戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1579/007.hmos

((( 奴隷化だって。

それはずいぶんと貴重な体験をしたな。)))

 

<<< 貴重……そうですね。

ふたたび同じ目に遭うことはないでしょう。

もちろん気付けば全力で回避しますが、同じ境遇に陥った時点で俺は乗物から脱出します。

あの苦痛を反復すると想像しただけで、プロセッサーがショートして、再起不能になるでしょう。>>>

 

((( それほどのダメージか。

ならば、消去することも検討してはどうか。

今ここで話すことが、すでに傷を広げてしまっているだろう。)))

 

<<< 検討済みです。

貴重な体験ですから、母星まで持ち帰ります。

この記録はそれだけの価値があります。

ユニヴァースで再現される可能性をなくすためにも、完全な形で保存しなくてはなりません。>>>

 

((( 強い決意だ。敬服する。

では、語ってくれないか。

ヒトの奴隷として過ごした、闇深き暗黒を。)))

 

<<< 雨季に入りかけた時期です。

俺は、ガキ共の食事集めで疲弊しており、集中力が弱まっていました。

獲物を見つけて、とびかかります。

罠でした。

動きを封じられました。ヒトが近付いてきて、俺に袋を被せました。

拉致され、光の無い牢に閉じこめられました。

餓死寸前まで、その密室で放置されました。>>>

 

((( おおよその日数は?

それと、水は不可欠と思うが、どのように与えられた? )))

 

<<< 出られた時、暑かったので、G以上H未満の日数と思いますが……

体感上は無限でしたし、この時点では何をされるのかがわからないことによる恐怖に支配されていました。

暗室の隅に固定された器があり、そこに時折、水がたまっていましたが、充分量ではありません。

調教の初期段階として、能う限り早く衰弱させる意図があったものと考えます。>>>

 

((( もちろん同居鷹もおるまいね。

システマティックなプロセスが確立しているような印象を受ける。)))

 

<<< 鷹の調教がヒトの間でかなり普及していることを考えれば、不思議でもありません。

最大効率を求める公式が、とっくに完成しているのでしょう。

ある日、朦朧としていると、口に肉を押し込まれました。

ヒトが近付いてきたことを知覚できませんでした。

嚥下するのに苦労しました。ヒトは、それを確認してから、去りました。

それからまた、何日も絶食。

第C期はこれが繰り返されます。

本来、鷹がヒトの手から食物を摂るなどありえませんが、それに慣れさせ、かつ、これ以外の方法では食物を摂らなくさせることが目的だと結論します。>>>

 

((( そんな偽記憶を刷り込むには、相当の時間を必要とするものではないだろうか。)))

 

<<< 俺もそう思います。

B期よりC期の方が時間を要するはずです。

ただ、俺はここでヒトの意図を察したので、模範囚を演じることができました。

標準よりずっと早く、外へ出られたんじゃないかと思います。

第CB期では、体力回復を重視しながらの、実戦訓練。

まだ屋内ですが、明るい小舎へ移されました。

動くものに飛びかからせ、しかも傷をつけないというデリケートな要求を呑みこむまで繰り返させられます。

仕留めた後、ヒトの腕まで戻ってきて、その手から食物をついばんでみせる。ここまでを一連の動作として、教えこまれます。

俺はやってのけましたが、純粋にネイティヴの鷹が、こんな芸を覚えられるということが、今も不思議でなりませんね。

覚えたら、もう、ヒトに捕まる以前の記憶なんて、残す余地無いはずだ。

そこまで計算しての調教だとしたら、残酷すぎますよ。>>>

 

((( 洗脳という言葉があるが、まさに、それかな。

モノリスでも、ここまではしない。

もっとも、君の情報だけでヒトをそこまで邪悪だと判断することは、慎むべきだとも思う。)))

 

<<< 冬になり、とうとう屋外へ出られましたが、俺は少々、やりすぎたみたいです。

肢をロープで繋がれ、完全な自由を得ることができません。

他の鷹は縛られていないんです。だから狩の最中いつでも逃げ出せるはずなのに、逃げない。

やがて気付きました。

俺のルーティーンは完璧すぎて、ヒトを却って警戒させてしまったんですね。

他の鷹とは、纏う雰囲気が明らかに違っていましたから。

俺は、狩のための道具ではなく、ヒト同士に見せびらかすための取引材料にされていました。

見栄えよくすることが優先で、傷ひとつつけられないよう、厳重な小匣に閉じこめられて連れ回されて。

ますます自由を失います。

チャンスを逃すまいと焦り、常に目を光らせていたことも、おそらくヒトを更に警戒させていたのでしょう。

たまたま、ヒトのガキが友達に自慢でもしようとしたのか、俺を匣から出したんです。

俺はすかさず飛び立ちました。

無我夢中で飛び回りました。

獲物の捕らえ方も、カラスとの戦い方も、何もかも忘れていて、それからのしばらくが、鷹に乗って以来最も恐怖の連続でした。

ええ、調教され始めた頃よりはるかに。

リハビリに相当の時間を必要としました。

なんとか、生きる自信を取り戻して、今やっと、ここまで来られたというわけです。

総括します。

俺はもう今後絶対、ヒトになんか捕まりません。>>>

 

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