戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/006.hmos

ブンゴ王位を継いだ若き長男。名をヨシムネという。

 

実は何度か会ってはいた。

しかし常に父王と一緒だったので印象も薄く、多くの領民にとっても、未だブンゴ王といえば父親の方だ。

このヨシムネ殿から使者が遣わされた。

私に、会って話したいことがあるという。

 

私も、願ったりだ。

彼はブンゴ領内南寄りのノヅという地に陣を敷き、そこから前線を指揮しているという。

カブラルに許可をもらって、旅支度を整えた。

 

さて、従僕が欲しい。

馬鹿はいらないが、私のいうことをきかないほど賢くても困る。たとえばモンテがそうだが。

もとよりパードレが2人も出かけてゆくほどの案件ではない。

そこで、ダミヤン・デ・ラ・クルスを指名した。

 

ダミヤン。

日本人信徒としては古株だ。私より5歳ほど若い。

見た目はまだまだ青年のような溌溂さで、身のこなしも軽く、昔よりずっと攻撃的な性格を身につけている。

ジョアンほどではないが、ポルトガル語も話せる。

当然だが日本語はもっと得意で、ミヤコを離れて以来ずっとシモで暮らしていたから、ブンゴの方言にも詳しい。

 

余談になるが、私はフナイで再会したとき、あのダミヤンだと気付けなかった。

記憶を辿れば、ヴィレラの手下の一人だった。

私の代になってからも数年は一緒に働いてくれていたが、伝令をつとめてそのまま戻ってこなかったんじゃなかったろうか。

その後消息を聞かなかったが、今ではカブラルからも一目置かれている優秀なイルマンだ。

 

もう一言、付け加えておこう。

カブラルに認められる日本人とは。同胞でも信徒でなければ敵と見做し、改心の期待値が低い場合は殲滅も辞さぬ。

その決意と行動力を伴った人材のことをいう。

ジョアン然り、コスモ然り。最近ではシマン・ショーノシロー然りだ。

ダミヤンも立派に、同じ資質を有しているわけだ。

 

ダミヤンは数年前、パードレの一人と衝突してコンパニヤを脱退するという騒ぎを起こした。

カブラルが説得して再入会させたという。

あのカブラルがだ。彼への期待値の高さがわかる。

復帰したダミヤンは、以後デ・ラ・クルスと名乗るようになった。

十字架を背負った闘士。

ポルトガル人でも、ここまで自信家な男はそうそういない。エスパニヤ人になら、いるかもだが。

 

 

さて我々は、ノヅへ到着した。

ヨシムネ王との会談はきわめて有意義なものだった。

 

「フロイス殿は、今や日本で最古参のパードレであり、長らく京へ赴任され、内裏様、公方様へもお目通りを許され、布教と慈善事業に誠心誠意尽くされてきたと伺っております。

あらためて、こうしてお目にかかれたこと、感涙に堪えませぬ」

 

いえ、それほどでも。

クボウなんて、もう、いませんけどね。

軽薄な野郎でした。カネさえ払えば誰でも会ってもらえましたよ。

それより本題へ入りましょう。

 

「私はまだ若輩ではありますが、豊後国の王として、国を守り、領民の幸福を保障する責務があります。

そして今立ち向かっているこの戦役にも、勝利しなくてはなりません。

指揮権は私にある。

引退した父が、私に直接助言するまでならともかく、横から勝手に作戦を命じるようなことがあっては、軍の統帥は維持できません。

この状況を、ご理解いただけますか?」

 

よくわかります。お父上が越権行為をされていて、ヨシムネ王は大変お困りなのですね?

 

「大変困っています。

しかも、です。我々は土持殿とも協力し、伊東殿の失地回復を果たせば引き揚げるつもりで出征しているのに、父は勝手に、土持領北川浜に個人用の城をつくることまで忠臣たちに命じています。

かれらは私より父の命令を優先しますから、ここで大混乱が起きてしまっているわけです」

 

それは困ったことですね。

ブンゴ軍の最高司令官はヨシムネ殿なのだと全軍にあらためて通達する必要を感じます。

お父上からの命令も、必ずヨシムネ殿を経由するよう連絡網を整備するべきでしょう。

 

「何度もしています。一向に効き目がありません。

さてフロイス殿。最近、カブラル殿は毎日のように父と懇談しており、臼杵や私どもからの使者が後回しにされていると聞き及んでおります。

北川浜には教会も建てさせる予定とか。

いったい、あなた方は、父に何を吹きこんでおられるのか。白状していただけますかな?」

 

あら?そうきましたか。

ヨシムネ殿、白状しましょう。

実は私も、うちの大将のやっていることに、疑問を持っていたのです。

軍事的に見て、今のブンゴ軍は、きわめて憂慮すべき状態にある。と危機感を抱いていました。

しかし今、ヨシムネ殿のお話を伺って、ヨシムネ殿自身はきわめて冷静に、なすべきことの本質を見据え、適確な判断力と行動力を兼ね備えていることを私は理解し、ほっと安堵しているところです。

 

ブンゴ王よ、私はあなたの味方になれます。

お父上の慢心には私が釘を刺しておきましょう。

戻ったら、さっそく取りかかります。

一人前の男と認めて王位を譲った以上は、その王よりも立場は下なんですよと、わからせます。

そして、修学に専念させる。

これで万事、丸くおさまるでしょう。

 

ダミヤンを預けていきます。

私はミヤコで従軍教誨師もやっていましたが、その経験を、彼に教えてあります。

ブンゴ軍は、今よりもっと強くなれるはずです。

サツマを懲らしめて、早く戻ってきてください。

 

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