カヅサ軍はエチゼンへ到着後、ただちに容赦ない殺戮を開始した。
イセイ湾作戦より、はるかに容赦なかった。
イコ宗徒であるか否かを、問うてはならぬ。
子供だから、老人だからと、情に流されてもならぬ。
指定された村の者は、すべて殺せ。家は焼け。
武器が隠されてあれば、可能な限り接収せよ。
持ち去れなければ、破壊せよ。
初日と2日目は雨のため鉄炮隊の出る幕はなかったが、3日目以降は効率も上がっていった。
たしかにこんな仕事、容赦していたらとてもできない。
話なんか聞いてやったら情が湧く。
相手の顔も極力見ないで片付けましょう。
悲鳴は、そのうち気にならなくなります。
ありがたいのは、念仏を唱えてくれる悪魔。
念仏は、いいね。
ひと思いに無力化できる。わかりやすい。
意味の無い言葉だから、情も湧かない。
最高。
エチゼンでは、私はとくに目立つので、移動中も全身隠すようにしていた。
敵にも、弓や鉄炮の使い手がいる。
私は馬を速く走らせることができないし、輿なんて、大人物が乗っていると言っているようなものだから。
兵士たちの悩みを聴くときも、衝立を二重にして、直接姿を見ることなく見せることなく、語ってきかせた。
まるでダイリサマみたいだとも言われましたが、そうなんですか。あんなのと一緒にされてもなあ。
まあ、ありがたがってもらえるなら構わんです。
悩みを振り切ったら、お仕事に励んでください。
エチゼンは広いよ。
砦や城も、あちこちにつくられている。
そのそれぞれに、悪魔が巣くっている。
領民は我々の噂を伝え聞くと、一目散に手近の拠点へと身を寄せる。
途中いくつもの罠が仕掛けられ、矢が飛んでくる。その中を、我々は家々を焼き払いながら一歩一歩進んでゆく。
攻城戦を実際に見たのは初めてだ。
たいてい高い地形につくられていて、近づくと石を投げつけられる。
相手が素人でよかった。カヅサ兵が立て籠もる城になら、近づくことさえ容易ではなかろう。
我軍の弓兵は、火矢を使う。火薬入りだ。
これを、城壁より内側の、広場があると思われる辺りに落とす。
避難民がぎっしりとひしめいているので、一発でも大量に始末できる。
相手側から城門を開くことがある。
だが、一人も出すべからず。
門を開かせきることなく、その場を死体の山と為せ。
どれほどの武器食糧が備蓄されているかは興味尽きぬところだが、中には隠れる場所も沢山あるから、すぐに建物全体を焼く。
火薬が貯蔵されていれば、爆発が起きる。
破壊のみに邁進だ。エチゼン国には、将来にわたって城も砦も不要なのであるから。
我々は、握り飯を頬張りながら先へ進む。
領都では、激しい戦闘となった。
町じゅうのあらゆる家や物陰から、いくらでも悪魔が飛び出てくる。
まずは何もかも焼き払う。
邪魔にならないよう、死体も一箇所に積み上げる。
付近の山へ逃げた悪魔も大勢いて、夜も油断ならない。
翌朝から山狩りが始められた。
この頃から、おかしなことが流行りだす。
討伐隊はいくつもの班に分けられ出動するが、山で殺した悪魔の死体をわざわざ持ち帰ってきたりはしない。
我々は何人殺した、と主張しても証明が難しいため、誰も彼もが数字を水増ししてる疑いをかけられる。
これは褒賞にも関わるところだし、疑われただけで怒って喧嘩を始める御仁も少なくないのだ。
そこで、死体の鼻を削いで袋に入れて持ってこいということになった。
町なかの死体からも鼻が削がれ始めたので、やはりズルをしている者は少なくないようだが、そんなわけで山には鼻の無い死体がゴロゴロ、転がっているという話である。
私は見に行ったりしないが、おかしな光景なのだろうなと、想像だけをする。
皆さん、大変なのです。
現在エチゼンに住んでいる者は、一人残らず斬り殺す。
これが基本方針ではあるのだが、多少の緩和はされた。
エチゼンが再びカヅサ領となったとき、すべての土地を移植者で満たすことは、簡単ではないからだ。
これだけの虐殺をしたあとだと知ればなおさら、移住者も来にくいだろう。
そこで殲滅対象から除外される者たちも出てくるのだが。
これに選ばれるためには、いくつもの条件がある。
復興事業に貢献できる技術を持っていること。
商人としてオーミやミヤコの人脈につながりを持っていること。
そしてもちろん、イコ宗徒でないこと。
カヅサ殿への絶対服従を未来永劫、子々孫々まで誓うこと。
などである。
アケチ殿あらためコレトウ殿を含む精鋭部隊は、山を越えてカンガ国の一部も制圧した。
前回もカンガ国からのイコ宗浸透が、エチゼンの破滅を招いた。
今度はその対策もされる。
エチゼンは、やっと平和の楽園として再出発するのだ。
もう誰にも奪わせないぞ。
大局を決したところで私はそろそろ帰ってもよいと言われた。
あっけなかったなあ。
雪が降り始めるまで4箇月くらいは覚悟してたんですが。2週間くらいでした。
カヅサ殿はもうしばらく様子を見て、新しいエチゼン国の法規を制定し、国主にはシバタ殿を任命するつもりのようですけれども。
そういったことを細々決めねばならないから、まだしばらくは帰れないとぼやいてました。
しかし、難題がまたひとつ片付いたわけですから。表情には余裕がありましたね。
オーザカは、どう出てくるかな。
カヅサ軍の侵攻があまりにも速すぎたので、まだ噂すら届いてないかもですが。
ここまでされて、まだカヅサ殿に逆らおうとする人間は、いないと思いますが。
連中は悪魔だからね。わかりません。
追い詰められたホンガンジ。
さあ早く尻尾を出せ。角を見せろ。
我々は手慣れてきたぞ。いよいよ、決戦だ。