戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1580/004.hmos

80年の復活祭は春遅めではあったが、それでもまだまだ風が冷たい。

 

枝の祝日を迎える前に備蓄の食糧が尽き、どうしようかと途方に暮れたが、ドン・フランシスコから差し入れを頂いて、信徒たちを悲しませることなく聖体拝領を行うことができた。

フナイの豚や牛もやせ衰えており、墓地に群がるカラスだけが元気いっぱいだ。

ああ、早く戦争が終わってほしい。

 

アリマ王がついに受洗した。

霊名は、ドン・プロタジオ。

聖プロタジオの祝日はもう少し先なのだが、日付に因んだわけでもないのかな。

婚約者の件がどう結着したかは書かれていないが、厳冬の中、領内のテラや坊主どもの居宅をことごとく解体し人々に温もりを提供したということなので、とりあえずはめでたい。

そして迎える復活祭。アリマは祝祭の準備で大わらわ。

かつてない規模の盛大な行進を予定している。というところまでが綴られている。

いいなあ。と思う反面、朝から晩まで洗礼にコンヒサンにと駆り出される宣教師はたまったものではないな、とも考える。

できれば私は、静かに資料整理と執筆だけをしていたいものなのだが。そんなわがままも、許されまいな。

 

シモの現況を、ひとまず整理しておこう。

 

国境は日々動いているが、中心地は今もブンゴだ。

かつてその支配下にあった5領国が一斉に襲いかかってきたら、消滅するかもしれない。しかし、まだ、耐えている。そうならないうちに北のアキヅキを倒し、西のスコを押しとどめるのが戦略だ。

いかにスコとて、ブンゴとアリマとの挟撃に耐え抜けるものか。かつて一度たりとデウスを受け容れたことのない、坊主に跪く山猿の集団。鉄炮だって持っていない。我々が力を合わせれば、必ずや殲滅できよう。

 

島の南方には、サツマが控える。

今や広大な土地を支配下に置き、知恵も働く厄介な敵だ。

デウスの布教を認めるから定航船をよこしてほしいと露骨な拝金主義を隠しもしないで交渉を繰り返している、鼻持ちならない連中。

こんなやつらに、ブンゴ軍は潰滅させられた。あの屈辱は忘れまい。次こそ、我々がおまえたちを叩きつぶす。

念仏を唱えながら、待っていろ。

 

サツマ絡みでは、たびたび気になる話題が出る。

オタ・カヅサ・ノブナンガがサツマと接触をとっている、もし軍事同盟を結ばれると危険だぞ、というものだ。

以前から流れていた噂ではあるが、最近かなり頻繁に聞くので、耳障りでしょうがない。

ありえない。だがしかし。

そんな葛藤とも戦いながら、私は反証を求めて調べるのだ。それぞれの領国がどう結びついているものかを。

 

日本全土を66領国に分割するという発想は、何百年も昔、ダイリが絶対的権力を持っていた時代に生まれた。

このとき、ミヤコの中央政府によって各領国を治める66人の王が任命された。

以後は代々その子孫が各地の政務を司った。

この体制が、時代とともに、ガタガタに崩れてゆく。ダイリも落ちぶれたし、領国を維持できなくなった家系は別の一族にとって代わられたりカンガ国のように坊主に乗っ取られたりもした。

古くからの王権を保持している領国では、今もミヤコへ使者を送り続け、ダイリとの付き合いを止めていない。ダイリは貢物を受け取り、その領国の王権を承認し、許可証を更新してやる。

ブンゴ王は代々これを欠かさずやっているが、サツマもまた負けず劣らず熱心に、ミヤコ詣でを続けている国であるらしい。サツマが弱小だった時代でも倒されずにすんでいた理由のひとつは、これであった。

 

カヅサ殿は、かつてダイリがオーザカに与えた権力よりも大きな官位を手に入れた。オーザカの主張する大義名分は相対的に弱くなり、あとは武力による結着をつければよい段階まで進んだ。

こんな政治的な戦術まで駆使できるところが、カヅサ殿の真の実力なのである。

しかも役立たずの取り巻き連中であるクゲ共にまで、何らかの仕事を与えてやらねばという、優しさも持つ。

私は巡察師の前で、あらためて提案しよう。カミ島の統一にはカヅサ殿が最適任であり、コンパニヤは全力を挙げてカヅサ殿を支援するべきであると。カヅサ殿が最後の敵を屠った瞬間、日本は御主の楽園になる道を拓くのですと。そう力強く。

 

カヅサ殿の眼中に、もともとシモは入っていなかった。

私は来日後アジュダ、フィラドなど各地で刺激的な日々を過ごした話をカヅサ殿に何度もしたものだが、カヅサ殿はまったく興味を示さなかった。位置関係なども、よく間違えていた。

エウロパの話ならば何度も聞きたがり、記憶も驚異的だったのに。

その落差をとても印象強く感じていた。

 

カヅサ殿がシモまで進出するなら、私が仲介できるブンゴと連帯して、それ以外を粉砕するというのが最も近道だ。むしろサツマと手を結ぶ可能性など、理由を考えつくのさえ困難である。

私は思い出そうとする。カヅサ殿から直接聞いた、あの日の話を。

サツマに連絡員がいるとは言っていたが、大して期待もしていない風だったんだよなあ。

そこで、考えた。

カヅサ殿は、アキ国を退治したあとで、ブンゴ国がサツマを倒すのに力を貸してくれるはずだ。

そのときのための情報蒐集を、すでに始めているのだ。サツマを調子に乗せておくが、同盟など結ぶつもりはない。ブンゴの情報は私が持っているから、それを補完するために、カヅサ殿はサツマを偵察しているのだ。

こう考えれば、見事にすべての辻褄が合う。

きっと、これが正解だ。私は納得する。

 

最後に、ヒゼン国概況。

オオムラ、アリマ、ゴトウ、フィラド。さらに半島の先端部と、多くの島々を合わせた地方。これらが一人の領主を掲げた時代は存在せず、ミヤコから見て強引にまとめた感が強い。

小領主の乱立状態こそが普通で、オオムラもアリマもとうてい主勢力とはいえない。経済的な一番手はフィラドで、最も軍事的に強いのはスコ、ということになるか。

泡沫勢力のイサハヤという坊主の町も、定期的にオオムラへ喧嘩をふっかけてくる。そんな小領主が無数にいて、いつまでも平和など訪れない。

 

ああ、早く戦争などなくなってほしい。

そして私は穏やかな陽射しの中で、静かに資料整理と執筆だけをしていたいものだ。

 

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