もう一本の勇気のバトン   作:グリまりも

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三話 :勇者

 どうやら車の中で眠っていたらしい。

 

 二喜がそれに気付いたのは香川の病院に着いてからだった。

 出発前、二喜の緊張をほぐそうと、医師が「目が覚めたら着いている」と言ってくれていたが、その通りになった。

 

 案内された自分の病室は、徳島にいた頃と同じく窓のない天恐患者用の部屋だった。

 

 転院一日目は病院内の案内や設備の使い方、守るべきルールなどの説明がされた。

 

 その中でルール、それも機密に関するものは、かなり厳格に制限されているようで、特に念入りに教えられた。

 さすがは大社が管理する病院だけあって、その辺りはだいぶ敏感なようだ。

 

 

 

 そんなこんなで一日目はあっという間に時間が過ぎ去って、次の日。

 

 とうとう勇者たちと会う日が来た。

 

「それではこの後、勇者様たちをお連れしますので、くれぐれも失礼のないように」

 

「は、はい!」

 

 大社職員が勇者たちを呼びに病室を出ていく。

 病室に一人残された二喜は、ベッドに座ったまま、心臓をバクバクと鳴らしていた。

 今から会う人物たちのことを考えると気が気でない。

 

「ああ、緊張するなぁ……」

 

 今まで、有名人と直接対面する機会など一度だってなかった。

 まして、勇者たちはただの有名人どころの騒ぎではない。

 現在進行形で人類を救っている英雄たちだ。

 

 するとそのとき、コンコン、と病室のドアをノックする音が聞こえた。

 

「ど、どうぞ!」

 

 思わず少し大きい声を出してしまう二喜。

 その声を合図として、病室の扉が開かれる。

 

 はじめに入ってきたのは大社職員。そしてその次に、その職員に案内されながら、六人の少女が歩いてきた。

 ぞろぞろと病室に入ってくる少女たち。

 テレビや新聞、雑誌などで見たことのある、まさしく時の人。

 はじめにどう声をかけるのか、頭の中で何度も練習したのに、緊張して言葉が飛んでしまった。

 

 そんな様子を感じ取ってか、勇者たちの中で先頭を歩いていた少女が口を開いた。

 

「橋渡二喜さんだったかな、すでにお互い名前を聞いているかもしれないが、初対面なことだし、自己紹介し合うというのはどうだろうか」

 

「そ、そうですね! その、僕は橋渡二喜といいます。本日は僕なんかのためにわざわざ御足労頂いてありがとうございますっ!」

 

 気を使って話のきっかけをくれたことに感謝しながら、二喜は緊張で噛みそうになりつつ挨拶した。

 

「気にすることはない。こちらこそ、徳島からわざわざ来てくれたことを感謝する。おっと、今はそれより自己紹介だな」

 

 こほん、と咳ばらいをした後、勇者たちの自己紹介が始まった。

 

「私は乃木(のぎ)若葉(わかば)という。まだまだ未熟ながら、勇者たちのリーダーを任されている。よろしく頼む」

 

 最初に自己紹介を始めたのは、勇者のリーダー、乃木若葉。

 メディアでも一番表立って取り上げられていた。

 きりっと背筋が伸びていて姿勢がよく、規律正しそうなその姿はまさにリーダーといった風格だ。

 

「タマは土居(どい)球子(たまこ)だ! こんな近い病院に足を運ぶくらいタマにはなんの苦でもないから安心しタマえ!」

 

 次に話し出したのは土居球子。

 小柄な子だが、その小さな体の中には納まりきらないほどの活発さで満ち溢れているという感じだ。

 

「私の名前は伊予島(いよじま)(あんず)です。天空恐怖症候群の治療に役立つ可能性があるんですから、私たちにとっても橋渡さんとお話できるのは光栄なことですよ」

 

 三番目に口を開いたのは伊予島杏。

 おとなしそうな様子の女子で、いかにも清純そうだ。

 あまり運動が得意そうには見えないが、実際にはあの化物と戦っているというのだから驚きだ。

 

「次は私の番だね。私は高嶋(たかしま)友奈(ゆうな)だよ! 好きな食べ物はうどん、好きになったのは香川に来てからだけどね。趣味は……なんだろう、あ! 最近は格闘技にハマってるよ。よろしくね!」

 

 最もよくある自己紹介をしたこの少女は高嶋友奈。

 とても天真爛漫で、優しく元気のある笑顔が印象に残った。

 今、香川に来てからと言っていたが、彼女は勇者の中で唯一、四国外である奈良県出身の勇者らしい。雑誌か何かにそう書いてあった。

 あの天災が起こってから四国に来るまでに、おそらく相当な地獄を見てきただろうに、こんなに強くいられるのはやはり勇者だからか。

 

「……(こおり)千景(ちかげ)、趣味はゲーム。よろしく」

 

 他の人に比べて少ない言葉で自己紹介したのは、郡千景。

 艶のある長い黒髪が特徴的で、とても綺麗だと思った。

 口数が少ないのは単に寡黙な性格なんだろうか。なんにしても冷静な印象を受けた。 

 

「上里ひなたです。私はこちらの皆さんとは違って勇者ではなく巫女なんですが、もしかしたら巫女でもお役に立てるかもしれないとのことでしたので、本日は同行いたしました」

 

 最後に喋った柔和な雰囲気をまとった少女は上里ひなた。

 病室に入ってきたとき、彼女のことだけ誰かわからなかったが、巫女だというなら腑に落ちた。

 メディアでもあまり巫女のことは紹介されていないため、二喜が知らないのは当然だった。

 

「お邪魔にならなければいいんですが……」

 

「じゃ、邪魔だなんてそんなっ! 来ていただいて嬉しいです。勇者の皆様も巫女の方も、普通ならそう会えるものじゃないと聞いていますから、こうして機会を頂けただけでも、はい」

 

「そう言って頂けると助かります」

 

 にこりと笑みを浮かべながら上里はお辞儀した。

 

「さて、自己紹介も済んだことだし、そろそろ本題に入ろうか」

 

 挨拶もひと段落着いたので、勇者に来てもらった理由、つまり二喜の天恐についての話に乃木は切り替えた。

 

「では、僭越ながらわたくしの方から今回皆様にお越しいただいた理由について説明いたします」

 

 挙手しながらそう発言したのは勇者たちを案内した大赦職員だ。

 

「といっても、皆様すでに話はお聞きのことと思いますので、改めて簡易的にということになりますが」

 

「構いません、お願いします」

 

「はい、乃木若葉様。今回皆様にお越しいただいたのは、天災以来この四国を悩ませている天空恐怖症候群の治療法の検証のためです」

 

 大社職員は二喜を手で示す。

 

「こちらの橋渡さんは一度ステージ4まで症状が進んでいましたが、勇者様たちの存在を認識したところ症状が回復しました。そこで、勇者様と彼の回復にどのような関係があるのかを調べたいのです」

 

「……たまたまじゃないの? 勇者を認識しただけで戻ってこれるのなら、今頃ステージ4患者は全員回復しているわ」

 

「郡千景様がおっしゃる通り、ただの偶然という可能性も考えられます。ただ、ステージ4からの回復は前例がない。ひとまずは偶然かどうかも含めていろいろと確かめたい、というのが大社の見解です」

 

 実際、現状では何もわからない。とにかく確かめなければいけないことばかりだ。

 巫女の上里を同席させているのも、勇者でなく、巫女でも同じ影響があるかどうかを調べたいのだろう。

 

 郡はまだどこか不満そうにしているが、とりあえずはこれ以上何かを言う気はないようだ。

 

「あの、そのためにも私たちは何をすればいいんですか?」

 

 今回集まった趣旨を聞いたうえで、伊予島が質疑する。

 

「これから、定期的にこうして顔見せしていただければ、と思います。もちろん皆様が大変なお役目を抱えているのは重々承知しているので、予定を調整しつつということにはなりますが」

 

「なるほど、わかりました」

 

「それにしても勇者が天恐に良い影響かー、それが本当ならやっぱ神樹の力が関係あるのかな。こうして今日タマたちが直接会っただけでも、もしかしたら少し良くなってたりするのか?」

 

「後ほど彼の経過観察は詳しく行いますが……橋渡さん、何かご自身で変わったところはありますか?」

 

 土居の言葉を受け、職員が二喜に質問してくる。

 

「いや、どうだろう……自分ではよくわからなくて……」

 

 言った後、ここは少し良くなっている気がする、とか気を利かせた答えをするべきだったか、とはっとする。

 

「ま、そりゃそうか、変なこと聞いてごめんな、許してくれタマえ」

 

「い、いえっそんな……」

 

「もう、タマっち先輩ったら、まだいろいろ確かめてる段階だって言われたばかりでしょ」

 

 謝る土居を、伊予島がこつん、と小突いた。

 少し和やかな雰囲気が広がる。

 

「ふむ、それにしても、ただ顔見せするだけというのはなんだな。確か、橋渡さんは我々に何か聞きたいことがあるのだとか?」

 

 ある程度職員の話も終わったので、乃木が、そんなことを切り出した。

 

「え、質問とか、してもいいんですか?」

 

「ああ、せっかくの機会だしな、我々に答えられる範囲で、だが」

 

 ちら、と乃木が職員を見る。職員は黙ったまま頷いた。

 機密に関わること以外なら話していいかどうかの許可を、アイコンタクトでとったのだろう。

 

「えっと……」

 

 質問の時間があるなんて思ってなかったため、ちゃんと考えをまとめてこなかった。

 しかし、正直聞きたいことは山ほどある。

 二喜は、その中でも最も強く気になっていたことを質問した。

 

「その、皆さんは……怖くないんですか?」

 

 二喜がそう質問したら、勇者の皆は一瞬、少し考えるように黙った。

 上里はそんな勇者たちをじっと見つめている。

 

 まずい質問をしてしまったかと思い、二喜は補足する。

 

「えっと、僕はバーテックスに一度襲われただけでこんなになっちゃってるから……それで、戦う力があるとはいえ、あんな化け物と戦える皆さんは凄いなって」

 

「橋渡さん……」

 

 少し自分を(おとし)めるような言い方をする二喜を、上里がどこか悲しそうな様子で見る。

 

「タマは、あんまり怖いとは感じてないな、それより倒さなきゃって思いが強いかな」

 

「私も球子と同じようなものだ。恐怖を全く感じていないと言えば嘘になるが、奴らに対しては闘志が勝る」

 

 土居と乃木はあまり怖くないと言った。

 あれが怖くないだなんて、信じられない。

 

「うーん、私は怖いは怖いけど、みんなを守らなきゃって思うと、怖さは気にならなくなるかな」

 

 高嶋は先に発言した二人ほどではないが、こちらも戦うことを重荷には感じていないようだ。

 やはり、勇者というのは芯から二喜たちとは違うのだろうか。

 

「……私は、実際に対峙したら恐怖を感じたわ。身体も震えた。でも、私はアイツらに勝てる、だから戦えるわ」

 

 少し控えめに、そう発言したのは郡だ。

 恐怖を感じると、そう言った。

 

「……私は、正直言ってまだ怖いです、一度勝った今でも」

 

 続けて伊予島も同調した。彼女に至っては、今でも怖いという。

 

 意外だった。勇者というのは恐怖なんて気にもならないような、人智を超えた強さの持ち主が選ばれるのだとばかり思っていた。

 だが、違った。元々強い者もいるが、そうでない者もいるのだ。

 

「一口に勇者様といっても、皆さんそれぞれ違うんですね……」

 

 勇者の中にも恐怖で怯えたり、震える者もいるのだ。

 

「でも、やっぱり勇者様たちはすごいです」

 

 恐怖を感じても、戦っている。

 頑張って、強くあろうとしている。

 

「なのに、僕は……」

 

 自分は、恐怖に押しつぶされてばかりで何もできていない。

 ステージ4から回復したのだって、自分が何かをしたわけでもないのだ。

 

 たまたま勇者たちがテレビで報道されなければ、自分はいずれ力尽きていただろう。

 せっかくあの日、両親が必死に繋いでくれたこの命を、無為に──、

 

「──あ、ッッ!」

 

 瞬間、頭の中に当時の絶望が、バーテックスの姿が蘇り、二喜は頭を押さえた。

 フラッシュバックだ。

 

「ッ! いけない──」

 

 大社職員が二喜の様子に気付き、駆け寄る。

 

(こんな時に……!)

 

 身体が震えて縮こまる。恐怖のあまり叫びだしそうな衝動に襲われる。

 

(まずい……)

 

 頭をめぐる映像を必死に追い出そうとするが、そんな簡単にはいかないから病気なのだ。

 

 二喜は焦った。

 しかし、その時──、

 

「おい、大丈夫か?」

 

「橋渡さん?」

 

 驚く勇者たちの声が聞こえた。

 声のほうを向けば、勇者たちが心配そうに見つめている。

 

(……違うだろ、僕は、彼女たちにそんな顔をさせるために会いに来たんじゃないだろ!)

 

 何か、無性に嫌だった。彼女たちにその顔をさせるのは、情けないと思った。

 

 二喜は思いっきり空気を吸った。そして、ゆっくりとその空気を吐く。

 

 心臓の鼓動は今もうるさい。

 だけど二喜は顔を上げた。

 

「すいません、大丈夫です……」

 

「へ、平気なのか? 今のは天恐の……」

 

「確かに、天恐の発作みたいなものです、乃木様。でも、いつもよりは早く落ち着きました。勇者様たちがいるのがよかったのかも」

 

 必死に勇者たちを安心させようとする。

 頭も口も、思ったより良く回った。

 

 その様子を見て、大社職員が口を開く。

 

「落ち着いたというのは本当のようですが……一度休みましょうか」

 

 なんにせよフラッシュバックが起こってしまった以上二喜を安静にさせる必要があると判断したのだろう。

 

「皆様方、本日は御足労頂きましてありがとうございました。お互いの顔合わせという今日の目的も達成しましたので、本日はここまでとさせていただきます」

 

 職員のその言葉を聞いて、皆一息ついた。

 

「それでは迎えの者を待機させていますので、お気を付けておかえりください」

 

 職員はそう言って病室の扉を開ける。

 

「もう終わりか……橋渡さん、お大事にな」

 

「お大事に」

 

「はい、乃木様も上里様もお気をつけて」

 

「じゃあ、また来るね~」

 

「それまで待っていタマえ」

 

「それでは失礼します」

 

「……」

 

「ええ、高嶋様、土居様、伊予島様、郡様もまたの機会に」

 

 勇者も巫女も全員が病室を出て行き、扉が閉まった。

 

 瞬間、二喜は頭に手を当て、息を切らす。

 

「はぁ、はぁ、はぁぁ……」

 

 何故だかどっと疲れが溢れ出した。

 身体の震えを無理やり押さえつけるような無茶をしたからだろうか。

 

 だが、そんな無茶ができたのも、勇者たちのおかげだ。

 彼女たちの心配そうな顔を見ていたら、頭が「彼女たちに心配させたくない」という思いで一色になって、バーテックスのフラッシュバックが治まった。

 

 病室の扉が開く音がして、大社職員が病室に戻って来た。

 

「フラッシュバックで反射的に叫びそうになったでしょうに、よく押さえつけましたね」

 

「……自分でも少し驚いてます」

 

「少なくともあなたの症状が、勇者様たちの影響によって改善していってるのは確かなようですね」

 

「そう、ですね……」

 

 少しだけ元気のない声色で二喜は返事する。

 

「何か気になることでも?」

 

「天恐の発作、急だったから、僕、勇者様たちを驚かせちゃいましたよね……その、気味悪がられたりしたかもなって」

 

「ふむ、勇者様たちは天恐患者を何度も見たことがあるはずですから、あれくらいで気味悪がったりはしないはずですよ」

 

「でも……ああ、次会ったとき謝らないとな、なんて言おう……」

 

「まあ、次に会うときに話す内容は確かに早く決めておいたほうがいいかもしれませんね……さっき外まで勇者様たちを送っていきましたが、あの様子だと次の機会は思ったより早いかもしれませんし……」

 

 何か意味深なことを言う大社職員。

 

「え、今後の予定って、勇者様たちの都合に合わせて大社側で決めてるんじゃないんですか?」

 

「それはそうですが……まあ、どちらにせよあなたの調子次第ですね、フラッシュバックで心身ともに負担だったっでしょうから、もう今日は休んでください。夕方になったら念のため検査をします」

 

 結局、大社職員が何を言っているのかはわからなかったが、疲れているのは事実なので、二喜は休むことにした。

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

 翌日

 

 この日、二喜は昨日大社職員が言っていたことの意味を理解することになる。

 

「橋渡さん、昨日はあれから検査も異常なしで、天恐特有の症状もでなかったようですが……今日の調子はどのような感じでしょうか」

 

「今日ですか? どうだろう……特に負担は感じていませんが」

 

 朝食をとり、朝の検査も終わったところで、大社職員が急に調子を聞いてきた。

 朝の検査をしたのだから、そのときにわかるだろうにと思ったのだが、少し慌てている様子だ。

 

「そうですか……その、次の勇者様との面会なのですが、予定が変わりましたのでその連絡です」

 

「……次回は、確か来週でしたよね。いつになったんですか……?」

 

 勇者の都合が悪く延期になったのだろうか。

 あるいは、やはり昨日の件で勇者たちに気味悪がられ、もう行きたくないと言われてしまったのかもしれない。

 そう考えると、自分でも驚くほど胸が痛んだ。

 

「その……今日です」

 

「え」

 

「というより、もう皆様お見えになっています」

 

「は、え、どういう……」

 

「橋渡さんの調子も問題ないようですので、お呼びしますね。ベッドで座ったまま待っていてください」

 

「え、え?」

 

 それだけ告げて、大社職員は扉の向こうへ行ってしまった。

 

 あっけにとられた二喜は、少しの間そのまま扉を見つめていた。

 やがて、扉越しに大社職員の、案内をするような声が聞こえてきた。

 

「ちょ、嘘……」

 

 慌てる二喜だったが、コンコンとノックする音に、つい返事をしてしまう。

 

「あ、どうぞ!」

 

「おはよー! 橋渡さん、お邪魔します」

 

 返事をした瞬間扉が開かれた。

 昨日とは違って、先頭にいるのは高嶋だ。

 彼女に続いて、「お邪魔します」と挨拶しながら、また勇者全員と上里が入って来た。

 

「その、ようこそ……えっと、今日は何かご用件がおありで……あっそうだ、昨日はお見苦しいところを見せてしまって申し訳ございませんでした」

 

「昨日……あっ、あれは謝らなくていいよ橋渡さん。悪いことなんて何にもしてないんだから」

 

 何を話せばいいのか分からず、いきなり謝る二喜。

 そしてそれをなだめる高嶋。

 

「橋渡さんかなりテンパってますよ、やっぱりいきなり来るのは悪かったんじゃ……」

 

「いや、私もそう思ったんだが……」

 

 高嶋友奈の後ろでは乃木と伊予島がこちらに申し訳なさそうな顔を向けている。

 

「今日はね、橋渡さんに提案があって来たんだ」

 

「提案、ですか?」

 

 ひとまず、高嶋から何か用件があるらしいので、二喜はそれを聞くことにした。

 

「昨日あの後、みんなで橋渡さんのこと話してたんだけど、これから私たち交流を続けていくわけでしょ?  なら、いっぱい話すことになると思うんだけど、近しい人とじゃないと会話が難しい、っていう人もいるんだ」

 

「ええ、わかります。僕もそういうの緊張しちゃいますから……」

 

 つまり、交流を続けるのはやっぱなし、ということを言いたいのだろうか。

 残念だが、向こうの都合があるなら、仕方がない。

 

「橋渡さんもそうなの? ならちょうどよかった! それでね、私思ったの、じゃあ近しい人になればいいって。友達となら会話もしやすいし」

 

「……え」

 

 話の方向が予想と違った。

 なにか、彼女はとんでもないことを言っている気がする。

 

「だからね、橋渡さん、私たちと友達になろうよ!」

 

「な……!?」

 

 二喜と勇者たちとの関係性は、二喜が香川へ来ることになった当初に想像していたものよりも、遥かに段違いのスピードで進んでいくのだった。

 

 




読んでいただきありがとうございました。

感想や評価もお待ちしております。

次回「接近する関係」

お楽しみに。
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