戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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ウスキに新築の教会ができていた。ドン・フランシスコが我々の巡察中、突如思いついて命じたらしい。

そのためにミヤコから名工を呼び寄せ、とにかくびっくりさせたいから巡察師には戻るまで知らせないでくれとパードレ・ラグーナに懇願までしていた。

まったく。このおじいちゃんは、じっとしていられないのか。

 

「ドン・フランシスコからヂシピリナを取り上げることは、私にはできません。そこでせめて、柔らかく、刺激は与えるけれども肌を傷つけにくい工夫をした鞭をつくらせました。

これを用法・用量を守って使うことで、背徳感なく楽しんでもらおうとしたのです。

パードレたちも試していただけますか?」

 

ほう。これはいい。筋肉のコリがほぐれる感じがする。

他の土地でも、ヂシピリナはこれで行うよう広めてみるのはどうだろう。多く作ることによって頒価も安くできるならよいことだ。

 

新教会で、我々は荘厳なミサを行った。

続けてパードレ・フィゲイレドと私が盛式三誓願を授かる。63年に来日したとき私がパードレ・トルレスに授けた、あれだ。

私はコンパニヤの幹部となる資格を手に入れた。そして、同時に正式なる辞令として、日本布教長パードレ・コエリュの伴侶として補佐官ならびに通訳を務めよと申し渡される。赴任地は、日本の玄関口ナンガサキを拠点とすることになる見込みだ。

ついに、ナンガサキへ行く日がやってきたぞ。

活気のある町だという。毎日が事件の連続だともいう。

受けて立とう。

そういえば、ポルトガルに寄進されるという話でしたか。あれ、どうなりました?

 

「オオムラ領領主ドン・バルトロメウおよび息子ドン・サンチョの直筆による、ナンガサキ及びモギ地区の譲渡状は、ひとまず我々が預かり、ポルトガル王室へ届け審議を待つ。

コンパニヤが土地を直接所有することはできないから、王室より日本副王を任命していただくことにして、コンパニヤがこれを支援するという形になるだろう。日本へ辞令が届くのは、早くて6年後だ。それまでは暫定的な共同統治になるが、夏から冬にかけては定航船団長に街の防衛任務を委託する。

今まで以上に密接な連携をとってほしい。問題は定航船がいなくなる冬から夏にかけてだが、来年以降は駐留軍を常設できるように取り計らおう。町の治安維持も兼ねられるように。

それまでは布教長の責任において、信徒たちの安全を保障してほしい」

 

巡察師と側近たちは降誕祭と最終協議会を終えたら離日するが、ゴアへ戻る前にアマカウで必要な措置をとり、来夏の来航時にはそれを手配してくれるという。

ここで私は布教長の補佐官として、シモ西区の情勢を聞いておく。

 

半年留守にしている間、南からはサツマの侵攻が確認された。ナンガサキ、アリマを含む半島の南対岸にアマクサという群島がある。現在ここは実質的にサツマ領といってよい状況だ。

アマクサには5人ほどの小領主が乱立していた。そのうちのシキ領に、我々は教会を持っている。パードレ・トルレスが眠る聖地だ。

また、同じ島の中部カチウラ地域には小規模ながら信徒たちの集落があり、パードレ・アルメイダが駐在している。

 

アマクサの領主はどこも零細なので、サツマが攻めてくればひとたまりもない。そこで我先にと降伏した。

サツマは属国に対し、兵を出せ、食糧を送れ、上納金も払えと要求を突きつけてくるが、かつてならここに宣教師や信徒の追放も加えられていたであろう。

しかし数年前からサツマはコンパニヤと手を結びたがっている。

我々はサツマの目的が交易にしかないことを熟知しているから洗礼さえも徹底的に引き延ばす戦略をとっているが、さてこの状況で、サツマはアマクサの教界に対し、どんな態度で迫ってくるか。

追放ないし弾圧をすれば、これまでの苦労は水の泡だ。そこで、保護すると言ってきている。

移住は認めない。脱出も許さない。兵が常時監視をし、かれらが一方的に決めた生活範囲以外を悉く制限する。

いまアマクサの信徒はそんな圧迫の中で暮らしている。つまり、人質にされているのだ。

 

サツマがいかにデウスの教えを理解していないかを、またしても思い知らされているところなのだが。

まだまだアマクサは前哨戦にすぎない。やつらは今、対岸のアリマ領へ迫っている。アリマは北のスコを撃退したが、今度は南からの脅威にさらされているわけだ。

 

コチノスの定航船団が睨みをきかせているうちはいいが、来夏までの半年間、アリマそれからナンガサキを防衛せねばならない。これが新布教長に課せられた最初の大きな仕事だ。

灰燼に帰したファカタと同じ目に遭わせるわけにはいかない。頼みの綱は、ブンゴとの同盟。今年アキヅキを倒して名誉を回復し正式にブンゴ王へ返り咲いたヨシムネ公と連携して、スコとサツマの侵攻に歯止めをかけなくてはならぬ。

 

「スコに関しては、こんな情報が届いている。糠喜びせずに、聞いてくれ」

 

パードレ・メシヤが含みを持たせた言い方をする。

なんでもスコ王の息子が密使をよこしてきた。父親に内緒で。デウスの教えを聴きたいから宣教師を派遣してほしいという。

……父王はデウスを完全に敵視しているが、息子はそうでもない、ということですかね?うまくすれば、内部分裂を誘えるかもしれない。

 

「希望的観測をすれば、そうなるな。しかしドン・バルトロメウからの報告も聞け。

スコ王は裏切った家臣に対し赦すと呼びつけて宴席を設け、その場で全員を惨殺した実績を持つ。ドン・バルトロメウもスコに人質を差し出しているが、その人選は完全にスコ側の主導だったそうだ。

対スコ戦においては、オオムラもアリマも身内を人質にとられているが故、慎重になっていることを留意しておくべし。

よって今回は、スコ王の息子に対し、あなたの方が出向いてきてくれるなら、とお断りしておいた。

しかし、要請はまたくると思われる。その交渉も布教長の重要な務めとなる。

パードレ・フロイス。よく補佐してくれたまえ」

 

意外と知恵の回る、あくどい連中なんですねスコは。くれぐれも騙されないよう気をつけます。

とはいえ、不安だ。

パードレ・コエリュは、じっと静かに聞いているだけで、表情を変えない。余裕があるのか。それとも、実感を持てないでいるのか。

日本語、できないんだよな。

 

日本人との駆け引き、経験したこと、ないのでは?

 

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