戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1575/007.hmos

秋。

カヅサ殿は、この季節に戦争をしかけることが多い。

 

理由はいくつかあるけれど。

日本では、コメの収穫期。

重労働なので男手は田畑へ狩り出される。

当然、兵の数は減り、防衛に隙ができる。

そこへ攻めこみ、収穫前の田畑を焼いたり、収穫したばかりの状態で奪ったりもする。

 

相手への心理的な効果も、はかりしれない。

加えて今回攻めに行くエチゼンは、雪深い土地だ。

冬が近づくにつれ、敵は焦り始めるだろう。

もちろん我々だって、雪が降り始めたら退却する。冬になったら戦わない。

だが、それまではオーミやミノからの補給を頼りに、戦い続ける。

 

敵に、備蓄できるほどの収穫は与えない。

人口も我々が減らしてはおくが、戦争が中断したあと雪に囲まれ春まで耐えているうちに、もっと減るだろう。

そして雪が溶ければまた、我々はやって来るのだ。

 

このインヘルノを回避する方法は、ひとつだけ。実に簡単なこと。

降伏すればよい。

心から。すべての武器を放棄し、悪魔と縁を切れ。

私たちの声に耳を傾け、正しい道を歩むなら、冬をしのぐだけの食糧は届けさせよう。

早いに越したことはない。

さあ、決めるのは君たちだ。

 

我兵の数は、3万という。

意外と少ない気もするが、なにせ、どこもかしこも収穫期なのだ。よく3万も集めたものだと考えねば。

これ以上を兵力に転嫁すれば戦場に送るコメが確保できなくなるし、敵が屈服したあとで約束した支援物資を届けることにも支障が出よう。

だから兵力は3万だ。

よし、エチゼンへ出発ぞ。

 

私が呼ばれ、従軍している時点で、お察しいただけようか。

今回の敵は、民衆である。

 

正確にいえば、民衆と区別がつかないまでに潜りこんだ、悪魔ども。

春にミカワで、カヅサ軍はカイ軍と戦った。

相手は全員正規兵であり、戦の理をわきまえていた。

現実にはそういう戦争の方がやりやすい。

実力で勝敗は決するものだ。何より、終わりがわかりやすい。

これは、とても重要なこと。

 

類型としては、イセイ湾の海戦がある。

あのときは試行錯誤しながら、敵の殲滅を断行した。

終盤になると、助けてやりたい気も湧いてくるのだが、どれだけ骨と皮だけの状態になってもその程度で悪魔は人の心から出て行かないことが確かめられた。

幾度も幾度も私たちは騙され、裏切られ、正しき者の生命を危険にさらした。悪いときは、奪われた。

 

エチゼンは、イセイ湾より何十倍も広い。

隣のカンガと合わせると、オーミとミヤコを合わせたくらいに匹敵する。

現実問題として殲滅は不可能だ。

では、どこで終わりを見極めるべきか。

 

国対国の戦争でも、政治中枢が存在すればそこで話がつくのだが、悪魔相手ではこれが成立しない。

村や町が1単位ずつ降伏したとして、イセイ湾でしたように同士討ちさせるよう仕向けていくべきか。

それは殲滅線前提でこその術策だし、冬季は監視がゆきとどかないことを考えると、却って相手の団結を高める危険もあろう。

 

斯様に、我々はまたしても、まったく新たな課題に直面しているわけである。

 

とはいえ、我々は万世普遍の戦争論を研究しようとしているのではない。

目の前に転がっている問題を解決するのが目的であって、そのためにできることは、その場にしかないのである。

前例が無いことはわかった。

よろしい。では、使える材料の検討に取りかかろう。

 

政治中枢をいうなら、カンガの国主は今もオーザカのホンガンジである。

ホンガンジは過去幾度もカヅサ殿をアミダの敵だと罵って、そのたびにお仕置きをされてきた。

法的根拠はないが、エチゼンはカンガ国から流入したイコ宗によって占領された状態にある。

さてカヅサ軍のエチゼン侵攻に対し、オーザカはどう動くか。

これを考えてみよう。

 

オーザカからエチゼンに領主が派遣されているというが、まったく相手にされておらず、今ではカンガ国の領主も、オーザカの意向には従わない風である。

これが、カヅサ殿のつきとめている状況。

すなわち悪魔どもは、まともに連携なぞとれちゃいない。

かといってオーザカがエチゼンの同胞たちを見捨てることも、許されまい。

エチゼンからは救援が要請され、オーザカはこれに応えなくてはならない。

まだまだ全国土にイコ宗徒は潜んでいる。かれらの手前、オーザカとエチゼン・カンガは、困ったときには扶け合う美しい同盟関係を謳っていなければおかしいのだ。実態はどうあれ。

 

春に、10万の兵を率いてカヅサ殿がオーザカを攻める計画もあった。

しかし、まだその10万兵はアテにならないヒヨッコだったし、堅固な城に立て籠もったホンガンジとの決戦には大きな犠牲も伴うことが明らかだったため、見送られた。

今回はエチゼンの絶叫を聞かせ続けることで、ホンガンジが降伏を願い出るかもしれない。

 

可能性としてはじゅうぶんにありえることだ。

この場合は、戦わずしてホンガンジを開城させられるかもしれない。

逆に犠牲を払ってオーザカを先に屈伏させたとしても、エチゼン・カンガは抵抗を続けるだろう。

ホンガンジがオーザカを脱出してエチゼンへ逃げ込んだりしたら、もっとややこしいことになる。

この点からも、先に攻めるべきはエチゼンなのだ。

斯くして、我々は向かっている。

北へと。

 

エチゼンか。ふと、トマスのことを思い出す。

食べ物、とくに海魚がたまらなく美味しいと、いつも言っていたな。

いただく機会はあるだろうか。ゴクリ。

 

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