戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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日本人の何割かは、子供のうちに異常なほど精神性を発達させ、エウロパ人が何十年もかけてやっと修得できる才能や見識を、易々と手に入れてしまう。

 

ポルトガルによってこの島が発見される以前から、そんな子供たちは多かったであろう。

だが1000年間ここに巣くっていた坊主どもは、かれらの成長を弄び、腐らせることしかしてこなかった。

坊主どもが愚かであってくれたことに感謝しよう。そう、私はしみじみと思う。

 

今回紹介するシマン・ショーノシロー君も、モニカやイルマン・コスモに連なる、日本人のすぐれた素質を証明する恐るべき子供たちの一人だ。

私たちと出会わなければ、悪魔の掃き溜めの中で一生を終えていただろう。

彼は今、そこから這い上がってきた。

さあ、清流で思う存分泳ぐがよい。私たちは君の未来を、全力でたすける。

 

シマン君はミヤコの生まれだが、10歳の頃、ブンゴ政庁家臣タワラの養子になった。

めきめきと才能を発揮させ、人々の尊敬と期待を一身に集めて過ごした。

14歳でカブラルと出逢う。

この世界の真実を知った少年は、洗礼を希望した。

養父は激怒し、ただちに少年を坊主たちの巣窟へと監禁した。

 

彼は雌伏の時を、愚か者どもに気付かれぬように耐え忍んだ。

聡明さには、更に磨きがかかる。

ブンゴ王の娘との婚約が決まったので、ウスキへ戻らされた。

16歳になっていた。

今年初めのことである。

 

戻るとすぐ教会へも訪れた。いつも深夜。腹心の学友たちに守られて。

復活祭の半月後に受洗した。

霊名は、シマン。

 

ウスキ教会の向かいにフォッケ宗の小さな僧院がある。どうやら、ここから漏れたらしい。

養父タワラが大騒ぎし始めた。

教会へも、使者がよこされた。

シマン君の洗礼を取り消し、今後は来ても追い返せ。そうしてくれるなら、領地を与えてやるから、そこで布教するのは構わない。

そんなばかげた条件が提示された。

当のシマン君はこの提案を教会で初めて見て、養父の薄汚い了見をますます軽蔑した。

そしてついに家出を決意し、今、教会へ立て籠もっている。

 

タワラは、兵を差し向けた。教会は包囲される。

我々を皆殺しにして、御曹子だけを連れて帰ろうとする作戦が模索された。

ブンゴ国じゅうの信徒が集まってきてくれて、兵士たちに教え諭した。

私も何箇所かで小競り合いの現場に立ち会ったが。

タワラという小心者は、兵の使い方がなっていない。

信徒が死を覚悟して大声で理を説くのに対し、雑兵は腰が引けていたのである。

武装も、我々の側が勝っていた。

こんな奴ら、カヅサ軍最末端の演習相手にもなりゃしない。

アキ軍と戦うには、君たちもっと強くなってくれなきゃ困るんだけどね。

 

そんな悶々とした状態が、1週間ほど続いた。

 

向かいのフォッケ宗僧院から、我々への野次が飛ぶ。

教会が襲撃されたら即座に便乗して泥棒を働く気まんまんの連中が、昼も夜も屯っているのだ。

信徒たちが完全武装で見張り続けていてくれたが、辛抱も限界だったと思う。

こんな連中と仲良くつるんでいる坊主たちへは、やはりそれなりの制裁が必要なのではなかろうか。

こじらせてイコ宗みたいなのへ、なっちゃう前にですよ。カブラル?

早いうちに、手を打っておくべきだと思います。

 

兵たちによる包囲が効果無しとみえて、新たな使者が遣わされた。

ブンゴ王の次男で、セバスティアンという信徒である。

何度か教会へやって来たが、我々の期待は大いに裏切られる結果となった。

 

「シマン。君がどれだけ王にも、父君にも、パードレや信徒の方々へも、多大な迷惑をかけているかよく考えてみるといい。

父君と和解したまえ。

タワラ殿はここにいる皆さんよりずっと君を見てきた時代も長く、愛情の深さもはるかに大きい。

王は、君がデウス信徒であり続けることは君の自由で構わないと仰せだ。

君と結婚する姫君についても、彼女の意思によって洗礼することは構わないと仰せられており、タワラ殿へもこれに従うことを承知させている。

これ以上の何を求めるというのだ。

早くこの国に平穏を戻してほしい。

もし何か要求があるというなら、私に言ってもらえれば善処しよう」

 

その場にいた一同がセバスティアンの説得を聞いて、彼の正気を疑った。

誰かが指摘してやらねばならないぞ。

これに対して、シマン・ショーノシロー君は完璧な反論をしてみせた。

 

「王からの御伝言、および勧告を拝聴いたしました。

私はそれに従う義務がありますが、最も上位におられるデウス様の御意思に叛くことはできません。

自由意思により信教を認めるというお言葉がそもそも間違っておられますし、セバスティアン殿、信徒である貴方がそれに気付かないことにも驚くばかりです。

タワラ殿は私を侮蔑しました。

もちろんデウス様、イエズス様、スピリツサントス様の存在は理解されてもいないでしょうが、御主に対して絶対に赦されないほどの悪罵を吐きかけられました。

王に説得されてすごすごと和解に応じるとは、私のみならず、ここにおられる皆様への更なる侮辱でありますし、あの方自身がどれだけこの国に迷惑をかけているのかを塵ほども考えていないことの上塗りでしかありません。

私にとってタワラ殿は養父だったので、今日まで七年間、ひたすら服従の義務を果たしてきました。

それでじゅうぶんでしょう。

私は訣別の意思を伝えてきました。彼はもはや私に何も命ずる権利は持っていないのです。

そのことすら理解していないのかと、私は残念に思います。

平穏な世界をつくるのであれば先ず御自身が過ちを改めるべきであり、私にこれからも耐えさせ続けることで解決になると考えることは誤りです。

以上を、そのままお伝え願います」

 

セバスティアンは何度か往復をするうち、だんだん我々に敵意を向けるように変化していき、言葉遣いも下品になっていった。

信徒からは、セバスティアンを破門せよという要望すら出たくらいである。

カブラルは、彼にはまだ利用価値があるからと、その決断を保留した。

 

シマン・ショーノシロー、16歳。

日本の夜明けを期待させる、逸材である。

 

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