戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/015.hmos

ノヅにはダミヤンがいるはずだ。ひとまず、そこで一服しよう。

 

道中、ウメからウスキへ向かう兵たちに追い抜かれた。

聖具を担いでいる私たちへ、手伝おうと申し出てくれたが、鄭重に礼だけ言う。

それよりノヅを経由するならダミヤンというイルマンに、私たちが着くまでそこにいてくれと伝えてほしい。そうお願いして、行ってもらった。

 

民家を見つけては立ち寄り、水を飲ませてもらったり休ませてもらったりしながら、話を聞く。

エウロパ人で日本語を流暢に話す私は田舎では珍しがられるので、セスペデスや並の日本人よりも却って警戒されない。お礼にアニュス・デイのひとつも置いていけば喜ばれる。

真の目的は情報蒐集。

農民たちの間にブンゴ軍壊滅という大事がどのような噂となって広がっているものか。その感触をつかんでおきたかった。

ヨシムネ王も気にしていた通り、デウスのせいだ、とする論調が今後爆発的な圧力となって我々に襲いかかってくることが懸念される。そうなってからでは、我々が気安く井戸水を飲ませてほしいとお願いすることすら、困難になろう。

今のところ、ヒュウガの南で大きな戦闘があり死者が多数出たらしい、という噂ですんでいる。

傷ついた兵が何人も街道を戻ってゆくからな。それは、ごまかせない。

兵士とて、退却中は口が重くなるものだ。私たちにだって戦局はよくわからない。教えてももらえない。

 

休ませてもらったら、礼を言って、また歩き始める。

セスペデスも独自に分析をしている。彼はポルトガル語に通じておらず、私もカスティリヤ語はわからない。なのでお互いの会話はラテン語と日本語が混じり合った奇妙なものになるのだが、これでなかなかどうして議論が弾む。

ミヤコへ行けば、君とニエッキも同じような方法で対話するようになるだろう。しっかり議論して、たっぷり報告をよこしてくれ。たのしみにしている。

 

 

2日かけてノヅに着いた。すでにカブラルとアルメイダも到着していて、我々を待っていた。さっそく報告の交換を行い、対策会議を始める。

 

「タカ城を攻囲したブンゴ軍には、各地の寄せ集めが無秩序に混じりこみすぎていた。

そのうち信徒が2割ほどとして、ニワカ洗礼した者を除くなら、戦争を理解していた者はほんの一握りだ。

敵襲前夜、篝火の下で兵たちは川魚を焼き、酒宴にふけっていたそうな。たかが数名の暗殺者に恐れおののき、一目散に逃げ惑い、数万の兵力を一夜で失った。

それもこれも、未だ洗礼すらしておらぬ、若王の人望の無さに起因する。嘆かわしい。大いに嘆かわしい」

 

私は反論をしなかった。聴いているのも辛かったが、黙って耐え忍んだ。

 

「ドン・フランシスコはムシカを放棄する決断をした。

1000年の都となるべき土地が、一瞬で儚く潰えた。この損失がどれほど大きいか。

私の臓腑も煮えくり返り、身を切られるより辛い思いだ。

わかるか、フロイス。おまえにも原因はあるのだぞ」

 

申し訳ありません。ただただ、面目ございません。

 

「設置したばかりのフランキ炮も、置いていかざるを得なかった。装填筒を破壊してきたから敵に使われるおそれはなかろうが、我々の力を示す象徴をこんなことで失うとはな。日本中が我々を嘲笑しておろう。

エウロパやゴアには報告できん、絶対にな。

いずれ、もっと大きな戦いで華々しく役目を終わらせることが必要だ。

これはおまえの仕事となる。今のうちに考えておけ」

 

はい。わかりました。

 

カブラルの憤りは鎮まる気配を見せなかったが、さすがに声が大きすぎますと注意を促すことで、多少は抑えさせた。ポルトガル語だからといっても、別室のダミヤンやその他イルマンには意味がわかる者もいるのだ。日本の家屋は音が筒抜けなので、どうかお静かに、と。

それでもカブラルは怒鳴り続けるのだった。

セスペデスは一語もわからないという顔をして座っていた。

ちぇ。こういうところは、要領がいいなと思う。

 

アルメイダはムシカでも一等地の邸を与えられ、療養しながら宣教をする予定だったが、今回避難するに際し駄馬に乗って悪路をひた走ったのが原因で、完全に腰をやられた。

寝たきりのままカブラルの罵声を聞き続けて、耳までおかしくなったと弱々しい声で私に囁いてから、就寝した。

おつかれさま。ゆっくり休んでください。

 

ブンゴ父王ドン・フランシスコはカブラルと共にノヅまで来て、いま、今後の身の処し方について検討を重ねているところだ。

あくまでカブラルに言わせるとであるが、ヨシムネ王はひ弱な駄々っ子で、おまけに色キチガイで節操がない御曹子。ただ、これがブンゴ王室の中では多数派の見解なのらしい。

私には反駁も可能なので忿懣やるかたないが。ひとまずそんな風に考えている勢力が一定数いるということを認めた上で、話を進めよう。

 

ブンゴ王としての指揮権が、父から子へ完全に移譲されたとは言い難い。

とはいえ責任の所在といえばヨシムネ王に帰せられるのが当然だし、タカ城の敗北については、たしかにヨシムネ王のもとで決定された作戦だったのである。

ゆえに、ブンゴ軍を滅ぼした王としてヨシムネ殿は帰国後、間断ない追及に甘んじねばならないだろう。

生きて帰ってほしいものだが、帰ってきても待つものは自国民からの集中炮火である。

 

ナタは必ず、ヨシムネ王がデウスに導かれていたことを糾弾し、我々ごと葬り去ろうと画策する。

このときドン・フランシスコもまた、非難の的とされ、棄教を迫られるだろう。

ナタは王の元妻として、愛もないくせに泣き落としで同情票を掻き集めるに違いない。そこまで考えて、ドン・フランシスコをどう動かせるべきなのか。

これが問題だ。

 

今のところは、以上である。私は疲れ果てた。泥のように眠らせてくれ。なんならこのまま目を覚まさず、まっすぐパライゾへ行ってもいいぞ。

おやすみ。

 

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