戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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カヅサ殿は3週間後またミヤコを訪れた。

なんと今回は面会の予約がとれなかった。

 

この度、いよいよ官位を受領し、クゲの一員となる。

その式典やら親睦会やら。何やかやと日程が押さえられ、今までにない忙しさを抱えていたのだ。

私からは、あとで祝儀だけ届けた。

 

官位名は長たらしいので割愛するが、元クボウの階級よりも上だという。

クボウサマという枠組には取り込まれない。

カヅサ殿はそれよりも上の権威となった。

名実ともに、あの男の存在する意味は、消え失せたのである。

 

時期的には待降節だった。

私は何年もニエッキやロレンソに任せっぱなしにしていた聖職者としての仕事へ復帰している。

 

 

現在キナイで教会を持つ都市は、ミヤコとタカツキのみ。

レジデンシヤ、すなわち出張所を持つのが、サカイとサンガ、ヲアリ。

後者はすべて日本人の信徒によって管理されている。

かつて有望な地であったアマンガサキは、完全に坊主たちに奪われた。

実はサカイも危うい。

デウスの偉大さを知る領主を持たない土地での布教は、まだまだ困難である。

 

タカツキは、最も信徒が安心して暮らせる町といえる。

サンガは規模が小さいことと、城下町を持たず信徒がほぼ城内の官吏と軍人に限られるため発展性が乏しい。良い土地ではあるのだが。

城下町といえば、来年着工する予定のアヅチ城は、面白いものになりそうだ。

カヅサ殿がエウロパ様式を取り入れるのを断念した、新城のことである。

 

日本では、軍事拠点を大小取り混ぜてシロと呼ぶが、この城の多くは、合戦に適した地形を見下ろせる高地につくられる。

兵員を待機させ、武器や食糧を備蓄し、常に周辺域の監視につとめる。

目立たせるか、周囲に溶け込ませるかは戦場の条件次第。

大きな城になると、これを維持するための町民が近くに暮らしていなければならない。生活必需品はそこで買う。

ちなみに日本では、城壁とは単に、拠点である城を囲む障害物のことを言う。

町全体を壁で囲い安全を確保するという発想は無いのである。

実際、攻城戦ではどこでも最初に無防備な城下町が焼かれる。

これでよく町民が君主への忠誠心を抱けるものだと不思議でならないのだが、日本人は火事にも掠奪にも慣れすぎているのだからと納得して先へ進もう。

 

アヅチはオーミ国中部、巨大なビワ湖の東岸にある港町だ。ミヤコからは馬で1日。

ここに城をつくるのだが、軍事拠点としての性格は薄い。

近くにもう少し急峻な山があり、かつてロカク氏がそこに城を構えていた。

だがカヅサ殿は一段低く、湖との往来がしやすく、平地のどこからでも丸見えな、小高い丘の上を選んで築城する。

軍事専門家であればあるほど、この用地選定には首を傾げるだろう。

 

さらに驚くなかれ。

新しい城は五重塔より高くする。

中心部の最上階には天主というシンボルを掲げる。

完成の暁には、一部を町民に観光地として開放し、無料で見物させる。

 

もうお気付きかな。

アヅチは、軍事拠点ではない。

一大商都をつくることが目的で、城はその象徴にすぎない。

すぎないが、人々は毎日この城を見上げ、肌に触れて親しみ、平和というのは良いものだと安心を得て仕事に励む。

そのための重要なシンボルとしての、城なのだ。

 

アヅチを等距離から囲む、サカモト城やナンガハマ城は、確固たる軍事施設である。

かれらの防御力あってこその都市圏構想であるが、この連携を維持できることが、カヅサ領国の強みなのだ。

領内では商人が自由に往来できるため、現在でもエチゼンの魚や果物がミヤコで手に入る。

これがどれだけすばらしいことか。

戦禍で泣き暮らした人ほど、わかってくれるだろう。

 

今年の降誕祭は我々も各地へ分散して、劇に、合唱に、ヂシピリナに、楽しいひとときを盛り上げよう。

食事も、近年ないほど充実した良いものを準備できるだろう。

それが何よりの楽しみだ。

 

信徒数も、来年からはもっと増やしたいものだが、宣教師の増員は望めまいな。

シモからの書翰と報告書を確認してみたが、近年また会士の来日が滞っている。

今年は1人も来なかったようだ。

昨年はイタリヤ人が1人来た。

その前年は、これまた、ゼロだ。

これは深刻な問題かもしれないぞ。

 

カヅサ殿はアヅチにも教会を建てさせてくれる気まんまんでいる。当然、私が行くことになる。

一大商都を私ひとりで切り盛りするのも大変だが、キナイの運営も今の規模より拡充できる余裕は無い。

ロレンソは高齢で長旅ができなくなっているし、ヲアリのコンスタンチノも最近は寝たきりに近いと報せてきた。

日本人に授洗資格をこれ以上与えることはカブラルから禁止されている。コンヒサンもだ。

この人員で、なんとかしようったって到底、無理なのである。

収穫を求めるなら、それに見合う労働力を出資してほしい。

ううむ。なんとか言葉を尽くして、この窮状を訴えよう。

 

「そうそう、パードレ・フロイス。留守中、トマスの家族がやって来ましたよ」

 

イルマン・コスモが教えてくれた。

カブラルと衝突してコンパニヤを脱退した、あのトマスか。

夏頃エチゼンへ行ったきり、消息不明になったという。

コスモはその家族へ、教会へは来ていないと答えた。

私もまったく心当たりはないが、秋にエチゼンで大殺戮をしてきたことを思い出す。

トマスがエチゼンにいたとすれば、問答無用で殺されただろう。

我々は住民を、区別も容赦もしなかったから。

もしあの中にいれば、もはや探し出すことも難しい。

 

トマスよ。なぜ君は、私たちから離れてしまったのだ。

パライゾへ行けないどころか、なんとむごたらしい最期を迎えることになってしまったことだろう。

 

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