戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/012.hmos

待降節に、ウスキで2人へ洗礼を授けることになった。同時に結婚式を兼ねる。

戦争中ではあるのだがシモ島6領国から貴人を大勢招き、華々しく盛り上げる。おおごとだ。

ムシカにいるカブラルからは、好きにせよと言われた。はい、がんばります。

堂々と、していなければ。

 

行事の目玉として、祝炮を撃つ。

3年前の夏にブンゴ国が輸入した、フランキだ。長さ12ブラサの攻城炮。

ムシカへ移設される予定であったが延期してもらった。

鉄炮隊の編成にさえ事欠くサツマ軍がこの音を聞いたら、どれだけびっくりするだろう。見てみたいからサツマの殿様たちも招待したいところなのだけど、それまでに戦争、終わらないよなあ。とてもとても。

 

 

兵器の威容を見せつける観覧式といえば、カヅサ殿も、やったらしい。

 

ニエッキからの報告による。この夏サカイの港で、イセイ湾から派遣された7艘の鉄舟が披露された。

カヅサ殿も直々に民衆の前へ現れ、その歓声はオーザカまで揺るがした、なんて大袈裟に書いてある。

ニエッキの観察は表面的な内容に終始しており、鉄舟の実態を知るにはいささか物足りないのだが、手懸かりはこれしかない。

それでも解説を試みよう。

 

まず。全部が鉄製ではない。

木造舟で、側面と甲板に鉄皮が貼りつけてある程度だ。

しかし火矢による延焼を防ぐ効果は充分にあるし、重くなっただけ揺れも抑えやすいだろう。

大きさだが、人数五千程乗る、と書いてある。

7艘合計だとしても有り得ない。ナウで定員250だぞ。

あいつはほんと、数字に弱い。ここは無視するべきである。

 

注目すべきは、各舟に1~3基の大炮が装備されているという記述。

大きさを書いてないが、書いてたとしてアテにはできぬ。フランキを3基も積める舟だったらガレオンより大きいことになってしまうが、それもまた、有り得なかろう。

大型炮が日本に輸入されたのはブンゴ国の1基だけのはずだ。定航船の積荷はカブラルが管理させているから間違いない。しかしカヅサ殿が独自に開発させたという可能性もある。鉄炮の鋳造なら今や日本各地で行われているが、大炮となると、まだまだ容易でないはずだ。火薬の量だって適切な分量を求めるまでに何人も死者を出してるはずだから、本当に実戦に堪えられるのか?と考え始めると、いささか怪しいと感じるのだ。

 

私の率直な感想を述べたい。

この7艘の観覧は、民衆の度肝を抜くための余興に過ぎぬ。

何百という小舟を相手にする海戦で、こんな長尺仕様が意味をなさないのはカヅサ殿も御承知のはずだし、運用するにしても、主勢力としての小舟こそがもっと必要なことは明白である。

ただほとんどの民衆にはそんな現実、縁遠いので、見たこともない強そうな新兵器がこれだけあればオーザカもアキ国も敵ではない、と思いこませることは容易だろう。

イコ宗徒の戦意を喪失させることが、この芝居の目的だ。

それにしても、随分とカネをかけた余興だとは思うけれども。

 

 

さてさて。

私は洗礼式のため、ノヅとウスキとムシカを行ったり来たりしている。

新米イルマンはあてにならぬのだ。

ポルトガル人は生来優秀な民族であるが、日本で今年イルマンになった者はすべからく落ちこぼれの中の落ちこぼれ。

時間をかけて使いものにしていくしかないのだが、そんな時間をかける余裕がない。

しかも、品のないポルトガル人から頭ごなしに命令されることで優秀な日本人がやる気を失うという問題も生じてきている。

早く何とかしなくてはならぬ。

 

そんな私が近頃、全面的に頼っているのが、パードレ・グレゴリオ・セスペデスだ。

 

カスティリヤ人。77年組。来日1年目はオオムラを担当した。

この頃すでに、日本布教長カブラルと巡察師ヴァリニャーノが激しく衝突するであろうことを察知し、独自に行動を開始している。

セスペデスは、何よりもまず、日本語の修得を心掛けた。

なるべく、目立たないように。

 

「だって、日本語がわかると知られれば、イルマンや従僕から、面倒な雑用を押しつけられるに決まってますから」

 

能ある鷹は爪を隠す。

セスペデスは、能力をひけらかさない。使うときまで研ぎすませておく。

そんなことができる男だ。

 

この度、セスペデスはミヤコ担当を命じられた。

ニエッキやステファノーニの報告が眉唾すぎるのでまともなパードレを行かせなくてはと、カブラルも焦慮したらしい。

まともだが、行かせても惜しくない人材とは誰か。ということで選ばれたのがセスペデスというのも面白い。

カブラルは能力の有る無しよりも、自分になびかない男が嫌いだ。

セスペデスは、そのお眼鏡にかなったというわけである。

 

ウスキから船便でキナイまで行く予定だが、私が忙しそうだといって延期してくれている。

カブラルも、好きにしろと言ってる。

ありがたい。好きにします。

 

「パードレ・フロイス。あなたから、日本語と、ミヤコ事情、そしてカヅサ殿という人物について、しっかり学んでから出立することは、私にとって大いに力となることです。カブラルが本気で怒り始めるまで、引き延ばしましょう。それまで大いに語らいたい。それは、純粋に、私自身の、ためになる、からです」

 

嬉しいねえ。私は、こんな頭のキレる後輩のお眼鏡にかなって光栄です。

 

 

式典の準備は、順調に進まなかった。

坊主どもが騒ぎ出している。

中心にいるのはやはり、ナタだった。ドン・フランシスコの元妻。離婚されたが実家へは戻らず、ウスキ城に一室を与えられ居候しつづけている。

カミ宗ハチマン派の代表気取りで、デウスの教えに真っ向抵抗する、愚かな悪魔だ。

 

セスペデスに教えるつもりで復習しよう。

 

日本には昔むかし、カミという偶像があった。

ここに1000年ほど前、大陸よりフォトケという邪宗が入ってきて、日本をまるごと呑みこんだ。

カミは、絶滅は免れたがフォトケに完全服従し、その支配の片隅で今も細々と生きながらえている。

ブンゴではこのカミの方を上位にして祀っている。こんな地域はごく少数派で、日本は大方がフォトケの支配下。

それが権力闘争を経て細分化し、ゴチャゴチャ互いに争って、インヘルノをつくり出している。

 

キナイへ行ったら、特にオーザカのイコ宗を警戒すべし。やつらは地上で最も危険な悪魔である。

これを殲滅すべく戦っている強力な武人が、カヅサ殿だ。

会ったら、フロイスからよろしくと、伝えてほしい。

 

ナタは権限など持っていないくせに強権を振り回し、ブンゴ家臣団や領国内外の坊主を総ぐるみ巻きこんで、我々の邪魔をする。

教会を直接襲うには至ってないが、信徒たちへの嫌がらせや暴力が絶え間ない。

今日も、畑に犬の死骸が投げこまれていたという報告を受けた。まったく。心を蝕まれた輩はやることなすこと、えげつない。

君たちの行動そのものが、まさしく君たち自身の正体なのだ。

少しは能のあるところくらい見せてみてはどうかね。無理か。

 

フランキ攻城炮を1発おみまいしてやれば、少しは静かになるだろうか。

一番でかいテラに、ナタを誘い出せれば、理想的なのだがな。

 

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