戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1576/005.hmos

8月15日。

聖母マリヤが地上での生涯を閉じられ、天界へその居住地を移された祝日です。

 

28年前の同日。

我らコンパニヤの創立者たる、偉大なるメステレ・フランシスコ・シャヴィエルが、パードレ・トルレス、イルマン・フェルナンデスと共に、日本へやって来ました。

私たちの新しい歴史は、この日をもって始められたのです。

そして今年。

輝かしい記念日にもう一つ、ミヤコ聖堂の完成という、大きな喜びが加えられます。

私たちは一歩一歩、着実にパライゾへと向かっています。

日々を慈しみ、感謝と敬虔を忘れることなく、これからも歩み続けていきましょう。

アーメン。

 

完成したのは聖堂部分だけである。実は、香部屋もまだ無い。

そこまで急がせる必要があったのかといわれると疑問もあるが、ニエッキがどうしてもこの日に献堂ミサを行いたいと主張した。

私はその会議に居合わせなかったから、あとで承服だけをした。

ミサを終え、諸々の聖務を片付けたら、またすぐワカイへ戻る。

 

1週間前、連合軍が決定的な敗北を喫したのだ。

海戦である。

カヅサ殿はイセイ湾からクキ一族を呼びつけた。だが外洋を安全に渡りきる保証が無いと、クキ殿が拒否した。

それでも調査隊を陸路ワカイまでよこして、戦略の検討を始めている。

この間、オーザカ湾周辺の海賊衆はスミヨシ港に集められた。

ここを拠点にホンガンジを囲む海上封鎖を開始する。

 

今回戦場となる海域は、東西に横長いセト内海。

オーザカはその東端に位置し、これを支援せんとするアキ国は西方にある。

その距離、約60レグワ。

途中、アワジという島が海道を塞ぐ。

66領国のひとつを構成し、大きな面積を持つが、全島を支配する王はいない。

かつてはミヨシの一族が治めていた。その弱体化とともに、小領主の寄せ集めとなった。

前線基地として、アワジは特別に重要な拠点である。

当然、アキ国も動き、すでに島の西側は占領されている。

オーザカへ物資や兵員を送りこむ船団が多数、ここから出入りしている。

 

セト内海の潮流は、特殊な要素をいくつも持つ。

イセイ湾から来た調査員は、ひとつひとつに驚いていた。

外洋のような大きな浪はないものの、たとえばアワジの北および南は海峡が急に狭まるため流れが速く、しかも朝と夕とで潮の向きが変わる。

慣れている者は、そのうねりを先読みし、素早く攻撃して瞬時に退却ができる。

海戦では、陸戦以上に、その地特有の条件が戦局を決するのだ。住み慣れている者が、最も有利なのである。

 

今更言っても始まらないが、ミヨシ一族がアワジを統治していたままだったら、たとえ連合軍に味方せずとも、アキ軍を牽制してくれていたと思う。

しかし彼らはカヅサ軍に叩きのめされ、その後の内部分裂で今や見る影も無い。

当時カヅサ軍に協力していたサイカ勢は、今回ホンガンジと強固な同盟を築いている。

スミヨシに集められた連合軍の海賊は、西と南からの脅威にさらされつつ、オーザカへ出入りする舟を攻撃した。

はじめのうちは、それらの多くを退却させた。

しかし、敵もさるもの。こちらの戦法や練度を、しっかり研究していたようだ。

その日は、大船団で襲いかかってきた。

スミヨシ湾へ無傷で帰ってきた連合軍船は、ごく僅かだった。

戦力比が一気に逆転する。

今後我々は、海からの攻撃に為す術を持たない。

 

かつて私は、カイ軍は制海権を持たないから鉄炮の弾薬を手に入れることができない、という弱点を分析した。

あれを今、我々が、やられている。

シモから送られてくる物資や通信類の多くが、アキ軍に奪われているのではないかという疑念が拭えない。

これまでも海賊の危険は日常的なものだったが、その脅威は今年、絶望的に跳ね上がった。

カブラルたちはこの事態を把握しているだろうか。

私からの報告は毎月送っているが、どこまで届いているだろうか。

 

敵は爆発寸前の火薬玉をこちらの舟に投げこむという戦法を使う。

揺れる海上では弓矢も鉄炮も有効な武器ではないが、火薬玉なら、理にかなっている。

なによりこの戦法は操船術が頼りだ。同じ兵器を我々もつくることはできるが、運用で決定的に差がつく。

今後、サリートリの入手が困難になることを想定するなら、地上戦における鉄炮用の弾薬を確保しておくべきとも考える。地上戦なら、我々は絶対に負けないからだ。

それなのに、作っただけ海で沈められては、目も当てられない。

 

ワカイ城では連日、作戦会議が紛糾した。

ホンガンジの防御力と、アキ軍の制海力。

この結合は、今までにない手強さである。

 

アキ国の元クボウからエチゴ王へ届けられるはずだった書翰を、間諜が手に入れてきた。

街道上の関所では、我々の目が光っているのだ。

元クボウは、得意の絶頂である。

「自分が日本の王に返り咲いたら、アキ王を副将軍へ取り立てるつもりだ。だからエチゴ王も負けないよう頑張りたまえ」

そういう内容だった。

 

軽薄さしか伝わってこない、こんな男の口車にどうしてお前ら尻尾を振って従っていられるのか。わけがわからない。

もっと得意がらせてから、このまま公開してやろうか。そんなことさえ思う。

いや、即座に偽書だと反論するだろうな。

やはり力でねじ伏せてから、殺す直前その耳元で読み上げてやるような使い方をせねばならんかな。

 

自分の吐いた妄言で、たっぷり恥ずかしがってから、死にやがれ。

 

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