戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/001.hmos

ミヤコからの、便りが届く。

 

盲目のロレンソ以外、全員が分担して1年間の活動報告を記述してきた。

なるほど。

このやり方だと各人が互いに競い合っていいこと書こうとするから、正確性はともかくとして、気合いの入った文章になりやすい。

それぞれの体験がそのまま反映されているので重複や矛盾も生じるが、むしろそれを見つけてはいちいちニヤリとしてしまう。

 

本来は、これを上長がまとめて、最終報告書の形にして送ってくるべきなのだ。

長年それは私の仕事だった。誰もそれを引き継げなくて、こうしたのだろうとは察する。

当然ながらカブラルは、下書きのまま送ってきたのかとカンカンだ。

これだからイタリヤ人は使いものにならないと、こきおろす。

 

報告はまず、イルマン・ジョアンが最初に目を通す。

ポルトガル語で書かれたものを選り分け、カブラルに渡す。日本語で書かれているものは翻訳して伝える。

ニエッキやステファノーニがイタリヤ語で書いたものは、2人とも理解できない。

ここで、私が呼び出される。

最終的に、私がすべてを整理して、ポルトガル語でまとめることになる。

期限は、1週間もらった。

 

正確に言うならば。

ニエッキやステファノーニの文章は、イタリヤ人が無理してポルトガル語で書こうとしている、奇妙な合成言語だ。

これを解読できるのは、私くらいだろう。

しかもニエッキのは更に日本語も混じり込んでおり、6年間一緒にいた私以外には絶対に読み解けない。

彼もそれをわかっているのだろう。カブラルへの悪口がちくりちくりと現れる。

油断しすぎだ。

よっぽど私を信頼しているのかな。

もちろん、ばらさないが。私だって、命は惜しいからね。

 

おさらいする。

 

76年の末、私はミヤコを去った。

カヅサ殿はこの時点ではオーザカ、カンガ、そしてアキ国と交戦中。

ダイリの権威はまったく役に立たない。

その上制海権を奪われ、シモからの輸入もままならなくなり、厳しい状況に置かれていた。

 

春、カヅサ軍は、オーザカへの鉄炮を供給していたサイカに全軍を投入する。

激しい戦闘だったが、いまやサイカはカヅサ軍のものとなった。

サイカの港も、遠回りではあるがシモからのサリートリ搬入を安全に行える水運の要衝として機能しているということだ。

オーザカの泣きっ面が目に浮かぶが、たかが障害のひとつを排除したにすぎない。

油断は禁物。

アキ軍は依然、セト内海を我が物顔で哨戒中である。

 

次の目標を、カヅサ殿は北へ向けた。カンガだ。

エチゼンを治めるシバタ殿を大将に任命し、夏の終わりまでに準備を整え、進撃。

収穫期直前に何もかもを焼き払う、いつもの作戦なのだろうな。

 

しかしある事件が起きて、全軍引き返すこととなった。

最優先攻略対象が現れたのだ。

 

なんと、ソウダイである。

ヴィレラの時代から既に老人だったはずだが、今は妖怪か。

何度も主君を替え、カヅサ殿を裏切ったことも一度や二度ではない。

デウスにとっても長年の敵。

こいつがヤマト国の城に立て籠もり、カヅサ殿に反旗を翻した。

 

カヅサ兵が北へ集結したその虚を突いて……とニエッキは書いているが。

それならカヅサ殿の本陣を襲いに向かうべきではないか?

遠く離れたヤマト国へ立て籠もるだけでは、消極的すぎる。

このあとで、何か策でもあったのだろうか。

老獪で知恵が働くのがソウダイの真骨頂だったはずなので、ニエッキが突き止めきれてない、何らかの計画が隠れているものと推量はするが。

 

ともかくカヅサ殿は、カンガ国攻めを中止させた。

ここで突然、なんとサンガ殿まで謀反する。

カヅサ殿は守備隊に、サンティアゴ殿と息子のマンショ殿を処刑せよと命じた。

いったい、何が起きていたのか。

ニエッキたちの報告だけでは、さっぱりわけがわからない。

少なすぎる情報で真相に迫ることは容易でない。

 

しかし私は考える。

 

サンガ城は、オーザカに近く、水路で簡単に行き来ができた。

一昨夏の海戦で大敗北を喫して以来、サンガ城は、いつオーザカに獲られてもおかしくない苦境に立たされ続けていたのである。

だからおそらく、オーザカからの交渉が持ちかけられて、サンガ殿は抗しきれなかったのではあるまいか。

これに、ソウダイも絡んでいると見るのである。

 

だが実行する段になって、うまく足並みが揃えられなかった。

ニエッキの簡単な結末によると、サンガ殿はサクマ殿のとりなしによって命を助けられた。

一方、ソウダイと彼の郎党どもは冬の初めに城ごと焼き払われたという。

ひとまず胸を撫で下ろす。

ニエッキよ。次はもっと詳しく書いてくれ。たのむから。

 

 

さて、本来はこちらが報告の主たる部分であるのだが。

キナイにおける布教実績。

カブラルが特に求めているので、じっくりと翻訳する。

 

1577年の信徒獲得数を7000人などと書いてあるが、急激に増加しているのは嘘でないようだ。

私がいなくなったあと、ニエッキはステファノーニと相談して、今までやってこなかったことをいろいろ試行錯誤してみたらしい。

もともと日本人を好きになって、信徒の家で食事をしたり、子供たちと遊びながら日本語を学んだり、積極的にかれらを理解しようと努力してきたニエッキのことだ。

日本人はどんなものを欲しがり、どうされると喜び、何に対して怒るものか。

おそらく私よりもずっと肌身で理解しているように思われる。

ニエッキは、歌と踊りで人々を笑わせることから始めた。

 

デウスの教えは、つらい修練を経て学ぶだけではない。

人生は、楽しむために存在するのだ。

パライゾで暮らす悦びを、今のうちから知っておこう。

ずっと幸福であり続けたいなら、言いつけを守り、愛されることを心掛けよ。

デウスに叛けば、永遠の苦しみが待つばかり。

それはまさに、怖い顔で睨みつける仏像がひしめき合う、君たちが今まで暮らしてきた、この世そのものに他ならないのだからね。

 

効果はすぐに現れた。

ニエッキのもとに、求道者が詰めかける。

クラボの演奏が途切れる暇は無く、信徒たちは瞳を輝かせて、今じゃ坊主を追い回して泣かせている。

すばらしいね。実に、すばらしい。

 

それにしても、7000人とは盛りすぎじゃないか。ニエッキ?

 

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