戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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待降節を迎えてすぐ、カリオンはアルメイダを連れてアリマへと旅立った。

 

順調にいけば2人とも来夏、パードレとなって戻ってくる。日本布教区の戦力は倍増だ。これまでカブラルが頑として禁じていたことがどんどん解放され、好い方向へと改められている。

巡察師は、ついに来たるべくして訪れた私たちの指導者だ。そんな思いを強くする。

 

カリオンが発つ直前まで、我々は年次報告の作成に大わらわだった。

これからは信徒の数を領国・地域別に、より詳細に記録し提出することが求められる。

しかしこれが判然としない。推量の域を出ないのだ。ミヤコ周辺ではさらにわからなくなる。

ニエッキが報告するままの人数を書けば、日本人口以上の信徒がすでにいることになってしまうではないか。そこをできる限り真実に即しつつ、来年度以降も不自然な増加にならないよう見極めながら、数字を算出する。この作業が想像以上に難しかった。

 

ブンゴ国内の信徒は2千人。

シモの他地域については、カリオンがアリマへ戻ってから書き加える。

キナイ全体では15千人。うち8千人はタカツキの領民だ。

サンガには4千人。ほか、こまごまと続く。

ミヤコ内は3千人程度だが、坊主の街だからやむをえまい。思えばヴィレラの時代から、我々はよくここまで戦い抜いてきたものだ。

 

カミ島に含まれる53領国のうち、カヅサ殿が支配しているのは25から30。

アキ国を中心とした西域の勢力は12領国ほど。これを今じわじわと削り取りながら、カヅサ殿は統一政権の社会整備を推し進めている。

永年手こずらされたカンガとオーザカもそろそろ片付く。民衆を苦しめていた戦乱の時代が終了するのは、もう、まもなくなのだ。

 

 

セスペデスからの最新情報が面白い。

ニエッキはアラキ謀反の騒動でカヅサ殿からジュスト殿への交渉を命じられたが、このとき失敗したら殺すと迫られ、一転してカヅサ殿を悪魔とまで罵るに至った。

しかしどうやらカヅサ殿も、言い過ぎたかなと反省されたようである。

ニエッキはミヤコの陣に呼ばれ、アヅチに教会用地を寄進しようとの申し出を受ける。破格の好待遇で、城下町の一等地。面積もブンゴ教会を上回る広さだ。

ニエッキは当然この贈物を受け取るが、それでもなお疑心暗鬼を拭えないでいる。カヅサ殿は何を企んでいるのかと妄言を吐き散らかしている。愚かなことだ。

セスペデスは冷静に、そんなニエッキの観察記録を送ってくる。所見付きで。

 

ミヤコの人事を改革すべき時だと思う。

ニエッキは日本語を得意とし、信徒たちからの人気がきわめて高い。常に陽気に振る舞い、コンヒサンのあとは信徒を大いに元気づけて帰す。庶民に寄り添っているから余計、為政者側に厳しいのかなと思ったりもする。その得意分野はこれからも活かしてもらいたいが、領主との政治交渉に不向きだとするならば、上長にしておくのは不適当だ。

 

パードレ・ステファノーニは、74年来日。私と交代して76年の暮れよりミヤコに着任した。

カブラルの言いつけに従い、日本人との接触をずっと避けてきた。日本語も話せないし、ミヤコへ行ってからも、あまり改善はしていないようだ。ニエッキがなんでも自分から動く性格なので、余計にステファノーニは裏方に回る。

君もパードレなのだから、それではいかんのだよ。

 

3人目のパードレであるセスペデスは、ミヤコの言葉にも慣れてきて、先輩2人の至らぬ点を埋める形で管区のあちこちへよく出張している。

身が軽く、冷静沈着。報告も手際よい。

野心も虚栄心も持たない。というより、好まないのだろう。

出世すれば面倒事を押しつけられる。それよりは知識だけつけ、自分の手札を増やしておこうと考える性格のようだ。私より要領がいいな。

ともあれセスペデス自身による適確な感想を加えた種々の報告に、私は大いに助けられている。

 

続いて、ブンゴ事情。

北部戦線でヨシムネ公が謀反者アキヅキと戦っている。

秋中頃までチカヒロ殿が共に戦ってくれていたが、亡くなった。その息子が跡を継いだ。

ここで少々ヨシムネ公との関係がこじれる。

大恩人チカヒロ殿の息子へ、頭が上がらぬという心情も理解できよう。既にヨシムネ公の方が経験値も兵からの信頼度も上なのだが、世間一般の評価がまだまだ厳しい。

このぎくしゃくした関係が原因でアキヅキに出し抜かれたことも多く、鎮圧までにはまだ時間がかかりそうだ。

 

そして、スコ。

ブンゴの西、アリマの北に位置するここの野蛮人たちが、巡察師の軍事援助によりアリマ方面から撤退しつつある。

それはそれでいいことなのだが、次は東のブンゴ国へその矛先が向いた。

ブンゴ国西辺の峠には老臣ヘツキ殿が強固な防衛線を構築していたが、スコの全軍に押し寄せられては、適わない。

 

フナイに陣取るチカカタの兵が、ヨシムネ公には味方しないがヘツキ殿の応援には駆けつけた。しかしまったく戦力にならず、ヘツキ殿は全滅するくらいならとスコとの交渉を始める。

厳しい条件はつけられようが、それでもブンゴ国内へ攻めこまれるのだけは回避しようという苦汁の選択だ。

巡察師がもっとアリマの尻を叩いてスコを一気に滅ぼしてくれれば、ブンゴも救われるのだが。なかなか思うようにはいかないな。

 

 

例年カブラルは冬になればブンゴへ戻るのだが、今年はずっとナンガサキにいる。

アリマで指揮を執る巡察師を監視しながら、ナンガサキの商人たちとのつきあいを精算するのに忙しいみたいだ。

巡察師はカブラルを日本から異動させると内外へ通告した。これまでカブラルありきだった商慣習が、大変革を求められる。現場ではさぞや、てんやわんやだろう。

 

アルメイダを筆頭に、これまでカブラルの下で昇進を阻まれていた宣教師も大勢、巡察師側に靡いている。

思っていたより流れの速い、大きな変化だ。

私も難破しないようしっかりと方角を見定め、この嵐を乗り切ろう。

 

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