戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1575/002.hmos

いよいよ、オーザカですか。

 

「おうよ。とどめをさす」

 

何週間で片付けますかね。

 

「伊勢の願証寺より時間がかかるかもしれん。完全包囲は難しいからな」

 

え?陸戦ですよ。

川からの流入・流出を堰き止める必要はありますが、海よりは突破されにくいでしょう。

カヅサ軍の実力が遺憾なく発揮できる戦場では?

 

「まったく違う。なんだフロイス。見損なわせるな」

 

私は軍人ではありませんもの。

まして、カヅサ殿に見損なわれない軍師って、どんな化物ですか。

 

タキカワ殿に、説明してもらった。

彼は鉄炮の腕を買われてカヅサ殿の家臣となった人物で、イセイ湾でも大隊指揮官として有能ぶりを見せつけた。

そんな軍師によるとオーザカ攻めは、昨年のイセイ湾殲滅戦より、更に輪を掛けて難しい。

説明を受けると、なるほど大事業だった。

 

まず、高地に築かれ全景を見下ろせる城に、ルシヘルが立て籠もっている。

カンガ国の領主も兼ねているアイツだ。

その城を大きなテラ町が囲む。住民はすべてイコ宗徒である。

イセイ湾の同朋を殺された怨みで我々への憎悪がより深くなっている。

同じ手で攻められることを覚悟し、対策もしているだろう。

 

海戦では、鉄炮が使えなかった。

波をかぶれば一瞬で役立たずになるし、揺れる船上で狙いを定めるのも難題だ。

まだ弓の方が使いものになる。しかし漁民に弓の達人などおらぬ。

我々は、敵が舟に乗って出てきたら逃げて、追いかけさせた。

その連中が陸地へ上がる直前に、鉄炮で狙う。

これが基本戦術だった。

 

オーザカでは、地面は揺れない。

そして敵もこちらを鉄炮で撃ってくる。しかも、たんまり備蓄してある。

 

「まったく違うだろう?」

 

そうですね。

加えて。

ツノ国・カワチ国・イズミ国では、カヅサ殿に忠誠を誓い、兵を拠出する意思を表明している領主が圧倒的な数にのぼる。

というよりカワチ国タカヤという城がオーザカとの同盟を宣言しているくらいで、他はすべてカヅサ殿に逆らうなど、とてもじゃないけどできない現実。

したがって、号令さえかければ直ちに数万の兵が集まる。

これでオーザカを囲むことは容易い。数字の上では。

素人なら即、実行するだろう。

そしてすぐ敗れる。

 

「強い者に靡きたいだけの寄せ集めが、一番おそろしい敵だわい」

 

イセイ湾でも、協力を宣誓したヲアリ・シマ漁民の中からイコ宗徒の逃亡に手を貸す裏切者が結構出た。

やむを得ぬという見方もある。

普段は仲悪くても、困ったときは扶け合ってきた同業者同士。

漁師が漁師を殲滅する。耐えられないのが人情でしょう。

 

これを監視するのが、カヅサ軍の重要課題だった。

オーザカでも同じように、手引きする部隊が現れるだろう。

イセイ湾では、逃亡した漁民が戻ってくることはまず無かったが。

オーザカでは、抜け穴から大勢が一度に這い出してくるだろう。武器を携えて。

そして包囲している部隊を背後から襲う。

そうなることがわかっているから、生え抜きのカヅサ兵以外の手は極力使いたくないのだけれども。それではさすがに長期の作戦は不可能だ。

状況も外から見えやすい。タカヤ城や、それから東のカイ軍が挑発をおっ始めて、それに呼応する領主が出てくると、攻守は簡単に逆転する。

 

……おみそれいたしました。一体どうすればいいのでしょう。

 

 

ここで、種明かし。

今回のキナイ入りは、即オーザカ攻めが目的ではない。

オーザカまでは様子を見に行くけれども。ついでに少々いたぶってやるくらいはするけれども。

その後すぐ、カヅサ殿はミヤコへ戻ってくる。

真の目的を達成するためにだ。

 

「さすがに、フロイス殿にこれは想像つかんでしょうな」

 

ええまったく。

でも手懸かりはいただけましたよ。

 

どうやら今回カヅサ殿は、ダイリサマとお近づきになるつもりらしい。

その存在すら忘れかけていた、いまや日本唯一の、正統なる王様。

これまではクボウサマに守られてましたが。

いや、守ってなかったな。

 

ダイリは何年も前からカヅサ殿に、ミヤコへ引っ越してきてくれるよう、熱烈なる要請をしていた。

カヅサ殿は面倒だから断り続けてきたが、オーザカを攻めるにあたってはダイリの使い方が鍵になると気付いた。

なるほど。ルシヘルをカンガ国領主に任命したのはダイリですからね。

ダイリに、ルシヘルの権限を剥奪させる。

できれば、逆徒だ!とまで宣告させる。

 

だいたいアミダの教えを広めるとか言いながら、兵を育て軍を組織し、国まで持ち、並の武将よりカネと権力に酔い痴れている連中でしょう。おかしいんだよ。

それをダイリサマの口からはっきり説明させて、武装解除。

抵抗すれば、カヅサ軍がお仕置きを引き受ける。

すばらしい。その発想はなかった。

なんで思いつくかな。こんな政略。

 

斯様な次第で、私はてっきりまたお仕事始まるものだと身構えて参上したのですが、しばらく待機です。

 

「あちこちで領主を信徒にしているようだな」

 

これも、とっくに承知されてましたよカヅサ殿。

まったくもって、かないませんわ。

 

「中には、油断ならん奴もいる。何を狙っての入信かは知らんが、せいぜい気をつけるがよい。

おぬしは、人が好すぎるからな。騙されぬようにしろ」

 

は。誰のことを言っているのかはわかりませんが、くれぐれも気をつけます。

ああ。心から思いました。

あと数年したら、ほんとにカヅサ殿は、日本から反社会勢力を一掃してしまうでしょう。

その後、カヅサ殿はどこに住むのか。

ギフか、ミヤコか。

カヅサ殿の住むところが日本の首都になることは明らかです。

 

私はどこまでも、カヅサ殿についていきたい。

 

ということはすなわち、日本の首都に居続けたいということです。

それを確実なものとするためには、日本布教長になればよい。ということになりますよね。

大それた野心でしょうか。大それた野心ですよね。

でも、そうありたい。

私の、ささやかな目標です。

 

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