戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1576/003.hmos

政権交代は、一時的に外交関係を不安定化させる。

 

いつかは起きることなのに。

名君主と呼ばれた実績のあるおじいちゃんがいつまでも玉座にしがみつき続ける。

自分がいないと何一つ話が進まない体制で固めておく。

ある日突然逝っちゃったりする。

よくある事例だが、その後は散々なことになる。

 

国政の再安定化には何年もかかるだろう。

その間に、外交はますます不安定化する。

進む方向すら定まらず波に弄ばれ続け、たいがい船体のあちこちを傷つける。

そのまま沈んでいった国や家を、私はいくつも知っている。

 

カヅサ殿の政権交代はこの点、慎重すぎるほどに慎重で、完璧なものといってよい。

国内はきわめて安泰。

若き新王がこれから着実に経験を重ねる期間、先王は万全の態勢で見守り支える余裕を持つ。

たとえ諸領国がこの機に乗じ、よからぬことを企んだとしても、大津波でも起こせぬ限りびくともしない。

むしろこれほどの余裕を持つミノ国と戦うつもりなら大津波くらい起こせるようになってからにしたまえ。

そう、周辺諸国に告げてやりたい。

 

春の田植えが一段落した頃。

オーザカが、またも挙兵した。

懲りない連中だが、昨年秋に降伏してからたった半年。

あまりに早すぎる。

君たちの反省とは、その程度か。

 

早馬は、先にアヅチへ到達した。

カヅサ殿は、ただちに鎮圧を命じる。

新都の建設現場で作業をしていた元家臣や兵たちへも、工事を中断して即オーザカへ向かうよう指示した。

 

ギフのノフタタ殿に任せるべきだったか。と、この時点で頭をよぎったものの、それでは遅い。

今回は宿敵ホンガンジが相手だということもあり、自分がカタをつけるから、とギフには連絡だけ入れた。

カヅサ殿自身の出動は、ひとまず見合わせた。

 

 

やがて、オーザカからの戦況が報告される。

ホンガンジは昨秋以来、城の防備を増強させることに一日も休まず取り組んでいた。

日本中から信者を呼びつけ、町の規模も拡大し、鉄炮も何千挺と蓄えた。

そして毎日毎日朝夕の区別なく、唱和する。

カヅサ殿は仏敵であり、血に飢えた鬼である。

イセイを見よ、エチゼンを見よ。

オーザカもいずれ、ああなる。

させては、ならぬ。

オタ・カヅサ・ノブナンガを倒すべし。

 

ついでに「カヅサ殿はダイリサマとクゲ衆から愛されていて、ホンガンジ王よりも高い官位を持ってるよ」という事実も唱和してくれたまえよ。

通商政策にも実績を持つから、町をより発展させたいなら助言を請うといいかもよ。

なんて教えてあげたいところだけど。

反社会勢力は、自分たちのしてきたことは棚に上げて被害者づらするための理由付け、以外の教養をつけたいとも思わないらしい。

そんな心掛けでいるから、イセイやエチゼンの繰り返しになってしまうのだよ。

思い知りなさいよ。

 

 

それはさておき。戦となれば中枢がしっかり全体状況を見据え、遅滞無く指示を出していく。そんな体制がどうしても必要だ。

今回はそこが欠けていたことを、カヅサ殿も失敗と認めている。

兵の損失も大きくなり、カヅサ殿自ら出動することを決めた。

ノフタタ殿が来たらすぐ交代する。とは言っているが、却ってミノの出動を躊躇させる流れを生んでしまっていないか。

どうしても父と子の経験値が隔たりすぎているからなあ。

悩ましすぎる問題だ。

 

私は昇天祭が終わったばかりだったので、ミヤコでお迎えし、ワカイ城までお伴する。

カワチ国の領主たちは、アラキも含めてだが、またカヅサ殿と共に戦えるなんて!と盛り上がる。

ミノへ、こんな空気が伝わってしまうと、ますます息子は出てきづらくなりそうな。

ほんと悩ましい。

 

 

オーザカ城の守りは、鉄壁だ。

今までも難攻不落の要塞だったが、時を経るごとに磨き上げられる。

鉄炮隊の増強が、とくに甚だしい。

サイカがホンガンジと同盟を結び、弾薬や射手を舟で送りこんでくる。

海路か。

これは、盲点だった。

オーザカへの街道は何年も前から関所で監視しているが、海路だと抜け道が多い。

小規模な舟着場もこの半年で更に数多くつくられ、密輸も密入国もやりたい放題だ。

 

「ぬかったな。九鬼の警固衆を、大坂へ回させろ。できるだけ多くだ。可能な限り、武装して寄越させよ」

 

クキのケゴシュウ。

イセイ湾で活躍した、漁師たちの集団である。

また海戦になるのか。

 

どの位、集められるだろう。

イセイからオーザカは、陸路なら5日ほどだが、海路ではかなりの遠回りになる。

大洋に出る必要もあり、小舟では遭難も起きるだろう。

オーザカへ着いても、どこの港を拠点にすべきか。その海域の潮目を熟知していなければ、熟達者でも足手まといになりかねない。

 

オーザカ近郊でカヅサ軍に属する警固衆を召集した方が、よいのでは?

 

しかし、対イコ宗殲滅戦という特殊な経験を積んだ舟人といえば、クキをおいて他にない。

カヅサ殿がそれを頼みとするのはわかるが、私も含め少なからぬ者が賛成しきれないでいた。

しかし代案も思いつけなかった。

 

 

オーザカ攻めでは、直接攻撃をしない、という方針が決定された。

突入には甚大な被害を伴うことが明らかすぎるためだ。

カヅサ殿は、陸路の街道上に新しく10の砦をつくることを命じた。

城壁内には住民がひしめいており、田畑は城壁外にも広がっているが、これら相互の連絡を遮断し、敵を飢餓に追いこむ。

海運も、陸上から阻止できる限り阻止する。上陸などさせるものか。

 

今までより時間のかかる戦いとなるであろう。だがしかし、今度こそ終わらせる。

ホンガンジを降伏させ、城を明け渡させる。

エチゼン以上に、町ぐるみの解体となろう。

総本山たるオーザカの陥落をもって、イコ宗との戦いは二度と起こらないはずである。

終わるのだ。かれらが。

今度こそ。

 

それは並居る一同に希望を与える、福音の如き響きであった。

 

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