戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1579/006.hmos

ニエッキめ。余計なことを書きやがって。

結局、丸くおさまったということではないか。

 

タカツキの信徒と教会は守られた。ジュスト殿はアラキとの関係を断ち、ダリオ殿とその孫たちも、ひとまずは無事。サクマ軍は完全なる状態でアリオカまで進軍できる。

すべてジュスト殿が考えた作戦だ。さすがは智将。

それに比べてニエッキ、おまえはいったい何をやっている。

 

カヅサ殿が短気なのは昔からである。

言うことを聞かなければこの場で殺すぞ、など私だって幾度も言われたことがある。

しかし実際にやったことはない。ただの芝居だ。真にせまった、鬼のような演技だ。

そのくらい、わかれ。

 

ステファノーニをテラに監禁というのも、想像するだけで笑ってしまう。

我々の牢獄に比べたら、テラなど子供の遊び場だ。むしろ、いい経験になったと思う。ニエッキも一度肝試しのつもりで泊まってみたらよい。

おまえは、まだまだちっとも、カヅサ殿の優しさをわかっちゃいないのだ。

 

私とは違う理由から、カブラルもまた、この書翰にはカンカンだった。

どこがインディア管区全体の問題であるか。純然たる日本の国内問題、しかもキナイでの布教活動に限定した騒動の顛末に過ぎないではないか。

以下、イタリヤ人への罵詈雑言が、ひとしきり続く。

こんな奴らだからロムルス帝国などをつくりあげて勝手に滅び去ったのだぞと。

矛先はニエッキとステファノーニだけではなく、巡察師ヴァリニャーノへも向けられた。いつものことなので、私は黙って聞き流した。

 

昨年来日すると思われていて来なかった、巡察師一行。

今年は、来るかな。そろそろ来なければおかしかろう。そんなわけで、カブラルは今年も、早めにナンガサキへ向かう。

いよいよ大決戦の幕が開けるか。

私は、どちらに就くべきか?

カブラルは私が中庸を弁えていることを承知しており、あまり居丈高に絡んでこない。

ただブンゴ国の上長であるからにはしっかりと留守居役を務めねばならないから、そのための心構えを滔々と諭された。

とりわけ、ドン・フランシスコから目を離さず、彼の精神的な支えとなるよう仰せつかった。

了解です。行ってらっしゃい。

 

ドン・フランシスコか。

今日は、彼について語ってみるとしよう。

 

 

ブンゴ王。その高名は、ラウマにまで届いている。昨年、やっと受洗した。

昨年カブラルがナンガサキへ行っていた間、かなり情緒不安定だったので、よく宥めた。彼は正しい情報を得ることが困難な境遇に置かれているためか精神的に弱くなっていて、何事にも自信を持てず、ただひたすらにデウスへ祈るしかない。そんな老人なのである。

ヒュウガの敗戦以来、寝ていない時間のすべてを祈禱に費やし、食事を摂らない日も多いと聞く。

カブラルがそのように仕向けて調教したので当然の結果なのだが、それにしてもかわいそうだなと思わなくもない。

 

もちろん、信徒としては理想的だともいえる。

資産も持っており、それを社会のために奉仕することが正しい行いなのだと教えこまれているから、コンパニヤの運営をたすける意味でも大事に扱うべき存在だ。

可能な限り長生きしてもらいたいし、それは巡察師にも異存のないところであろう。

 

コンパニヤにとって、彼を意のままに操れることの価値は計り知れない。

ドン・フランシスコとジュリヤが暮らすツクミは小さな町だが、住民はほぼ信徒で固めてある。王を棄教させてハチマンや仏宗の手に取り戻そうとする勢力はまだまだ多くて、四六時中コンフラリヤが王の邸を警戒している。怪しい者がうろついていれば、たちどころにかれらが声をかける。

 

王はヂシピリナを好む。ひたすら、打たれる側だ。邸の一室はそれ専用に宛てられていて、天井まで血が滲んでいるという。音は昼でも夜でも聞こえてくることがあるらしい。

やりすぎは毒だから止めさせたいところだけど、私はそこまで知ってないことになっているから、悩ましいね。

 

ドン・フランシスコと直接、カヅサ殿について話をしたことがある。

カブラルの前でカヅサ殿を讃美することは厳禁だから、私は王もカヅサ殿を尊敬していることを知り、嬉しく思った。彼にとっても同じだったようだ。

カヅサ殿のキナイ平定について、それがいかに困難な目標か、根強い反対勢力を最後まで駆逐することがどれほど難しいかということを、領主としての立場で洞察していた。もっと語り合っておけばよかった。ブンゴ軍が存亡の危機を迎えている現在、そんな話は彼をより苦しめることにしかならない。

 

ブンゴとアキは、昔から争っていた旧敵同士である。

カヅサ軍がアキ国と交戦している背後から、ブンゴもアキ国へ攻め入る。これは双方に利があることだ。当時、ドン・フランシスコはこれに同意してくれた。

しかし、元クボウの扱いについては私と意見が異なった。

ブンゴ国は、元クボウに弓を向けられない。大義名分が成立しなくなるのだ。

 

元クボウをアキ国から追い出せれば、ブンゴがアキを攻める口実は作れる。だがこの場合、アキ国がカヅサ殿と争う理由も弱くなる。

アキ国がまだまだ余力を持っているうちは、この状況は変化しないだろう。そこでまずはヒュウガを攻め、サツマを手に入れてからにしようという方向へと至ったわけだ。今にして思えば。

 

そういえば、カヅサ殿がサツマに連絡員を置いているとか言っていたような記憶がある。

サツマもまた、ブンゴと長年敵対関係にある。今はすっかり形勢逆転。ブンゴを倒しかねない勢力に成長してしまった。

カヅサ殿がもしや、サツマに援助でもしたのだろうか?

しかし。アキ国と戦っている今、シモの秩序を混乱させることでカヅサ殿に得るものがあるとは思えないのである。考えすぎか。私がブンゴを動かそうとしていることは承知のはずだし。

いやしかし、ニエッキが余計なことを言っていたりしないか。

あるいは私に揺さぶりをかけようとして、悪い方向へ滑りすぎたとか、そんな可能性だって考えられないか。

 

気になってきた。もしカヅサ殿がサツマ国に手を差しのべたのだとすると、ブンゴ国と同盟する戦略もとりづらくなろう。

ブンゴ上長である身としては歓迎したくない展開であるが、心構えだけはしておくべきかもしれない。

 

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