戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/004.hmos

ブンゴ王は再婚相手に、それはもう、メロメロである。

 

彼女の名はジュリヤという。

コインタという連れ娘がいて、コインタはセバスティアンの妻だ。

つまりブンゴ王は、息子の義母と、熱烈な恋に落ちた。

ちなみに再婚したときは、まだジュリヤは洗礼前だった。

 

整理しながら話そう。

ブンゴ王にはナタという悪妻がいたため、ソクラテスよりずっとずっと不幸な夫だった。

ナタはハチマン宗の家の出なのだが、まさに悪魔の申し子といえる。

傲岸不遜で、派手好きで。家臣たちを意のままに操り、ブンゴ国を背後から我が物顔で支配していた。

とくに我々コンパニヤの使徒を目の敵にし、陰に陽にと攻撃してきた。

 

ブンゴ王家は代々寛容を美徳とする方針を持ち、現ブンゴ王もその姿勢を継承している。

これはこれでどうかと思うが、ともかく領国内では我々も安全を保障され、カミやフォトケの坊主たちとも一定の距離を保って共存していたのだ。

 

王の次男であるセバスティアン。

彼の洗礼は、本人の意思によるものだ。

ブンゴ国内で我々の立場を向上させるためには、彼の力が必要だった。

今は色々あってタワラという家臣の養子というおかしな立場にあるけれども。むしろここから、タワラの姉妹であるナタを失脚させる糸口を、我々は掴むことができるわけである。

 

コインタの母は、何から何までナタと正反対だ。

優しく、慈愛に満ち、決して出しゃばらず、贅沢を求めず。家族を大切にし、ひいては国の行く末を案じ、王が為すべきことを妨げたりせず、その悩みを分かち合い、迷いを捨てさせることに撤する。

それができる女性だった。

美しき心は表面にも顕れる。美貌もまた、ナタが終生持ち得ないものの一つだ。

 

王はまだデウスの教えの何たるかを知らない。

だからナタ以外にも何人かの妻がいた。

はじめコインタの母を、その一人に加えようとした。

彼女は求道中の身であったから、それがいかに間違った行いであるかということを、王に諭した。

コインタやセバスティアン、シマンも我々も、同じ真理を説いた。

やがて王は理解してくれ、すべての妻と離縁した。

そして、ただひとりの妻を生涯の伴侶として迎えた。

 

もっとも、ナタがすんなりと承服したわけもない。

ナタは今も城に住んでいて、今まで通りの贅沢を許されている。

出て行ったのは、ブンゴ王の方だ。

このとき王位も長男に譲った。

しかし長男は若いので、実権はまだ父王が握っており、使者が一日何度も隠居先の邸と城とを往復している。

周囲の誰もが、呼び方も改めない。

 

しあわせを満喫中の夫婦であるが、新妻は体があまり丈夫ではなかった。

城の侍医が診たが、薬を処方されてもなかなか快くならない。

2週間くらいして、カブラルが彼女に洗礼を授けた。

ジュリヤの瞳はより一層輝き、病はたちまちその身体から逃げ出していった。

 

ブンゴ王は、デウスの力を目の当たりにして、跪かんばかりの驚きようである。

今後は邪宗門には目もくれず真理を学ぶことを誓う。

そして結婚の秘蹟を受け、ジュリヤと永遠の契りを交わした。

さすがはカブラル。お見事でした。

 

そして今、物語はもっと壮大な方向へと発展しているところである。

先月、ヒュウガ国の王が、サツマ軍に攻めこまれてブンゴへ逃げてきた。

ブンゴ国としては、隣国での動乱を座して見過ごすことはできない。

ただちに兵を召集し、春の到来と共にサツマ軍を押し戻してヒュウガ王の失地回復を果たそうと約束した。

王位に就いた長男に総指揮を執らせる形で、諸々調整中である。

 

サツマといえばアルメイダたちが教会設営交渉で駐留しているが、実質は交易の参入権を目的とした商談だ。

サツマが年間どれだけのサリートリを買いたがっているかで、全軍の戦力や、今後計画されている動員の規模を推量することができる。

チイナから不定期に来航する商船からも質の悪いサリートリを買い入れているという情報も含めて、カブラルへ報告が送られる。カブラルはブンゴへ、サツマに勝利するに適切なだけの量のサリートリを提供する。

多すぎてもよくない。必要が生じるたびに我々を頼ってもらえなければ困るからだ。

ブンゴ王には、何度でも跪いていただこう。

 

ヒュウガ国は、地形の影響か冬でも温暖で、年間を通して過ごしやすい土地だと聞く。

サツマを駆逐した暁には、隠居先をヒュウガ国へ移して、そこでジュリヤをもっともっと健康にさせてあげたい。

ブンゴ王はそんな夢を語り始めているそうだ。

 

それもいいですが、その前に、しっかり教義を学んでくださいね。

あなたはまだ、求道中の身。

洗礼を受けられるのは、早くても復活祭以降です。

戦局如何によっては長男殿に代わって全軍の指揮を執らなくてはならないので。

そちらもゆめゆめ怠りなきよう。

 

「フロイス殿、考えてくだされ。

私の霊名なのだが、日本語で発音しやすく、かつ、あまり他の人に使われていない、いい名前は、ありませんかのう?」

 

ブンゴ王。さっきから何をじっと悩んでいるのかと思ったら、そういうことですか!

名前なら考えておいてあげますから、それよりも聖書を一行でも読み進めてください。

これじゃいつまでたっても、モーゼの十戒にさえ辿りつけない!

 

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