戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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定航船がやってきた。

今回も、ドン・フランシスコ経由の情報が一番早かった。

次いで続々と、商売をやっている信徒の口伝えで詳細が知れる。

旗艦はアリマ領コチノスへ入り、船団の半分はナンガサキに向かった。すべて巡察師の指図で動いている。

ヴァリニャーノはたった1年で、カブラルの築いたナンガサキの癒着構造を解体したのだ。

 

癒着がよろしくないことには理由がある。

カブラルはこれまでずっと、自分に忠実に尽くす商人にしか取引を許さなかった。

商談が素早く決まるという利点はあるが、これが続いていくと、太った者がひたすら太り続けて首も回せなくなり、痩せた者は更にどんどん痩せ衰えていく。そんな体制が硬直化してゆくものだ。

カヅサ殿がギフやアヅチで始めた改革の柱も、これだった。無産階級を退場させて風通しを良くし、働いた者が働いただけ報われる市場をつくりなおすのである。

私は感慨深く、彼の手際を注視する。

巡察師、あなたもデキる人だなと。

 

結局カブラルは1年間ブンゴへ戻ってこなかったが、今は精も根も尽き果てて、ボロボロなのではないだろうか。

それはさておき今年はアルメイダやミゲル・ヴァス、そして昨年一緒に年報を作成したフランシス・カリオンたちがパードレになって戻ってきた。たのもしいぞ。

そして、諸事を片付けたらいよいよ巡察師がブンゴへ乗りこんでくるだろう。今年こそ。

ドン・フランシスコの方がずっと緊張しているが、カウトリカの歴史に刻まれる感動的な対面とせねばならない。

私はその準備を司る責任者だから、大変なのだ。

情報を買うのに、カネなど惜しんでいられない。

巡察師がヒゼンを出立したら、いの一番に教えておくれ。

 

 

先月、アリマにセミナリヨがつくられた。

セミナリヨは、日本では初めてなので説明が必要かな。

主に十代の少年たちを寄宿させ、規律正しい生活習慣を身につけさせる。聖マリヤの時刻から瞑想を始め、祈りを捧げ、聖体を拝領する。授業ではラテン語、音楽、教義を中心に学ぶ。それから、霊操。イエズスのコンパニヤでは最も大切な日課である。就学期間は基本5年。従僕から始めるよりずと早くイルマンになれる。費用は全額コンパニヤが負担する。

もちろん適格者しか入れない。第一期生は20名ほど。高貴な家庭の子弟が集められたそうだ。皆、青い制服に身を包んで、なんとも派手やかだったという。

 

カブラルの時代には考えられなかったことだ。

 

日本人への期待感がこれほどまでに高いことも驚くが、それだけの予算が賄えるというのも信じられない。

巡察師はポルトガル王室から一体どれだけの決済権を与えられているのだろうか。空恐ろしくなってくる。

 

驚くといえば、日本人の誰も彼もが驚いたと語りたがる名物がある。

カフルだ。

アリマは今年、観光名所としても有名になった。カフルを見て死ね。こんな合言葉も生まれた。

 

これまでも定航船では、荷運びにカフルが使われていて、日本人を珍しがらせていた。でも港より先へ入ることはなかったし、芸もさせなかった。

むしろ2人以上を一緒にしてはならないと船員たちは常に気をつけて扱っており、作業が終わればすぐ船底へ戻らせた。カフルは暴れると手がつけられないからね。

ところが巡察師は昨年10人ほどのカフルを従えてきて、町なかに邸を一軒、かれらのために用意させた。

毎日シモ中から見物人が訪れる。カフルたちも慣れてくると庭で歌い踊って、日本人たちの喝采を浴びる。

主たる労役である荷運びのほか、冬の間は町じゅうの除雪もやらせていたと聞く。

カフルは今後の輸入品目としても有望だ、なんて誰かが言っていたけど、それはどうかな。かれらをそこまで手懐けるなんて難しいことだよ。

しかし巡察師にはできている。これも御主に愛されているがゆえなのか。

 

輸入品目の話ついでに、定航船団の扱う交易品について。

 

ポルトガル船は年に一往復、アマカウとシモの間を行き来する。

日本人の技術では、外洋を渡れる船舶は造れない。チイナ人は造れるが、野蛮な日本人を極端に恐れ、辛うじてアマカウでポルトガル人の同伴だった場合のみ出入りを許可している。

日本とチイナが、2者間だけで直接取引をすることはない。だから我々が必要とされる。

身も蓋もなく言えば、定航船はただ運んで競りにかけて利ザヤを稼いでるだけだ。それで莫大な利益を得られるのは、競合勢力がいないおかげだ。

チイナからは、サリートリと生糸が主な輸出品となる。

日本からは、銀と硫黄。あとはカタナがよく売れる。日本は武器大国だ。年がら年中、国内で殺し合いばかりやっているから。

カタナの評判はゴアにまで轟いている。ただ、当地では武器というより民芸品扱い。戦いは数で決まる。いくら接近戦では無敵でも、近寄ることさえできなければ武器とは呼べない。

 

大船を造る技術は、これからも日本人には身につかないだろう。だから我々にはまだ何世紀も、かれらを助けてあげる必要があるということだ。

 

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