戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1574/002.hmos

枝の主日。ジョアン・デ・トルレスを捕まえた。

 

君がここにいるってことは、カブラルも来ているよね。

いつから監視してた?

手荒くはしない。報告されるから。

鄭重に教会へお迎えし、茶を薦める。

 

4日前、サカイへ着いたという。

カブラル。ジョアン。もう1人、前回と違う従僕。

 

ニエッキとロレンソは、今年もサンガ城へ行っている。

その情報をサカイで確かめたカブラルは、抜き打ち監査をすべく向かった。

ジョアンには、ミヤコ教会への偵察を指令した。

油断も隙もあったものじゃないぜ。

 

「私を見つけたことを、パードレ・カブラルへ言わないでいただけたら、この次何かお困り事のあったときに、お助けしましょう」

 

いい取引だ。

ではカブラルに、フロイスは真面目にやってましたと、伝えてくれ。

優しく、逃がしてやる。ものわかりがよくて助かる。

 

 

復活祭の翌日、全員揃ってミヤコへ現れた。

ニエッキは、捕縛された盗賊のような表情。

ロレンソは、我関セズ。

カブラルは、私に笑顔を見せた。

ジョアンくんともう1人は、影のように存在感を消していた。

 

ちょうどカヅサ殿が入京していた。カブラルは、会いたがった。

謁見を希望し、すぐ叶えられる。

カミキョウでも一等地の、新しいテラを訪問した。

 

私が昨年より何度かカヅサ軍のお手伝いをしている件は、布教長には内緒にしておいてほしい。

と事前に家臣団の方々へ根回しをしておいたのだが。

カブラルの口から、コンパニヤから正式にカヅサ殿へ軍事援助したいとの申し出が発せられ。

私も、カヅサ殿も、家臣の皆様も、絶句する。

 

昨今、戦争の大局を決するのは、鉄炮である。

この認識は、津々浦々まで定着しつつある。

刀鍛冶の多くが鉄炮の鋳造に転職しており、引く手あまただ。

この、鉄炮を構成する要素の中で、日本ではきわめて手に入りにくい原料がひとつだけ存在する。

サリートリ。

 

これをチイナから輸入してくるのが、主としてポルトガルの定航船団なのである。

日本布教長カブラルは、サリートリの取引を完全統制下に敷いた。

カブラルが許可した相手にしか、サリートリは卸せないのである。

カヅサ殿がコンパニヤに今後とも手厚い庇護を約束してくれるならば、年間これだけのサリートリをサカイまで届けさせましょう、と商談は具体的に進められた。

日本とポルトガルの軍事協定と言ってもよいこの歴史的瞬間に、私は通訳者として立ち会う光栄に浴したわけである。

 

「デウスが、コンパニヤが、エウロパが、カヅサ殿の勝利を願っているのです」

 

カブラルの言葉は、大きな衝撃だった。

昨年来の、各地での紛争が、一気に片付く可能性を感じて、部将たちの目の色は変わった。

 

いくつか、補足を加えておこう。

サリートリを日本に持ち込むのは、ポルトガル人ばかりではない。

昨今急増中という、チイナやマラカあたりからの不定期ジャンク船も、この商材に利益が出やすいことを熟知している。

これら低廉なサリートリが持ち込まれる先として確認のとれているのが、シモのサツマ国に、フィラド。

それらを経由して、イズミ国のサイカ。

 

サイカ。

坊主の町で、鉄炮の名産地として名高く、傭兵業でも有名だ。

4年前、カブラルはサイカより上流にある、同じく坊主の町ネゴロスを視察した。

このときサイカも候補に挙げていたが、警戒が厳しく、近づけなかったのだそうだ。

すでにあの頃から、カブラルはここまで考えていたのか。

さすが四誓願立誓修道士。資格は、伊達ではない。

そう思い知らされる一幕だった。

 

捕捉すべきことは、まだある。

カイやシナノは、ともに内陸国で、港を持たない。当然、領内に漁民もいない。

海を持たず海を知らないことは、実は陸戦においても、重大な差をもたらすのだ。

 

サリートリは、塊で取引され、海上を運ばれる。

平時でさえ、海運に明るくないことは需要分確保や価格交渉において不利を蒙るものだが、戦時にあれば尚のこと。

海上封鎖に対して、為す術もなくなる。

すなわちサリートリが戦略物資として貴重になればなるほど、自前の海運力を持つ国と持たない国の戦力差は開くのである。

今後、シナノの脅威は減るであろう。むしろサイカやネゴロス、そしてオーザカなど港を持つ地域の危険をより重視する必要が増していくであろう。

 

謁見は大成功で終了し、カブラルの表情はまた鉄面皮に戻った。

次の手を企んでいることは明白で、その内側からは、漲る自信と満足が、否応にも伝わってくる。

教会へ戻るなり、私は今後の布教方針について指導された。

 

今年中の新規獲得件数を、キナイで3000人、うちミヤコで1000人、必達とする。

既得者が死亡または棄教した際は同数を追加計上する。

 

日本人の性向として、個々の判断で選択や決定を行うことをしたがらない。

常に集団単位で意思を調整し、責任の所在も曖昧にしたがるのが日本人の悪癖だ。

ゆえに一人の指導者を精錬させるのではなく、数を増やし同調圧力を加速させる形で洗礼を進めるべし。

罰はあまり効果が無い。肉体的な苦痛はむしろ悦ばせる。

自身が少数派になることを不安視するので、常に中庸でいさせよ。

10世帯から20世帯を一単位にして、コンフラリアを結成させ、その中で相互扶助させるのがよい。これはシモ各地で実践し、効果が確認されている。

受洗資格をあまり厳しくするな。教育もほどほどに。

日本人の器用さは大したものだが、所詮知恵は手先にしか巡らぬ。

余計なことを覚えさせるな。とにかく数を集めろ。

今年の目標はそれだけでいい。来年はまた指示する。

 

はい。わかりました。

 

 

ジョアン・デ・トルレスの推薦で、コスモくんが、イルマンになった。

カブラルは、彼の素性と生活態度をジョアンから報告させ、私に確認を求めた。

ポルトガル語の勉強に熱心なこと。そして、フォッケ宗への憎悪に強い意志を持っていることが、決定打だったみたいである。

誓願式が行われた。

4年ぶりに聴く、見事なバリトンであった。

 

イルマン・コスモ誕生により、ミヤコの予算割り当てが、少し増えた。

 

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