戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/008.hmos

ツチモツは、あっけなく滅んだ。

 

激戦ではあったのだが、勝敗は見えていた。

ブンゴ兵は続々増え続けている。現在は3万兵くらいの規模になっているはずだが、これからもっと増える。

 

この戦役でヒュウガ国を手に入れれば、功績に応じて所領をもらえる。その競争に臨むため、地方領主たちがアシガルを必死で掻き集めているのだ。

まだまだ間に合う。今やらないでいつやるのだ。そんな勢いでナンガサキやアリマからも志願兵を募っているらしい。

どちらも定航船が来れば商売で賑わう、夢と野心の漲る都市だ。だが光あるところには闇もある。身ぐるみ剥がされ借金を抱え、奴隷以下の身に堕ちていた若者も大勢いるわけだ。

戦闘集団の中には日本生まれではなさそうな少年たちも混じっているし、雑用係あるいは情婦として連れてこられている少女もちらほら見かける。

かれらを専門に扱う商人も跳梁跋扈し、売り時を逃すまいと狂奔する。

ミヤコのレアンも、ここへ来ればもっと大きく稼ぐだろうな。そして教会へ寄付を……いや、本題へ戻ろう。

 

ツチモツの領主は、すでに斬首されたという。

寄せ集めの兵たちは行軍しながら、おまえたちはブンゴ軍に逆らった愚か者だと領民を罵り、食糧をねだり、蹴りつけ、いろいろなものを奪ってゆく。

腹いせの放火は禁じられている。木材は大切な資源だからだ。ムシカと名付けられた一等地に新しい都市づくりが始まっており、ブンゴ父王が洗礼を授かり次第、この地へ移ってくることになっている。

建設班は手柄を立てられないから、不人気だ。懲罰的な配置だと見做されているようである。

 

前線では勝利が続いている。

サツマ軍は鉄炮を持っていない。まったく無いわけではないが、ブンゴ軍の方が圧倒的に火力頼みで、強いのだ。

自分たちの姿を見ただけで敵は一目散に逃げる。そんな愉快な歌までつくられた。

あとになればなるほど戦場で奪える獲物は激減していくから、誰よりも一番乗りをしたがる部将は多い。

ヨシムネ王はこれらの調整に忙殺されている。

組織を不公平感なく運営してゆくのは、難しいことであるのだなあ。

 

私は、ヨシムネ王の悩みを聴き、その苦しみを和らげるために訓話を語りたい。そうすることですべてが最大限に効率よく進んでいってくれれば、それ以上に何も願わない。

しかし、なかなか会えないでいる。

それまではダミヤンと一緒に悩める兵たちの相談相手になり、かれらの迷いを断ち切る。平和になったらあらためて教会へ来たまえと背中を叩いて送り出す。

 

今しているこの仕事。

もともとは、カヅサ軍で共に過ごしながら自主的に始めた。

実にやりがいがあって、充実感に満たされる。兵士たちには慰め役が必要だ。戦場で私にできる最善の行いだと思うし、コツもわかってきたから継続していきたい。

カブラルは軍事貴族の出身なのに、聖職者が戦場に赴くことを許容しない。

これが聖書の教えと矛盾せず、デウスの望まれていることをしているのだという明快な根拠を立て、納得してもらうわけにはいかないものか。

 

カヅサ殿が悪魔じゃないことも証明したい。

カブラルに反論するのは難しいけど、彼は、高い理想をもって戦争してるんです。

カヅサ殿の領地では皆が笑って健全に働く。日本中をそんな町にしよう。そういう将来像を掲げて、行っていることです。

悪魔どころか、彼は優しすぎるほどです。

イコ宗とかクボウとか、愚かすぎる者にはお仕置きをしますけど。終わったらそこでお終いなんです。合理的な判断に基づいています。

全国を統一したら、新しい制度を敷きます。そこでコンパニヤが為すべき役割も、ちゃんと考えて準備してくれていますよ。これほど頼りになる征服者なんて、望むべくもない。

それをねえ。ちゃんとカブラルに説明したいんだけどねえ。

いざ向かうと、あの気迫に圧されてしまうので、難しいんですよ。

 

あれ?ダミヤン。

君は、また、兵士に洗礼を授けたのか。

 

「ええ。今日は5人に。

教えを理解し、誠実に生きることを誓い、一日も早くデウスの導きに身を任せたい者には、授けて然るべきでしょう」

 

うーん。しかし、兵士はこれから人を殺すんだよ。

戦争が終わってからにした方が、矛盾が無くならないかい?

 

「おかしなことを仰いますね、パードレ・フロイス。

兵士が敵を殺すのは、職務としてです。

私利私欲、また怨恨などによる、デウスの怒りに触れる類いの殺人とはまったく別物です。

仕事と私事はきっちりと区別しましょう。

ちなみに坊主はそこが曖昧だから、ダメなんです」

 

なるほど。一理あるね。

君はずいぶん、合理的な思考ができるのだね。

 

「かれらは、今日、死ぬかもしれないのです。

それを先延ばしにしてパライゾへ行けないなど、悔やんでも悔やみきれない。

それに戦場では、合理的な判断が素早く出来るか否かで、生死が分かたれます。

この決断力がデウスの教えを学ぶことによって身につくものなら、兵士にこそ必要でしょう。

生きて帰ってほしい。そう思うからこそ、私は洗礼を授けるべきと考えます」

 

恥じいるよ。

私は今、君から大切なことを教えられた。感謝する。

ところでカブラルとは、今のような問答をしたことあるかい?

 

「パードレ・カブラルとですか?

いいえ。でも、咎められたこともないですけど」

 

ああ、そうか。

私は考えすぎていたのかもね。

もう一度、ありがとう。

さて仕事に戻ろうか。

 

 

私は萎縮していたようだ。愚かであった。

デウスがお怒りになれば、それは直ちにわかることだ。

怒られてない以上、今していることはデウスにとって許容範囲なのだと、安心してよいのである。

 

状況が好転するのをただ待っていた。このままでは何ひとつ進まない。

いま目の前で起きている大変化を、終わるまで見過ごすところだった。

愚かすぎた。聖書の中にだって、矛盾はいくらでもある。しかしそれらはすべて真実であり、正しさと尊さにおいて完全なのである。

それが歴史というものだ。理解すれば、おそれるものなど何も無い。

よし、迷いは消えた。

 

私は宣教師である。福音を伝え秘蹟を授ける。そのためにここにいる。

私はブンゴ国の布教長である。ブンゴ国の発展に寄与する責務がある。

私はヨシムネ殿を信徒にする。これは上長の命令にもよるものである。

 

ブンゴ軍を、今のうちから、信徒でいっぱいにしよう。そして、デウスの力で勝利したのだという成功体験を皆で分かち合おう。

なんだ。わかってみれば、こんな単純な話だったのだ。

 

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