戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1576/004.hmos

エチゼン攻めまではカヅサ軍でよかったが、ここからは連合軍と呼ぼう。

 

カヅサ殿は、引退した身。

跡を継いだノフタタ殿が、全指揮権を継承した。

支配地域は何領国にも及ぶが、中枢はミノ国ギフである。

本国の精鋭集団については、今後もミノ軍と呼ぶのがいいかなと思う。

 

ミヤコを中心としたキナイ地方には小領主が多い。その場限りで雇われた雑兵すなわちアシガルも、他地域に比べてずっと多い。

これも、今まではひっくるめてカヅサ軍と呼んでいた。

総指揮官はカヅサ殿だったから、特に違和感もなかった。

 

今回の、ツノ国オーザカにおける対ホンガンジ戦は、色々な点で従来とは異なる。

敵は坊主と、彼らにたぶらかされ心を蝕まれた、民衆の形をした悪魔どもである。

そんじょそこらの領国主でも持っていない堅牢な城を中心に、幾重もの防壁と濠で囲まれた繁華街がまるごと攻略対象。

おびただしい数の銃眼から、鉄炮で我々を狙っている。

 

周辺諸領国から結集した連合軍が殲滅戦を展開中。

総指揮官は、カヅサ殿。

引退した身であり、所領も直隷軍も持っていないため、昔のよしみで集まってくれた兵たちに戦ってもらっている。という位置づけになる。

 

やっぱり妙な感じはするなあ。

勝利後、褒賞をどのように授与するのだろう。

ウタイショウという官位は保持しているから大義名分は立つけれども。ダイリやクゲはカヅサ殿に物品をせびる立場であって、天下を平定したからといって何かをくれたりはしない。できない。

現実問題、ミノのノフタタ殿より予算を出してもらって、それを連合軍の功績者に分け与えるという形になるのだろうか。

この辺りの契約条項や資本関係というのが私はものすごく気になるのだが、日本人は誰一人、深く考えようともしないみたいである。

カヅサ殿でさえ微苦笑して、終わってから考えよう、と逃げる。

いいのだろうか、それで。

 

さて、オーザカ攻めでは包囲持久戦という方針が決まった。

鉄炮の射程外まで離れて砦を築き、じわじわと飢死するまで追いこむ。消極的な戦法である。

まだまだ余裕のある敵戦闘員は、我々を意気地無しだと罵る。

不規則に城内より出てきては、他愛のないいたずらをしていったりもする。

応戦を禁じられた連合軍の兵には、不満が募りまくる。

雄叫び上げて、木刀一本しか持たなくても敵陣へ突っ込んでいくべきだ、それが兵法だ。と勘違いしている素人さんが日本人には多い。

旧カヅサ軍などできちんと教育を受けていなければ、正規兵の軍団でさえ、軽率な突撃を行いたがる。

これがイコ宗徒となると、そんなのばっかりだ。

目障りだから、すぐ殺すけど。

それにしても数が多い。

いつかは終わるとわかっていても、こんな日常は耐えがたい。

 

カヅサ殿は毎日、前線へ出向き、そんな兵たちを督励して回る。

勇猛さを示そうと無茶をしたがる者など、ツワモノではない。

真の戦士とは、状況を弁え、敵の弱点をいつでも突ける態勢で息を潜め続けられる者である。

砦から敵の城を見よ。

出入口がいくつあるか。銃眼がいくつ設けられているか。走れば何歩で辿りつけるか。狙われたら身を隠せる遮蔽物はどこにあるか。逆光を利用できる時間帯はあるか。敵にそれを利用されることはないか。犬を放てば陽動になるか。雨の日はどこにどう気をつけるか。

考えるべきことは、目の前にいくらでも転がっている。

常に敵より先を読め。その上で、待て。

 

こういった発見を次々語ってみせると、どんな兵も、首をうなだれる。

生涯を戦い続けてきたカヅサ殿から、そんな指導をされて跪かない男子などおるまい。

これを、カヅサ殿は、繰り返す。

兵は、よそ見をしなくなる。

退屈な警備任務でも常に緊張感を忘れず、細かく考え、仲間に伝え合う。

カヅサ殿の軍は、こうして着々と連合してゆくのだった。

 

 

ある日、カヅサ殿が敵に銃撃された。

頭を狙ったものと思うが、足に傷を負った。危なかった。

射手は、捕まえられなかった。

近習の慌てふためきぶりは大きかったが、本人は運がよかったと笑い、翌日からこれも教訓にして広めた。

 

数日後、傷が化膿してきたので、大事をとって前線を離れることになった。

私も、ひとまずミヤコへ戻ろうと思う。

ここまでいろいろ聞いた噂をまとめよう。

 

今度のホンガンジ挙兵には、なんと最後のクボウだったあの小心者が、絡んでいるらしい。

ミヤコを去ってもう3年近くになるが、その間、日本中の領国主たちに泣き言を送りつけていたという噂は聞いていた。

なんとも惨めったらしい話だが、長くやっていると慰めてくれる領主も現れてくるものらしい。

それで今は、カミ島西方のアキ国で間借りして暮らしているということだ。

いざ相手の懐に入ってしまうと、その耳元で毎日毎日朝夕の別なく、カヅサ殿の悪口を吹きこむことも可能になる。

イコ宗の民衆洗脳方法と通ずるものがある。

 

カヅサ殿憎し。という共通項でホンガンジも元クボウと連絡をとりあい、何年も傷を舐め合ってきたみたいだが。

ホンガンジからアキ王への昼な夜な唱和も、しつこく繰り返されていたようで。

同じ手口で北方エチゴ国の領主も、今では「カヅサ殿って、ひどい奴だね」と愚痴り合う一角に加わったという。

むしろ今回は、エチゴ王が仲間に加わったからこそカヅサ殿を西と東から攻略できそうだという希望が生まれ、ホンガンジが威勢よく蜂起するに至った、という順序であるようなのだ。

 

カヅサ殿。今後は、愚か者を赦免するのをやめましょう。

一度ならまだしも、二度刃向かった者は、斬首しておくことです。

こいつら、永遠に反省などしません。

 

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