今作のウーサーは別に人妻好きという訳でも女好きという訳でもありません。
原典のウーサー王とはかけ離れた人物になってるのでその辺りを気にする方はどうかご注意してください。
切嗣にとって、彼と出会いは青天の霹靂だった
出会って己の願いを言い、しかもその願いが自分と全く同じ願いだった。
当然、信用できなかった。
何せ聖剣の鞘を触媒として召喚されるのはかのアーサー王しかいないと思っていたからだ。
彼の真名はウーサー・ペンドラゴン。有名なアーサー王の父。
彼もまた王であり争いを生む存在だ。
散々争いを生んでおきながら平和な世界を作るなど片腹痛い。
「平和を望むか…だと?」
「当然だ、僕はその為にこの聖杯戦争に参加した」
だが、彼の「平和を望むか?」という問いには正直に答えた。
世界の平和は切嗣の理想だ。
多くの戦場を経験し、戦争を嫌悪した切嗣にとって戦争という存在は是が非でも根絶したいモノ。
悲しみしか生まないモノをどうして享受できようか?
「どうやらその言葉に嘘は無さそうだ。だが、顔を見る限り随分と無理をしている」
王としての経験か、あるいは予てからの洞察力か、彼は切嗣の心中を言い当てる。
サーヴァントとは英霊。歴史に名を刻むほどの人物。
只人である切嗣からすれば彼は怪物にしか思えない。
切嗣もかつては怪物のような実力を持った魔術師と戦った事はあるが、目の前の彼はそれらと比較にならない。
正真正銘の怪物に心が怯え悲鳴を上げているが、それを無理矢理抑え込んで怪物と向き合う。
「そんな有り様で、この聖杯戦争を勝ち残るつもりか?」
まるで全てを見透かすような鋭い王の眼差しに切嗣は以前の『
「勝ち残ってみせるとも。僕はこの第四次聖杯戦争を人類最後の流血にしてみせる」
つい以前の自分では決して言わなかった事を口走ってしまった。
しかし、今の言葉はまごう事なき切嗣の願いであり決意だ。
今度こそ世界に争いを消せるのならば、切嗣は悪魔にだろうと縋りつく。
愚かな事は分かってる。それでも諦めきれなかった。
どうしようもなく愚かな理想主義者。
それが衛宮切嗣という男の正体だった。
「いいだろう。お前をマスターと認め私と同じ理想を追う事を許そう。だが、この理想は生半可な覚悟では達成出来ない。故に途中で降りる事は許さん。ゆめ忘れるな」
それが切嗣とウーサーとのファーストコンタクトだった。
数日後
「ずるーい!ズルイズルイズルイ!キリツグずっとズルしてたー!!」
イリヤスフィールと切嗣はクルミ探しのゲームをしていた。
切嗣の大人気ないズルにイリヤスフィールは怒り心頭だ。
それを切嗣は「ゴメンゴメン、謝るよ」と謝り、最終的に切嗣はイリヤスフィールを肩車し、胡桃探しを再開する。
その様子は正に平和な親子そのもの。
微笑ましい光景にウーサー…即ち今のセイバーは自然と笑みが溢れる。
「あ…
イリヤの言葉に切嗣も近づいてきたセイバーに気づいたようだ。
切嗣の顔から先程浮かべていた穏やかな表情が消え、仕事の顔に切り替わる。
「申し訳ありません切嗣。お二人の時間を邪魔するつもりはなかったのですが…」
「構わないよ。君が来たという事は例の物が届いたという事だね?」
「ええ」と互いに事務的に言葉を交わし、何処かへと移動しようとする。
イリヤは自分を置いて何処かに行こうとする切嗣に不安になるが、
「大丈夫です。イリヤスフィール様」
そのイリヤの心境を察したのかセイバーが声をかけた。
「仕事と言っても、ただの確認作業ですのですぐに終わります。少しの間だけ切嗣を借りますが、それまで我慢できますか?」
「うん…我慢出来る…」
「良く言えました。アイリスフィール様が呼んでいましたよ。どんな遊びをしていたのか気になるそうなので」
「分かった!」
そう言ってセイバーはイリヤの頭を撫で、イリヤは少し照れながらアイリスフィールの元へと走っていった。
「意外だな。子供は苦手なのかと思った」
「心外ですね。次代を担う若者は好きですよ私は」
セイバーのイリヤの対応に切嗣は少し驚いた様子だった。
「そうかい?僕が夢で見た記憶では君は生前から実の子供には相当厳しい扱いしてたみたいだけど?特に長女とか」
「おっと、古傷を抉るのは卑怯ですよ。こう見えてちゃんと心底後悔してるんですから…」
「はいはい」と切嗣の言葉には鋭いナイフがあるものの、その雰囲気は何処か気安かった。
まるで長年連れ添った友人あるいは相棒のような雰囲気が2人の間にあった。
「辛いですか?」
「ああ…正直かなり無理してる…」
セイバーは切嗣の心を見透かしていた。
切嗣は本来争いを好まない。むしろ憎んですらいる。
アインツベルン城でアイリスフィールと出会い、夫婦となりイリヤスフィールを儲け、父となった彼は、やがて『本来の衛宮切嗣』へと戻らせてしまった。
かつての冷酷な『魔術師殺し』の衛宮切嗣に立ち戻らせるには相当な無理をしていた。
争いを生み出す英雄を嫌悪の対象している切嗣にとってセイバーに漏らす弱音はあり得ない事態だった。
「しっかりしろとは言いません。ですが貴方は生涯を賭けてこの第四次聖杯戦争を人類最後の流血にしてみせると私に言った」
「私はその言葉を信じた。その言葉に嘘は無いと判断し私と同じ理想を持つ貴方なら信頼できると思ったからです」
「ゆっくりと立ち上がってください。そして立ち上がって、この戦争に勝って、その後に存分に平和を享受すれば良い。その為に戦っているのですから」
「貴方の意思が折れない限り、私は全力で貴方をサポートします。この戦争に勝って世界に平和を成す為には貴方の力が必要なんですから」
「…ああ…大丈夫…大丈夫だ」と切嗣は震えた声で応える。
切嗣が立ち戻るにはもうひと押し必要だと思ったセイバーは思い切って話題を変える。少しでも切嗣の後押しになる為に。
「せっかくです。この戦争に勝って平和になった後の話をしましょう」
「切嗣、貴方は平和になった世界で何をしてると思いますか?」
切嗣はその言葉にしばし硬直し震えた声で答える。
「分からない。そんな事、考えた事もなかったな…」
切嗣は師であるナタリア・カミンスキーを失った後も戦場に身を置いていた為、あまり平和という物を享受出来ないでいた。
だが、此処に来てアイリスフィールとイリヤスフィールという平和の象徴が切嗣の目の前に現れた。
幼少期以来の平和な時に切嗣はかつてない程の心地良さを得た。
それが家族。切嗣が安らぎを得られる唯一の居場所。
すると自然と切嗣の口から己の願いが溢れた。
「僕は…平和な場所でアイリやイリヤと暮らしたい」
「そんな世界が…僕は欲しいよ」
最終的に自身の妻を捨てる事になったとしても、切嗣は自身の願いをセイバーに吐露した。
それはウーサーを友人と認めているという証。
ウーサーを相棒として認めてる証だ。
「叶うかな?」
「叶いますよ。その為の聖杯なんですから」
切嗣は再び立ち上がる。
そして少しの間だけ今の自分に蓋をして、昔の自分に無理矢理切り替える。
そして切嗣は再びセイバーの隣を歩き始めた。
「しかしセイバー。きみ初対面の時より随分と口調が違うけど、それが素なのかい?」
「ええと…お恥ずかしながらこれが素なんです。公私は分けるタイプでして、あの時は所謂仕事モードというやつでして…口調を変えていたんです。こういう時にはあの時の口調に変えましょうか?」
「聖杯戦争は別に公務じゃないだろう?そっちの方が接しやすいしそのままでいいさ」
「……感謝します」
2人はそのまま雑談をしながら歩き目的の部屋に到着する。
その部屋はアインツベルンが用意した切嗣の私室。
その部屋の机には二丁の銃が置かれていた。
「ご所望のキャリコM950とワルサーWA2000です。アインツベルンの力と舞弥さんと協力して漸く入手出来ました。私はアハト翁の説得をして運搬を手伝っただけですので入手で主に苦労したのは彼女です。後で労いの言葉でもかけてあげてください」
「ああ…ありがとう。ちゃんと言っておくよ」
セイバーと切嗣の協力者である久字舞弥が調達してきたのは銃器だ。これから起こる第四次聖杯戦争へと向けて調達した切嗣の武器だ。
「それとコレも。貴方がいつもしてるでしょうし必要無いとは思いますが念の為メンテナンスをしておきました。覚えたばかりで正直拙いとは思いますが…」
続いてセイバーが切嗣に渡したのは、切嗣が愛用している拳銃『トンプソン・コンテンダー』だ。
切嗣はそれを受け取り、動作を確かめる。
銃身を落とし、露わになった空の薬室に懐に忍ばせてあった起源弾を装填する。
銃身を振り上げ薬室を閉じ込めて、得物を構える。
動作は問題無く、何処にも不備は無い。
これならばかつての切嗣のように射撃が可能だろう。
「うん…完璧だよ。しかし、君は本当に才能の塊だな。一度教えただけでどんどん知識も技術も吸収していく」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
切嗣の賛辞をセイバーは笑顔で受け止める。
「ワルサーとキャリコ、どちらから試射します?」
「キャリコからだ。ワルサーは狙撃銃だ。試射は後で落ち着いた場所でやる。キャリコは実戦用。こればかりは実戦で経験を積まないと使いこなせない」
切嗣はキャリコを手に取り、重みを確かめる。既に弾は装填されているようだ。
ヘリカル式と呼ばれる特殊な弾倉に込められた装弾数は50発。
キャリコを左手で構える。
キャリコM950はサブマシンガン。
威力は低いが装弾数が多く牽制用の
この銃の使い方は既に頭に叩き込んである。
使う分には問題無い。
「付き合ってくれるかい?セイバー」
「ええ、構いません。この部屋を私の魔術で多少の衝撃でも耐えれる程度に加工して置きました。銃弾程度なら問題ありません。この場で試しても問題無いかと」
「用意周到だな君は…」と切嗣は意識を切り替えて、試射という名の模擬戦を開始する。
瞬間、キャリコから轟音と共に装填された弾が複数発射された。
セイバーはその弾丸を、音速を超えた常識外の速度で抜いたナイフで切り落とす。
キャリコをフルオートに切り替える。
肉体に強化魔術を施し制圧射撃を行う。
放たれた数十発の弾丸がセイバーに迫るが、セイバーは落ち着いて既に切嗣がフルオート射撃に入る前に抜いていた拳銃の全弾を発射する。
マシンガンを超える速度で放たれた17発の銃弾は切嗣の放った数十発の銃弾をまるでビリヤードのように弾き、切嗣の放った弾はウーサーに当たる事なく部屋中に散らばった。
「今の銃弾…“変化"の魔術か?」
銃弾としてあり得ない軌道を描いたセイバーの放った銃弾に切嗣はすぐに違和感に気づいた。
「ご名答。銃弾そのものに“変化"の魔術を使ってゴムのように“弾む"特性を付与しました。これならば四方八方から対象を攻撃できると思って使ってみました。いいアイディアでしょ?」
変化の魔術とは、強化魔術の次の段階にある基本的な魔術の一つだ。
通常では刃物に火が起こせないように、そういった本来持ちえない効果を付属させる魔術だ。
要は特性を後付けさせる魔術だ。セイバーは変化魔術で銃弾に“弾む"特性を付属させたのだ。
「僕としてはそんな物を何の訓練をこなさずに使いこなす君に驚きだよ」
いくら銃弾が弾む特性を持っていても、それを自由自在に操るのは至難の業だ。
故に才能がある者が何十何百、あるいは何千回もの訓練をこなして初めて使いこなせる代物だ。
それが出来るだけで天才だと言うのにこの男は何の訓練もなく、それも
恐ろしい程の才能。あらゆる不可能をこの男は『才能』という理不尽で粉砕する。
それがウーサー・ペンドラゴン。
正に才覚の怪物だ。
(逸話というのもアテにならないな…ひとまず真名がバレる心配は無さそうだ)
当然、いくらウーサー・ペンドラゴンについて調べてもそのような情報は全くない。
逸話にも載らないただの本人の資質。それは宝具にも勝るセイバーの武器だ。
故に他所の陣営からすれば彼の真名は難航するだろう。
何せ剣術や魔術のみならず、銃などの現代兵器も操るんだ。本人が明かさない限り真名がバレる事は無いだろう。
「その銃は?」
「舞弥さんに頼み込んで譲って頂いたグロックをベースにパーツを自作して私なりにカスタマイズしてみました」
舞弥からセイバーに貰った銃はグロック17。
セイバーはそれをあろう事か分解し、パーツを自作し、おそらくサーヴァント専用にカスタマイズしたのだろう。
見た目は従来のグロック17より銃身が長く全体的にゴツくなり、あらゆる所に術式を刻まれ、様々な強化を施され最早人間では扱えない銃と化していた。
「それ魔改造って言うんだよ…」
“こんな短期間でまさかカスタムまで手を出すとは…ほんと何でも出来るなコイツ…"と切嗣はあまりにも多才なセイバーに内心で半ば呆れながら彼の有能さを頼もしく思う。
「さあ、まだまだ続けますよ。どんどん撃ってその銃を馴染ませてください」
「それじゃあ…お手柔らかに頼むよ」
そして繰り広げられる銃撃戦。
切嗣が撃ち、セイバーがそれを捌く。
銃声が鳴り響き、うっかりセイバーが切嗣の部屋を防音にする事を忘れていた為、アインツベルン城に銃声が響き渡った。
その音に驚いたアイリスフィールとイリヤスフィールが切嗣達の様子を見に切嗣の私室を訪れるまで二人の模擬銃撃戦は続いた。
その後に騒ぎを聞きつけたアハト翁に激怒され、主従揃って大目玉を食らうのはその数十分後の話だった。
お前ら短期間で仲良くなり過ぎだろ
ちなみになんでこんなに仲良くなったのかというと、ウーサー自身がただただ切嗣と相性が良かったというだけの話。
ウーサーは切嗣の理想と同じ理想を抱いているだけじゃなく、切嗣と同じく戦争そのものを唾棄してるので、理想だけでなく思考もどこか似通っています。
切嗣の外道戦法も許容するどころかむしろ進んでやるくらい戦いでは一切手段を選ばないウーサーのスタンスは切嗣にはとても助かるので、切嗣からはちゃんとパートナーと認識されています。
多分、空いた時間に罠や武器のトークとかでめちゃくちゃ会話が弾んだりしてるくらいには仲が良い。