戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1575/006.hmos

ミヤコの空気が、大きく変わりつつある。

 

おさらいをしよう。

日本には、2000年の歴史を誇る王族がいる。

ダイリという。

カミキョウに王宮を持ち、世間は穢れに満ちているからと引きこもったまま暮らしている。

 

ダイリの身の回りをお世話する、あるいは政務というほどでもないおつかいを担当する、クゲという官吏たちが、これを囲む。

かれらも、世間を穢れたものと見做している。

カミキョウの一等地に固まって暮らしているが、ダイリ本人よりは穢れに慣れているらしい。

テンジク人追放令を出してほしいと貢ぎ物を持って訪れる者が来れば会う。

そして、ダイリの名で勅令を発給する。

 

軍人というものは穢れの極致だと思うのだがな。

しかし吹けば飛ぶよな穢れなき王様たちは、反逆者や天変地異から守ってくれる存在を必要とする。

引きこもりだから、究極的に無力なのだ。

クボウという一族が、ミヤコを守る軍事組織として、ダイリと契約を交わした。

このクボウもまた、世襲を始めて王族のようなものを形成するようになる。

 

私は来日した頃、日本には2つの王権が存在すると言われ、混乱した。それが今では懐かしい。

実態は、こんなものだった。

そしてダイリもクボウも、威張るか遊んでばかりいるうち、貧乏になった。

 

クボウに至っては維持費のかかる軍隊を自前で整備することすら放棄した。

治安活動を求められれば、周辺諸将へ呼びかけをする。そんな、ただの事務屋になり果てた。

手に職をつけた派遣兵団の方が、実力でも発言力でも上をいくようになる。

事務屋は存在感すら無くしてゆく。だが自尊心と正義感はいつまでも手放せない。

まずクボウが、とち狂った末に消滅した。

とりあえず、めでたい。

 

ダイリはクボウの終焉を見て、明日は我が身と血相を変える。

先にクゲが動く。何でもしますからと、実力者にすがりつく。

慈悲深い実力者は、クゲに居場所を与えてやる。

この王国に泰平をもたらすには、自称2000年続く王がいてくれた方が、都合がよい。お飾りでいいからそこにいてくださいな。

 

この取引は、ひとまず、万人にとって良いことだった。

実力者は紛れもない実力でここまでのし上がってきたのだが、自分たちだって同じことができるとでかい声を張り上げる無実績者も大勢いるのである。

いちいち相手をしてやっててはたまらない。そこで、ダイリという仕切り役を残しておく。

 

戦いたいなら、まずダイリに申し込め。

勝手に襲いかかれば犯罪者だ。朝敵だ。

実力を示し、それをダイリが承認する形ならば誰も文句をつけられまい。

こうして、秩序が維持された。

 

ダイリはカヅサ殿に官位を与え、王国の平定を依頼した。かつてクボウが任命されていた役どころだ。

要はカヅサ殿に、新クボウになってくれという、お願いである。

200年前の手順をそっくりなぞれば、儀式はつつがなく完了する。ダイリもクゲもそれを望んで準備を始め、勝手に盛り上がっていたが、カヅサ殿はこれをきっぱり拒絶した。

 

ミヤコになど住むつもりはない。

お前らとなんか毎日会っていられるか。

予はギフへ帰る。鷹狩ができる奴だけついてこい。

長官のムライを置いていくから、用があれば彼に伝えよ。

それよりオーザカからカンガ国の統治権をとっとと剥奪しやがらないか。

 

クゲたちは、最後の件に関しては、動いているのかいないのだか、はぐらかしてばかりで要領を得ない。

自分たちの先輩が任命した役職を取り上げるには、それなりの根拠を示さなくてはならないが、イコ宗はカヅサ殿に敵対しているだけであって、ダイリに刃向かうことは決してしないと主張し続けているようだ。

こざかしい。

 

カヅサ殿の分析では、前のクボウも、1代目は強く賢い実力者だったはずだという。

しかしミヤコに住み、クゲたちと遊ぶようになると、誰の家系だろうと腐りきった阿呆しか生み出せなくなるものだ。

予は、そんな一族の始祖になんか、なるものか。

そのための新しい考え方が日本には必要なのであって、クボウになれなどとは、伝統を守るくせに歴史からは学ばない真性の愚か者であると宣言していることに他ならない。

少しは世間に揉まれて穢れの味を覚えてこい。うまいぞ。

そんなことも教えてやりたかったが、無理だと諦めた。

だから、ギフへ帰るのだと。

これが結論である。

 

 

ただ、カヅサ殿自身はそういう信条を持ちましたが、家臣や同盟者に対して強制はしません。

ダイリサマがあげるあげると差し出す官位を、もったいないと考えている家臣は何人かいますので。

このたび、希望者には全員、官位が授けられました。

 

日本では、出世をすると名前がガラリと変わるのが常ですので、煩わしい。多すぎるので、一人だけ紹介しましょう。

家臣団の筆頭格で、オーミ国サカモト城という要衝をまかされている、アケチ・ジュウベエ・ミツヒデ殿が、コレトウ・ジュゴイノゲ・フィウンガノカミ・ミツヒデ殿と改名し、身分上はクゲになりました。

可笑しいですね。

コレトウ殿はミヤコにも家を持ち、王宮にいつでも出入りし、クゲたちとも交際し、今後ますます、かれらの泣き所をきちんと押さえておく、そんな立場でがっちりダイリを監視します。

オーザカを片付け次第、すぐに大掃除を始められるよう、今から準備を始めます。

 

すばらしい。すばらしすぎて、私まで禿げそうです。

 

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