戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1578/016.hmos

異様なまでの冷え込みが続く。

 

雪の量は例年とさほど違わないというが、寒さは格別で、体の芯から凍りつく。

我々はしばらくノヅに滞在して、善後策を検討した。

 

ここで地元の頭領レアンに大いに助けられることとなった。

夏にダミヤンが洗礼を授けた人物である。

家族、親族、召使、その他含めて数十人を束ねる家長であり、きわめて聡明で思慮深い。

邪宗の偶像を焼き棄てる際にも全員を集めて時間をかけて説明し、穏便な形で万事進める律儀な性格を有していた。

たちまちその村全体が信徒となって、初めての降誕祭を前に盛り上がっている。

今後の大切な拠点であるから、ダミヤンともう何人かを、ここへ置いていこう。

我々はこの砦を失うわけにはいかない。

 

レアンほど慎重な信徒は稀で、シモでは特に、なりたて信徒が坊主たちと悶着を起こす。

キナイでは坊主勢力が強すぎるからもう少し控えめにするものだが、要するにシモの坊主は、舐めやすいのである。

私たちは赦しを与えた後などで、仏像でも経文でも何かひとつ火にくべなさいと簡単な宿題を出すのが常だが、シモではいきなりこれが、大寺院への放火という形で達成されたりする。

うまくやればそれも構わないしむしろ大快挙なのだが、やった奴はすぐ自慢して報告に訪れるし、他の信徒にも吹聴するのだ。

誤解があったようですと我々は説明をするが、坊主にはこれが理解できない。

防火対策は自助努力なのにね。

 

そんな経験を積んでいるから、レアンの律儀さは本当にありがたいのである。

こんな日本人ばかりだったら、どれほど楽だろう。

 

楽でない土地ウスキから、偵察に行かせた日本人が戻ってきた。

すでに信徒たちが容赦ない迫害にさらされている。

教会はモンテが守ってくれているが、私も早く向かわねばならんな。しかし、カブラルがなかなか許可をくれない。

 

カブラルは、ドン・フランシスコの身を案じている。

カブラルにとっては彼の保護が何よりも優先される。

ウスキへ戻るのはやはり危険だという判断から、その手前にある、ツクミという町に新たな邸を構える方向で話が進んでいるようだ。

ドン・フランシスコは、自らの信仰心が足りなかったこと、息子が大失態をやらかしたこと、デウスの使徒たる私たちへ多大なる迷惑をかけてしまったことを、毎日、ただひたすら詫びて過ごしている。

しかし時折、こうも言う。

 

「デウスは、甚だしい不信心者だけを処罰されたはずであるから、むしろ今後の布教はやりやすくなるのではありませんか、カブラル殿」と。

 

かなり情緒不安定なようだ。

私には、ヨシムネ殿の方がずっと王としての自覚にすぐれ、立派だったと思えるのであるが。

生きて戻ってきていただきたい。心から、それを願う。

 

奇妙な報告が、ひとつ入った。

チカカタが、タカ城攻囲作戦の現地指揮官を任じられ最前線に出ていたらしいのだが、彼の部隊はほぼ全員が無傷のまま、すでにウスキまで撤退を完了したという。

タワラ・チカカタ。

シマン・ショーノシローの養父だった男。

シマンの信仰をあらゆる手を尽くして妨害した。昨年春にシマンが教会へ庇護を求めてきたときは兵を出動させ、我々を包囲するという暴挙に出た、あの男だ。

 

最前線にいて、死んでないって?

兵力温存して帰ってきたって?

怪しすぎるぞ。

そして今、姉妹のナタとがっちり組んで、すべての責任を我々宣教師へ押しつけようとする姑息な流言飛語を撒き散らしている噂まで、聞こえてきている。

 

すべてをチカカタの陰謀だったとするには無理がある。ブンゴ軍の壊滅など、奴にとっても痛恨事だからだ。

サツマと通じていたのならブンゴまで戻ってくるわけもなし。

だが、いち早く敵襲を察し安全な避難経路を確保しておくほどに用意周到だった、くらいのことは言えそうだ。

そして今更だがデウスに真っ向逆らう態度を決めたわけか。国家の危機的混乱に乗じて。

 

「ドン・フランシスコとドナ・ユリアは、ツクミに移り住む。手頃な邸が見つかった。

当面その一角を教会とする。私はそこで降誕祭を執り行い、灰の日までにはウスキ、フナイを巡視する。

アルメイダはノヅで静養しろ。セスペデスは、とっととミヤコへ行け。

フロイス、おまえはウスキとフナイ、それから国内各地の信徒たちの動向をつぶさに監視して報告をよこせ。こまめにな。

チカカタの動きにはとくに警戒しろ。奴はすでにフナイ政庁の実権を掌握した。

若王が戻ってきたところで、立場は逆転せん。傀儡として迎え、同盟国へ謝罪して回る役を押しつけ、その間、更なる地固めをするつもりだろう。

いいか、隙あらばチカカタの軍勢はいつでも教会を破壊しにくる。油断せず、心して動け。

デウスを失望させるなよ。解散!」

 

カブラルの号令のもと、われらは一目散に駆け出した。

 

「パードレ・フロイス。私はウスキからミヤコへ向かいます。

今までありがとう。あなたは最高の教師だった。

私はあなた宛てに、こまめに報告を送りたい。

あなたになら理解できるようにだけ、心がけて書こう。

あなたがそれを最善の形で役立てるままに任せる。お互い、いのち、だいじに。

デウスの祝福あらんことを」

 

こちらこそ、ありがとう、セスペデス。

なにより勇気をもらえる言葉だ。いのち、だいじに。

だがキナイの戦乱は、シモの比じゃないぜ。あっちには、もっともっと邪悪な連中がひしめいている。油断するなよ。

 

ウスキの教会は、家を追われた信徒たちでごった返していた。

ナタとチカカタのお膝元であるこの町では、デウスの信徒とはすなわち国家反逆罪の一味なのだ。

多くの信徒が棄教し、邪宗に絶対服従を誓った。しかし真理を解する者たちが、すべてを奪われながらも、教会を頼ってここにいる。

その瞳は輝きに満ちており、パライゾへの道を踏み外すまいと、固い決意に貫かれている。

そのアニマを守ることは、私たち宣教師の絶対の使命だ。

 

さあ、降誕祭を始めよう。

私たちの絆をひとつに寄り添わせる、最高の一夜にしよう。

 

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