り返る。

 

「こ……答えを、聞かせて。私、綺麗?」

「まず一つ。口裂け女ってさ、最初マスクした状態で綺麗かどうかを聞いて、綺麗、って僕が答えたらマスクを取って、これでも? って聞くのが流れなんだよね」

「あ……うん」

「そのあたりがなってない。都市伝説やりたいならまず倣ってほしいね史実に!」

「ご、ごめんなさい」

 

 おや。

 ……話通じるな。もしかしてただ口が裂けてて自分が綺麗かどうか聞きたいだけの人間か?

 スマホが鳴るけど一旦出ないでサイレントモード。

 

「えっとさ、……単刀直入に聞くけど、なんでこんなことしてるの? これで僕が綺麗じゃないって言ったら攻撃してきてた感じ?」

「あ、ううん。そういう……先輩もいたけど、それだと結局噂が広まらないから、聞くだけ聞いて、答えをくれたら……脅かしはするけど、安全に帰すよ」

「うわ世知辛。けど確かにそうか。"綺麗じゃないと答えたら斬り殺される"っていうんなら、誰がそれを証明したって話だもんね」

「そう。……そ、それで、答えを……」

「あー……そうだなぁ。まず前髪もう少し切って、目の周りちょっとお化粧するだけで大分変ると思うけど。口周りはアイデンティティだからどうもできないだろうし、むしろそれがいいっていう人はいるんじゃない? っと、これだと僕の美醜観の答えになってなくてズルいか。……うーん、じゃあたとえばさ、猫……はたとえが悪いな。君はクマを見て綺麗だなぁ、って思う?」

「クマ……?」

「そうそう。愛玩動物として可愛いなぁとか毛並みが綺麗だなぁ、とかじゃなくてさ。このクマになら欲情できるってそう思うことある?」

「よよよ、よくじょっ……」

「その様子を見るに無さそうだけど、今そんな感じ。君ってば怪異ってやつだろ? 都市伝説的な。種族違うから見た目がどれだけ人間に似てても美醜の判断ができないんだよね」

 

 これは本心である。じゃあ聞くけど貞子見て「綺麗かどうか」って感情持つ? っていう。いや役者さんは綺麗なのかもしれないけどさ、実際井戸から這い出て来てテレビからも這い出て来た女性見て思うのって綺麗かどうかとかじゃないじゃん。なんだこいつじゃん。人間の姿をしているけど別の生き物じゃん。

 わかんないよ? さっき先輩って言ってたし、もしかしたら口裂け女界隈では「この口裂け女は可愛い」とか「こっちの口裂け女はクール系」とかあるのかもしれないけどさ、僕とりあえず今目の前にいるこの子しか知らないからさ。

 

「……じゃあ、仮に、私を普通の人間であると……見て、どう?」

「仮にか。便利な言葉だよね。先入観を消せって中々無茶な事言ってる自覚ある?」

「ごめんなさい……」

「ただまぁ……あー、ちょっと、二秒くらい微動だにしないでいられる?」

「う、うん」

 

 転生チートを使う。

 その名も幻術。NINJAのアレ。いやアレ絶対強いと思ったんだよね。だから貰った。

 それで口裂け女さんの目周りを良い感じに盛って、髪の毛も良い感じに纏めて。

 

 2dm<=3 (2DM<=3) > [4, 8] > 0 > 成功数0 失敗

 

「ごめんタイプじゃない」

「そ……かぁ」

「でも水準的には綺麗なんじゃない? 他の口裂け女がいるんならその子らとも会わせて欲しいけど」

「れ、連絡先知らないから……」

「連絡先とかあるんだ。……あれ口裂け女って1980年代前後あたりの怪異じゃなかったっけ。ガラケー?」

「ううん、普通にスマホ」

「マジで? じゃあ連絡先交換しようよ」

「いいの?」

「口裂け女の友達は流石にレアじゃない? ちなみに僕あれね、転生者。前世ある人」

「て、転生……ってことは、まさか、イエス……?」

「ああそれ本来の意味の転生ね。そうだね、元の世界に舞い戻るって意味だからね転生って。でもそうじゃなくて、僕がしたのは異世界転生の方ね。てんしょうじゃなくててんせいの方ね。そんな日本語ないよねごめんね」

 

 連絡先が来る。

 名前は口裂け女だった。……え、個体名とか無い感じですか。

 

 そしてふと見た着信履歴のバッヂ数がとんでもないことに。

 

「今メリーさんから電話来てるんだけどさ、出てあげた方がいいと思う?」

「ああ……あの子は一度目の電話で位置を伝えられないと、ワープができないから……その、迷惑じゃなかったら」

「ああそういう仕組みなんだアレ。……メリーさんって最終的に背後に来て殺してくるんだっけ?」

「ううん、メリーさんも私達と同じで、殺しちゃったら広まらないから……怖がらせるだけ怖がらせて、終わり」

「成程。一応僕自分の身体に雷纏ったりできるんだけど、そういうことはしない方がいい?」

「痛いのは、皆嫌だと思う……」

 

 確かに。

 仕方ない、出るか。

 

『あ、やっと出てくれた! もしもし私メリーさん、今ゴミ捨て場にいるの!』

「中間すっ飛ばして背後に来ることってできる?」

『えっと……あー、や、やってみるね。もう一回かけ直すから』

「うん、お願い」

 

 切れる。

 かかってくる。

 

「もしもし私メリーさん、今あなたの後ろに……やった、できた!」

「流石に体裁保って電話かけるところまではしない? 端折らせたの僕だけどさ」

「……リテイク?」

「いやいいよ。そして二人ともに言うことなんだけど、僕を標的にしない方がいいよ僕怖がらないから」

 

 もう少し苦言を呈すのなら、メリーさんは持ち主の所有物だから怖いんだ。僕「メリー」なんて人形捨ててないから最早誰でもないなんでもないストーカーだよソレは。

 

 2dm<=3 (2DM<=3) > [4, 2] > 1 > 成功数1 成功

 

「……その、なんだかあなた、知識がありそうだから、聞きたいのだけど」

「どうしたら人間が怖がってくれるかについて、だったらなおさら無理無理。僕人の気持ちとかわかんないし」

「そ……かぁ」

「他の怪異とかは? えーと、たとえば」

 

 メリーさんが指笛を吹く。ピーッと鳴る甲高い音。

 同時、遥か彼方からものすごい勢いで何かが迫ってくるではないか。あれ時速100kmは出てるな。

 そしてそれは僕の前でキキーっと止まった。止まって……侮蔑の目線を向けられた。

 

「……なんだ、人間か」

「人面犬……!? 君は最早死語に等しいレベルでは!?」

「うるせえ。勝手に人を死語扱いするな」

「ごもっとも!」

 

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「えーと、で、人面犬は……怖いっていうか珍獣の類だから怖がるの結構厳しいよ。君って基本的に害無いじゃん車追い抜くとき以外」

「俺はメリーに呼ばれて来ただけだ。なんで会って一秒程度のお前に説教されなきゃならねえ」

「いやホントごめんそれは。でも文句はメリーさんとついでに口裂け女に言って」

 

 事情を話す。かくかくしかじかまるまるうまうまなっとうねばねばびよーんびよーん。

 すると人面犬は「はぁ」とダルそうに溜息をついた。マージでおっさんの顔だから嫌のそうなのがダイレクトに伝わってくる。

 

「殺傷力の高い、あるいは恐怖一本でやってる奴なら、テケテケかくねくねあたりだろ。誰か連絡先持ってるか?」

「あー、テケテケちゃんは確かに人間嫌いだけど、あの子北の方にしかいないから……」

「くねくねは……私達でも、話、通じないし……」

「メリーさんじゃないけど、僕もワープできるから北国みんなで行ってみる? 僕が怖がるかどうかは別として」

「で、できるの?」

「できるできる。ほら」

 

 指をパチンと慣らせば、北国だ。といっても別に真冬でもなんでもないから、まぁ多少肌寒いかな程度の温度感。

 見渡す限りの田んぼ。遠くを走る列車。

 その場にいる誰もが「お」という顔をする。これは、コンボが。

 

「あ、あれ! あそこ!」

 

 メリーさんが指差す先。

 そこには確かにくねくねした白いものが。田んぼのど真ん中に立って、身体をくねらせている。

 

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 ……なんか幻術系の干渉を受けているけれど効かない。っていうかくねくねって「見た人がおかしくなるから怖い」のであって、僕自身が見ても特に恐怖はないんだよね。

 一応他の三人(?)の方を見ても、おかしくなっている様子はない。

 

 それよりも、この世界に転生してきて初めて感じるわくわくが心を支配している。

 

 ダン、という音。脚で地を蹴った音ではない。腕でコンクリを叩いた音だ。

 その音の発生源は奇怪な声を上げて一直線、三人と一匹がいる中の僕目掛けて突撃してきて──男子中学生であればふつーに頭部陥没で死ねるレベルの打撃を放ってきた。

 対し、僕は──頭突きで返す。

 

「!?」

 

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 驚いただろう、僕の硬さに。

 そして僕も驚いている。なんせ弾いたと思った彼女の身体の奥から、もう一人が足払いをしてきたのだから。

 冷静にジャンプして、殴って来た女性よりもかなり若い……というか少女である方を見る。

 

「いいね、サッちゃんもか!」

「ッ、避けられた!」

「そうだね、君たち二人は人間への恨みが強い。そして話を聞いた奴のところにも現れるっていう性質は恐怖を助長するだろう! でも!」

 

 下半身がないまま、腕の力だけで飛び上がり、再度頭部に殴打をしかけてくる女性。足首から先のないその身体で、僕の足を潰さんとしてくる少女。

 

「敵の硬さが分かった以上は、狙う場所は同じにした方がいいよ!」

 

 前転。ただそれだけで渾身の踵落としが上半身だけのテケテケに炸裂し、再度の頭突きがサッちゃんに突き刺さる。

 そのまま僕はロンダートに切り替えて着地。10点10点10点!

 

 振り向けば……動かなくなった二人が。

 

「……死んでないよね?」

「だ、大丈夫だと思う」

「気絶しているだけだ。だが、目を覚ませばまた襲い掛かってくるぞ」

「ちなみに恐怖はー?」

「無いね! じゃ帰ろうか!」

 

 指をパチンと鳴らして転移する。

 いやぁ。殺傷力が高けりゃいいってもんでもないし、理解できないからなんだって話だし。

 怪異って難しいね。

 

「……ふむ。だが俺も一端の怪異だ。このまま怖がらせられないまま返すってのもな。よし、んじゃ人間。『牛の首』って怪談を知ってるか」

「ああ知ってるよ。めっちゃ恐ろしいんでしょ」

「お前怖がる気ないだろ」

 

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 バレた?

 いやチート能力があれば要らないんだよね恐怖心。物理効かないとか関係ないし。

 

「あとは……こっくりさんとか、ひとりかくれんぼとかの、降霊術系とか」

「アレは仮に僕が怖がったとして、誰が得するの?」

「ちなみに私は狐狗狸さんって怪異に会ったこと無いよー」

「ひとりかくれんぼは一応あのぬいぐるみが怪異になる……説。や、やってみる?」

「あとごめん、普通に撃退できる」

 

 右手から炎、左手から氷、全身に雷と風を纏う。

 どうですかこの厨二能力。そりゃファンタジー世界だと思ったからねえ!

 

「後は……思いつくのはきさらぎ駅だの犬鳴トンネルだの、地名系か」

「僕が前世持ちだから異界に言ったところでふーんなんだよね」

「だが帰れねえとなれば、流石のお前だって」

 

 幻術できさらぎ駅を作り、全員を術中に嵌める。

 一瞬で周囲に霧が立ち込め、駅と駅舎と電灯と、そしてどこかから聞こえてくる祭囃子の音が響き始めた。

 

 5dm<=5 (5DM<=5) > [2, 1, 1, 7, 7] > 5 > 成功数5 ミラクル

 

 あ、これでも上がるんだー、なんて所感を抱きながら、クオリティの高さを見せつける。残念ながら容姿が分からないので蓮美ちゃんは用意できませんでした。

 

「これ系でいうなら海外のBackroomsとかも都市伝説っちゃ都市伝説だよね。作った人わかってるけど。SCPとかも」

「まー、私達は子供たちの噂出身ですから、曖昧度で言えば勝ってますよね」

「か、海外で言うなら、サイコポンプスとか、バンシーとか……でも、都市伝説、じゃないか」

「お……丁度電車が来たな。電車といえばあれだろ」

 

 ……僕の幻術の中なのに電車が来た。

 これはもしかするともしかするのでは?

 

『──ただいまより参ります電車にご乗車されると、恐ろしい目に遭います』

 

 元のアナウンスってもっと砕けてなかったっけ? とか思いながら電車に乗り込めば、おやまぁなんとおどろおどろしい。

 赤い部屋を思わせる血みどろ車内に、乗客はみんな精気の感じられない男女。

 

 6dm<=6 (6DM<=6) > [1, 5, 3, 6, 8, 6] > 6 > 成功数6 ミラクル

 

『次は~、活け造り、活け造り~』

 

 という車内アナウンスのあと、後方に座っていた男性に小人……というか猿が群がって、その身体をぶっ刺そうとし始めたではないか。

 まぁ刺せなかったんだけど。

 

「──いつからそこに男性がいると錯覚していた?」

 

 突然男性が雲散霧消する。猿たちは僕をギッと睨むけど、特に何もしてこない。

 

『次は抉り出し~、抉り出し~』

 

 アナウンスも留まるところを知らず、猿たちの標的が女性に移り変わるけど、ふ、そっちは残像だ。

 

「次は挽肉です! 挽肉! 一人くらいさせてください!」

「ばかだな、グロテスクなものであってもR指定は入るんだぞ。そんなこと言ったらテケテケの時点で相当だったけど。そぉしてここは僕の幻術の中! イザナミだ! イザナミじゃないけどね!」

 

 幻術を解く。

 全てが靄へと消えていく中で、「逃げるんですか! 次に来た時は絶対──」という声が聞こえたけれど、次も同じ結果になるから呼ばない方がいいと思うよ。

 

「……あれ、みんなは?」

 

 見渡せども、いない。口裂け女もメリーさんも人面犬も。

 え、置いてきた? ……としても別に大丈夫だろうけど。仕方ないなぁ、もう一回きさらぎ駅作るか。

 

「あ、帰って来た。おかえりー」

「おかえりとは。ここ幻術の中なんだけど」

「で、電車に乗ったと思ったら、電車ごと消えちゃって……私達、一生この中に閉じ込められるのかと思ったわ」

「肝が冷えたな」

「君達が怖がってどうすんのさ」

 

 なるほど、でもちょっと理解はした。

 猿夢は猿夢で独立した怪異だから、ノータッチだったとかそんな感じかな。

 

「じゃあ幻術解くけど、きさらぎ駅でやっておきたいこととかない?」

「ここ圏外でつまんないからなーい」

「山道はあるが、車がほぼ走ってなくてつまらねえな」

「綺麗かどうか聞く対象がいなくて寂しい……おじいさんならいたけど」

 

 非難囂囂である。

 それじゃあ今度こそ解除して、と。

 周りを見れば、口裂け女、メリーさん、人面犬がちゃんと揃っている。

 

 ……ただ見知らぬものもついてきた。

 

「この立方体は……エグい呪物だよねこれ」

 

 7dm<=7 (7DM<=7) > [2, 4, 7, 8, 2, 7, 3] > 6 > 成功数6 ミラクル

 

「まぁ、コトリバコだわな」

「コトリバコかー。……これも怪異といえば怪異だけど、怖がったところで誰か得する怪異がいるのかな」

「コトリバコに意思とかある、の……かしら」

 

 コトリバコ。百葉箱的なソレじゃない。起源は動物の雌の血と水子……産まれることのできなかった赤ちゃんを入れた箱を作り、それを対象に渡すとその対象の一族が根絶やしになるとかいう最強呪物。さらに話は発展し、16個あるだとか子供が知らずに持ち出しても発動するとか、一歩間違えれば全人類死ぬ系の特級呪物である。

 そして多分感覚的にこれ「チッポウ」。

 怖い……という感情は、でもさ。

 

「目の前で爆発しそうになっている爆弾が怖い、って感情で満足できるの?」

「難しいところだな、実際」

「別の恐怖、よね」

「いや怖いよ。流石に怖い。僕のミスで日本全滅は流石に怖い」

 

 8dm<=7 (8DM<=7) > [10, 5, 8, 7, 7, 6, 8, 7] > 4 > 成功数4 ミラクル

 

「じゃけん異空間にポイしましょうねー」

「待て。……お前さっきのかくかくしかじかまるまるうまうまなっとうねばねばびよーんびよーんの時に、異世界から来たと言っていたな、人間」

「え、うん」

「なら今お前が飛ばそうとしている異空間は、本当に異空間か? ここと似たような異世界……あるいはお前の前世である可能性は?」

「……やば。それは怖い」

 

 9dm<=7 (9DM<=7) > [6, 10, 4, 8, 2, 10, 4, 8, 8] > 2 > 成功数2 ダブル

 

「えー。……じゃあ、うーん。まぁ9まで来ちゃった時点で感あるし」

「ああ気付いてたんだ」

「い、言おうか言うまいか、迷っていたけれど」

「実際のところ、あと八尺様とか姦姦蛇螺とかに会ってみたい願望があってさ、でも二人である以上無理じゃん? ならもう逸脱しちゃった方が早いかなぁって」

「お前に後悔が無いならいいだろ」

「うん、無いよ。……でも僕の家族が僕の失踪で気を揉むのが可哀想すぎるから……あ、そうだ」

 

 分身の術を使う。

 出てくる自分。

 

「ドッペルゲンガーね」

「ドッペルゲンガーか」

「ぶ、分身はドッペルゲンガー扱いでいい、のかしら?」

 

 10dm<=10 (10DM<=10) > [8, 9, 5, 10, 1, 9, 3, 1, 7, 4] > 11 > 成功数11 カタストロフ

 

「良い判定らしい。じゃあ僕、何の能力も持たない分身の僕。一般中学生として頑張ってくれ。まぁ知識チートはあるから大学くらいまではイケイケだと思うけど、勉強怠ってるとその内ヤバいよ。特に今の小学生プログラミングとかできるからね」

「わかってるよ。でもぶっちゃけ大人の脳で学生やれるのかなりいいよね。周囲の子に対する優越感とかじゃなくて、仕事しないで学んでていいっていうのが最高過ぎる。大人になってからだと学びたいと思っても学べない事たくさんあるし、今から大学どこ行くかとか考えられるとかサイコーじゃない?」

「実際かなり羨ましい。──それじゃあね。怪異に遭って逸脱しそうになったら、連絡してよ。このスマホあげるからさ、口裂け女かメリーさんを通じて連絡できるよ。あとで僕もスマホ手に入れてみるから、その時はその時で」

「……次君にあったらドッペルゲンガー扱いにならない?」

「うわ確かに。メリーさんに連絡するのもマズいか」

「じゃあ、ハブは口裂け女ちゃんだね」

「適当に便箋でも放っておきゃ、俺が運んでやらないこともないが」

 

 良い奴かよ。

 ……ま、これ以上はだらだらしちゃいそうだから。

 

「残響は?」

「うーん、じゃあ憧憬:懐古で」

「またどこにでもぶっ刺さりそうなものを……」

 

 さようならだ。

 口裂け女、メリーさん、人面犬を引き連れて──転移する。

 転移先は北国。

 

 現れた僕達を見たテケテケとサッちゃんは、つまらなさそうに口を尖らせた。

 

「……人間じゃなくなっちゃったなら、興味ない」

「これからはナカーマなんだから仲良くしようよ」

 

 こうして。

 この世界の都市伝説に、「チート転生者」が加わる。考え得るあらゆることが可能なその転生者は、数多の怪異とのパイプを持ち、日本全土を恐怖のどん底に陥れたとかなんとか。

 ……この都市伝説の内容自体は「転生したところで異世界には行けず、同じ日本に生まれるだけ」というなんとも地味な怪異だったわけだけど。


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