戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1577/012.hmos

カブラルをウスキで出迎えた。

サツマへ行ったことは隠さなかったが、余計なことは極力、言わずにおいた。

そらっとぼけた。

願わくば、私がそれだけ口の堅い男であると、カブラルが認めてくれるといいな。

いや。あんまり詮索じたい、されたくない。

私はパライゾへ行きたいのだ。

 

しかしカブラルも私ごときに構う余裕は無いようだった。

日本史を77年まで進めるにはあと10年くらいかかりそうです、という申請もひとまず諒承された。

長すぎるからと、読んでももらえなかった。

写本をつくる作業も、ぜんぶ私ひとりですることになった。

そりゃ、まあ。私にしか、できますまい。

むしろ省略・改変されたくないから私がやります。

ただ今年の定航船が冬に去って行くまでには間に合わないから、メステレ奮闘編はもう1年先に完成させてから、送ろう。

ああ腕が鳴るなあ。

 

今夏のパードレ大量上陸は、カブラルの対日戦略に大転換を強いた。

それはそうだろう。

サツマへの3人派遣もそれだけの余裕ができたからこそだし、キナイへも増援を数名送ったという。

筆まめな人が入ってるといいなあ。こちらからも、せっついてやるけど。

 

さて私の担当区であるブンゴ国でも、大きな計画が発動する。

来年中にブンゴ王を入信させ、この国から仏宗徒を放逐する。

カブラルはそのための詳細な展開図をつくっていた。

私にも、区長としての役割が与えられており、任務を遂行せねばならない。

うへえ。

 

ブンゴ王はあらゆる宗派に寛容である。

フナイでもウスキでも、多くの寺院がひしめいており、珍しいことに仏教侵入前から日本にあったカミ教までが保護されている。

本人には、特定の宗派への過度の傾倒は見られない。

シンゲンが全宗派の階位を得て、その最頂点に君臨したような、あんな酔狂な発想も持ち合わせていない。

 

厄介なのは王の妻だ。シモ島北部のカミ教大手ハチマンの家から嫁いだ。もちろん政略結婚である。

家臣の中にもこの一族の派閥が巣喰っており、何かと王に意見して権益を伸張する。

その1人がタワラという側近で、半年前に我々とひと悶着起こした。

タワラの養子だった聡明なるシマン・ショーノシロー少年が、かれらを見限って教会で暮らし始めた、あの件だ。

 

シマン君ほど聡明ではないが、ブンゴ王と妻ナタの2番目の息子であるところのセバスティアン。

あのときも不器用に立ち回ってくれたものだが、今ではシマン君の代わりにタワラの養子の座についた。

ブンゴ王がとりなしのつもりで、そのように命じたと聞く。

 

シマン君の観察力は抜群だ。

彼の語るブンゴ王家の家庭事情。

王妃ナタがいかに悪辣で、王の背後から手を回して自身の野望を満たしてきたかという、そのやり口を我々は知る。

王の長男は、我々との接点がない。母親の味方をするかもしれない。

セバスティアンの方がまだ使いようがあるだろう。

我々は連中の裏を掻いてやる。

 

ナタを排除する。そして、王に新たな妃を迎えさせる。

文章で書けば単純な計略だが、もちろん慎重に進めていかなくてはならない。

1年間かけて、自然な形で、実行する。

王はシマン・ショーノシローのことを気にかけている。来年、今よりもっと聡明になったシマンを我々の仲介で父親のもとへ返し、深い絆を取り戻させる。

タワラやセバスティアンの出る幕は無い。新妻とシマンに教えられて王が福音に目覚め、デウスの教えを理解すれば、領国内にこれだけカミやフォトケの寺院が建てられていることを、おぞましいと思うだろう。

わかってもらえるまで、我々は説き伏せる。

 

うまくいきますかね。いや、やらねばならんのですが。

カブラルが急ぐ理由は、やはり巡察師への対抗心のようだ。

ヴァリニャーノの話題がちらとでも出ると、あからさまに機嫌が悪くなる。

そのうちフナイで、レイモン、ゴンサロ、カブラルを交えての会議をする機会も訪れるだろう。

どんな険悪な雰囲気になることやら。

今から胃が痛い。

 

「フロイス、おまえには、これからもっと、働いてもらわねばならん。

気付けに、これを喫え。特別に味あわせてやる」

 

タバコというそうだ。

生糸1本くらいの大きさで、堅い葉で巻いてある。

吸口の先端を切って反対側から火をつけると、ゆっくり燃えて、煙が漂う。

エウロパから西回りの、ヌエバ・エスパニヤで採れる、薬用植物だそうだ。

 

最初のうちは咳き込むが、カブラルはもう慣れたという。

頭の働きを高め、気分を落ち着かせる効果がある。

茶にも同じような効能があるというが、日本の茶については回りくどい複雑な儀式がついてくるので、道具や場所をいろいろ整えねばならず、面倒だ。

タバコは数年前から定航船が持ち込んでくるようになった。

カブラルも試してみてすっかり気に入り、今年は特に多く持ってこさせたという。

とはいえ豚肉同様、まだまだ高価なので、今のところ日本人には売っていない。

カブラルと、特にお気に入りの仲間だけで、分け合っている。

ブンゴへ持ってきたのは、初めてだそうだ。

 

……ゴホ。

ありがとうございました。

慣れると、美味しく感じるものなんでしょうかね。

 

西回りといえば、パードレ・トルレスが辿ってきた航路です。

日本より東はエスパニヤ領ですよね。

このタバコは、エウロパを経由してきたものですか?それとも、ヌエバから直接?

 

「日本よりずっと東南の海域に、ルソンという島がある。ここにエスパニヤ勢が大きな町をつくっていてな。すでにゴアより大きいとも噂される。

そこからアマカウへ輸入されたものを、当地の財務担当が買いこんで、日本へ送ってくれているのだ。

たっぷり感謝して、味わえよ」

 

エスパニヤも、開拓の規模が大きくなってきましたね。

エウロパではモーロ人との戦いが終わったと聞いています。

だから余裕ができてきたということなんでしょうね。

我らがポルトガルも、うかうかしてはおれませんね。

 

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