ウーサー君は切嗣君のマブダチです   作:クソ眼鏡3号

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エスコート

 

「着いたわ!此処が日本!」

 

「落ち着いてくださいアイリスフィール様。あまり興奮なさると転びますよ」

 

セイバーはアイリスフィールと共に飛行機で日本の冬木市へと向かった。

空港で、初めての外、初めての外国。初めての経験ばかりのアイリスフィールにとって興奮冷めやらないようだ。

声を上げて周囲を見渡し、眼を輝かせいる。

 

切嗣の妻であるアイリスフィールと行動を共にするのは理由がある。

 

それは『アイリスフィールがセイバーのマスターである』事を他マスターに誤認させる事。

情報は武器だ。

使い方によってはどんな強力な兵器を上回る武器になる場合もある。

 

その為にアイリスフィールとセイバーは冬木市を歩き回る。

 

派手に動けば動く分だけ、敵マスター達はアイリスフィールがセイバーのマスターだと誤認するだろう。

 

セイバーの事前調査の元で作成したプランに添って時に食べ、時に遊び、2人は冬木市を歩き回る。

側から見れば絵に描いたような美男美女がデートしているように見えるだろう。

無論、2人にそんな気持ちは微塵も無い。

何故ならば

 

「ええ⁉︎切嗣ったら城の食事が気に入らなかったの⁉︎」

 

「気に入らないという訳ではありませんよ。アインツベルンの高級な料理がただ少し口に合わなかったというだけです。味覚が庶民派なんですよ」

 

「そうなの…じゃあ私も食べてみたいわ!切嗣の好きな味くらいは知っとかないと奥さんとして失格だもの」

 

「分かりました。ではそういう物が売っているお店に行きましょうか。リサーチ済みですのでご案内します」

 

何故なら2人の間に交わされる会話はほぼ切嗣の事ばかりだったからだ。

 

「それにしても、セイバーって私より後に切嗣と会ったのに私以上に切嗣の事を知ってるのね。少し嫉妬しちゃうくらいだわ…」

 

「あはは…こればかりは相性が良かったとしか言いようがありません。申し訳ない…」

 

アイリスフィールが頬を膨らませながらセイバーに精一杯の嫌味を言う。

本音を言えば自分はおろか下手すると舞弥以上に切嗣と会話し、その内情を知るウーサーが少し羨ましかった。

何よりセイバーはサーヴァント。

切嗣にとって数少ない頼れる相手なのだ。

アイリスフィールにはもっと切嗣に頼られたいという思いがある。

だからなのか、アイリスフィールは切嗣のパートナーとして完璧なウーサーに少しだけ嫉妬した。

 

そして二人は街を歩く。

冬木市でしばらく穏やかな時を過ごし、夜が来た。

 

アイリスフィールが「海を見たい」と言ったので二人は浜辺にきた。

 

「セイバー。一つ聞いてもいい?」

 

「なんなりと」

 

アイリスフィールは海を見ながらセイバーに問いかけた。

 

()()()()()()()()()()

 

「マスターでありパートナーであり得難い友と思っています」

 

アイリスフィールの質問にセイバーは即答するが、アイリスフィールの顔は満足していない。

 

「今の切嗣は無理をしてるの。無理をして昔の自分に立ち戻ってる。だからいつか限界が来るかもしれないわ」

 

「もし切嗣に限界が来て、折れてしまったら」

 

「セイバー。貴方はその時どうするの?」

 

アイリスフィールの問いにセイバーは変わらず即答する。

 

「その時はその時です。再起が出来るのならば再起出来るように何度でも励まし発破をかけましょう」

 

「もし二度と戦えないほどに切嗣が折れてしまったその時は…」

 

セイバーはそこまで言って、()()()()()()()()()()()()()()

その可能性をセイバー自身も考えてなかった。

いつものウーサー・ペンドラゴンならば躊躇なく無理矢理にでも切嗣を戦場に戻すか、あるいは切り捨てるか即断できたハズだった。

なのにすぐ言葉が出なかった。

 

「その時は…?」

 

心配そうに見るアイリスフィールの前で、セイバーは思考を巡らせる。その表情を曇らせる。

 

「申し訳ありません。この先は私自身にも分かりません。どうやら私は切嗣と想像以上に関わっていたようです」

 

「いつもの私なら…すぐに切り捨てるか無理矢理にでも利用すると答えたでしょうけど、そう思った瞬間"そんな事でこの関係が終わるのは嫌だ“という考えがよぎってしまった。こんな事、初めてです…」

 

セイバーの答えにアイリスフィールは笑顔を浮かべる。

 

「そう思ってくれるだけで充分。切嗣に貴方みたいな友達が出来て、私も嬉しいわ」

 

アイリスフィールは"セイバーは絶対に裏切らない“と確信した。

彼が切嗣を裏切るならばそれはきっと彼にとっても切嗣にとっても深い理由がある時だけだろう。

セイバーと切嗣はいつの間にか深い関係を築いていた。本人がその関係を惜しむ程に。

アイリスフィールにとって、それはとても嬉しい事実だ。

切嗣には寄り添う者がいる。妻であるアイリスフィールの他に娘のイリヤと切嗣の助手の舞弥の他に、もう1人の切嗣の理解者が現れたのだ。

その事実に安堵すると共に自分やイリヤよりも遥かに短い期間でそこまでの関係を深める事ができたセイバーに少し嫉妬してしまう。

 

 

 

 

すると、サーヴァントの強い気配を感じた。

 

「…ッ⁉︎」

 

それは挑発。

おそらく敵が挑発しているのはセイバーだ。

その反応は獲物が釣れたという事。

敵からわざわざコンタクトを取ってきたのはセイバーとしては意外だったが、せっかく釣れた獲物を流す手はない。

 

「アイリスフィール様。話の途中ですがサーヴァントです。どうやら誘われています」

 

「あら、律儀なのね。真っ向勝負しようってこと?」

 

どうやら作戦がうまくいったようだ。

セイバーはてっきり奇襲でも仕掛けてくると思っていたが、あからさまな挑発で誘ってくるとは思わなかった。

 

「それじゃあ、お招きにあずかるとする?」

 

「ええ、そうしましょうか」

 

敵サーヴァントに誘われているというのにアイリスフィールは余裕の笑みを浮かべている。

それはセイバーと切嗣に全福の信頼を寄せているからこその笑みだ。

セイバーもその信頼に応える為に意識を切り替える。

 

(切嗣。敵サーヴァントの挑発がありました。察するに場所は海浜公園の西側の倉庫街。移動をお願いします)

 

(了解した。至急狙撃ポイントを確保する。君はアイリを護りながら敵サーヴァントと戦闘を。もし可能なら敵マスターの特定も頼む)

 

(了解しました。特定次第連絡しますので見逃さないようにしてくださいね)

 

セイバーは切嗣と念話で情報を交換しておく。

作戦は勿論、マスターの暗殺。

サーヴァントが戦っている最中は当然魔術師は姿を隠すだろう。真っ当な魔術師がわざわざサーヴァントと共に姿を見せるマスターはよほどの例外でない限りいないだろう。

マスターもそれなりの力を入れて身を隠す為、マスターの捜索は基本的には困難だ。

セイバーは剣術だけでなく魔術にも長けたオールラウンダーの戦士。

セイバーの卓越した実力は切嗣も信頼している。故にセイバーに索敵を頼む。

サーヴァントと戦いながらマスターも探すなど普通に考えれば無茶振りだが、セイバーの能力を考えればそれぐらいは可能だと切嗣は判断した。

 

 

 

そして、夜の港湾の倉庫街にて、セイバーとアイリスフィールは二槍の槍を持つサーヴァントと対峙した。

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