戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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日本各地で、64年の復活祭が、無事執り行われた。

その報告を互いに交換し合ってるところだ。

 

一番安全なブンゴが集約拠点となり、そこで写本がつくられ、各布教地区へと送られる。

戦乱の国々をいくつも経由して、書翰は移動する。

意外にも領国をまたぐ通信体制は機能している。とくにブンゴ王の特別許可状は効果絶大だ。

フィラドの役人がタク島まで届けてくれる。

宛先は日本文字で、中にはぎっしりポルトガル語。

 

脱線をゆるしてほしい。まず、紙の話。

日本では紙が非常に安価で、手に入りやすい。

肉を食べないから羊皮紙はそもそも存在しないが、森林資源が豊富なせいか紙づくりは盛んだ。

おまけに質が良い。強度があって、インクがなじむ。

インクの原料は、木炭だ。

油も混ぜて塊にしておき、これを水で溶いて、筆につけて文字を書く。

日本語の書き文字は、話し言葉に輪を掛けてややこしく厄介なものだ。チイナから輸入した漢字が基礎となっていて、一文字一文字が独立して意味を持ち、形が複雑で種類も何千とある。

最低限でも数百個は覚えてからでないと、文字の読み書きなど始められない。

フェルナンデスですら、挫折した。1001個覚えたところで熱意が完全に途切れてしまったのだという。

私たちの屍を乗り越えた第二世代にその仕事はまかせるよ、なんて、たぶん本気で言っている。

 

文字について、もう少しだけ。

現代のエウロパではどこの国でも、おおむね20字から30字のアルファベットを組み合わせて、左から右へ、上から下へと書いていく。そんな言語しか知らない人も、多いだろう。

少し教養のある人は、カナン語やアラビア文字のような例外を知っている。

インディアからマラカあたりまで来たことのある人は、漢字に出くわす。

漢字は、上から下へ、右から左へ書いていく言語だ。

手が汚れるだろうって?もちろんだ。

だから筆を使って、紙に触れないようにして書いていく。まるで絵画さ。

その所作まで含めて、筆記術が学ばれ伝授されていく。

エウロパ人が考えているよりはるかに、インディアの人たちは文字を書くことそれ自体を、特別な技法であり軽はずみに始めてはいけないものだとさえ、強く思いこんでいる傾向がある。

 

頭に思い浮かぶまま、勢いにのってペンを走らせ、書いて書いて書きまくってなんぼじゃないかと考える私だが、それは決してエウロパ人の総意を代表していないとは思うけれども。

日本では、どうやら学問のある坊主ほど、私たちの書く姿を見て、文字も知らない田舎者といって嘲弄するらしいんだよね。

 

フェルナンデスが言っていた。

宗論の内容をその場で速記していると、うしろから見物している坊主どもが、ケタケタ、ニタニタ、邪魔をするんだそうだ。

一方、かれらは記録すらとらない。

だから宗論なんて、まじめに進みゃしないんだってさ。

 

長くなった。すまない。やっと本題に戻るよ。

ええと、各地の報告より。

 

まず、アリマ領タカセという土地で、シルヴァというイルマンが、天に召された。

来日して13年。過労が祟っていたのを、御主が憐れに思い、みもとに呼ばれたのだ。

パードレ・トルレスとイルマン・アルメイダが最期を看取り、ささやかな葬儀を司式した。

私は会う機会すら得られなかったが、共に日本で戦った同志として、彼の名を心に刻もう。アーメン。

 

私と一緒に来日したパードレ・モンテは現在ブンゴ地区の責任者だが、彼には似つかわしくない、鬱憤と愚痴に満ちあふれた報告を送ってきた。

 

ブンゴ王はコンパニヤに多大なる援助を与えてくれているが、坊主どもを積極的に抑えつけてくれているわけでもない。

信徒たちは日夜、根も葉も無い、身に覚えの無い罵詈雑言に心身を深く傷つけられている。教会は常に放火される恐怖と戦うため、交代で見張りを欠かせないのだという。

たとえばエウロパ人は人肉を喰らい血を啜るのだという、愚にもつかない噂がある。

ブンゴには孤児院もあるが、そもそも坊主どもが嬰児殺しを放置むしろ承認してきたのがおかしいだろうと声を大にして言いたい。

しかも私たちが子供を救うのを、太らせて喰うためだと中傷する。

復活祭ではこの孤児たちが、イルマン・サンチェス指導のもと最高の合唱と演奏で信徒たちの心を満たしてくれた。

それを聴いても尚、坊主どもは自分たちの怠慢と金権体質をなんら省みることなく、せせら嗤って念仏を唱える。

恥ずかしくないのかねえ。

 

君たちの言行はすべて私たちが記録し、世界に公表しておくからね。圧倒的物量で叩きのめしてやる。

せいぜい心を込めた美しい日本文字で反省文をしたためるように。いいね!

 

ミヤコのパードレ・ヴィレラからの報告は、ブンゴで要約されたものだった。まだ心の病がひどいのだろうか。

強い精神を持ち、若く壮健なパードレを派遣して援護すべきだとは誰もがわかっている。

しかし、人材がいない。

今年の夏は、誰か来てくれるだろうか。日本布教を共に戦う、勇敢なる同志がほしい。

 

最後に。ブンゴ王がなぜ強いのかについて、手懸りが得られた。

パードレ・モンテの報告によると、つい最近ブンゴ国北方で戦闘が起き、ブンゴ兵約1000のエスピンガルダ隊が活躍して敵を殲滅したらしい。

エスピンガルダが1000挺もあるのか?

まったく、驚いた。坊主どもに向けてくれたら一瞬で結着がつくのにと思わずにいられない。

 

……ああ、ひょっとすると、定航船のサリートリは、通常ほとんどがブンゴに納品されているのかもしれない。

あれは火薬の原料なんだ。

だから、ブンゴは強いのか。

 

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