戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1564/005.hmos

来日して一年経った。

ということは即ち、定航船の季節到来である。

 

私たちは63年、聖母訪問の日にノッサ・スニョラ・ダ・アジュダの港へ、アマカウから2週間で着いた。これは稀に見る最短記録だった。

意気揚々と布教にとりかかったが、秋に領内で反乱が勃発。

アジュダは村ごと破壊された。

船団長ダ・ゲラは、その報告を携えてアマカウへ戻った。春には、ゴアまで着いていていいはずだ。

 

今年の船団長は、ドン・ペドロ・ダ・アルメイダという古豪だそうである。

困ったぞ。略すとどのドン・ペドロか、どのアルメイダか、わからなくなってしまう。

ペドロもアルメイダも、ポルトガルでは極めてありふれた名前だからだ。ううむ。

 

それはともかく。アマカウからの出航は3隻。

先に出た2隻が、聖クリストバル記念日に、フィラド沖まで到着した。

フィラドは敵地であるし、パードレがいなければ船員たちは上陸しない。

沖の小さな無人島の陰に碇泊し、水源地を確保し、小舟で偵察隊を出した。

タク島にパードレがいると聞いて、私を訪ねてきてくれた。

 

それから3日。最後に出港するはずだった船団長の旗艦を待つが、一向に現れない。

先発隊が隠れているのも限界だ。なんとかせよと、私はしつこい催促を受けた。

結局、今年はひとまずパードレ・トルレスのいるコチノスへ向かってもらうことにして、トルレスへの手紙を書いて託す。

コチノス港は充分な水深があり、ナウの碇泊が可能との報告を受けている。

行ってみて良ければ、今後の拠点とする可能性もありだ。

 

 

私は最近、ディエゴに心を開けなくなってきていたので、このことは黙っておいた。

だがこちらからは、フィラドに何か情報が入ってきていないだろうか、と毎回尋ねた。

コチノスにナウが入港したらしいですぜ、ちくしょう。とディエゴが教えてくれた。

フィラドとしては、ここ一番の稼ぎ時を、さほど遠くない、小さな町に奪われてしまった格好だ。

待機していた商人がどんどん港から去っていく。それは面白くないことだろう。

だから秘密にしておいたのだ。

フィラドが自ら招いた事態とはいえ、反省の機会は厳格に与えられなくてはならないからね。

 

問題は、船団長の乗っている旗艦が行方不明であることだ。

冷静に考えれば、遭難だろう。先の2隻も、順風な旅ではなかったという。

旗艦には3人のパードレが乗って来日するはずだったと言われて、私とフェルナンデスがどれほど悲しんだか、察していただきたい。

 

日本布教の道は、更に険しくなる。

御主よ、あんま……あ、いえ。なんでもありません。

コチノスでも、パードレ・トルレスが今後の布教計画について、頭を悩ませているところだろう。

何かしらの手紙がくることを待ちわびながら、私たちは暑い夏を過ごしていた。

 

そんなところへ。

聖クララの日だった。

ドン・ペドロ・ダ・アルメイダの船が、突然フィラドへ現れた。大騒ぎになった。

 

ディエゴがやって来て、フェルナンデスと私は、フィラドへ上陸した。私にとっては、この日が初だ。

フィラド領主フィッシュ。

その家臣で我々の味方、ドン・アントニオ。

船団長と、通訳ができる船員若干。

日本側からも若干。

そして、私たち宣教師。

全員揃ったところで、国際会議が始められた。

 

必要と思われることだけ説明しよう。

フィッシュは、1隻だけでもなんとかフィラドにとどまり、ここで交易をして欲しいという。

入港料や関税もとらない。住民と、各地から来てくれている商人に儲けてもらいさえすれば、町の威信は保たれるのだからと嘆願する。

立派な政治的態度だ。しかし。

布教を認めず。

この一点だけは、譲歩する気がないという。

 

私は、譲歩した。

過去に宣教師や信徒たちが不当な迫害を受けてきたことへの補償は、もう問うまい。

しかし今後については。

布教の許可と、安全な教会用地の確保。聖堂の建設に関しても、業者から不当な請求などされぬよう領主から厳命してもらいたい。

邪宗徒との揉め事が発生した場合でも、公平に双方の言い分を検め、正義に即した裁判を行い、その一部始終を公表すること。

私たちは、たったこれだけしか要求しない。

坊主の特権を剥奪しようなどとは考えていない。

ただ私たちにも同じだけの機会を与え、人々が話を聴きに来ることを邪魔しないようお願いしているだけです。

それすらできないのなら、ポルトガルはあなた方と交易などしません。

理性があるならば、平和的に解決しましょう。

布教を認めますか?それとも、インヘルノへ堕ちますか?

 

10日後、私たちは勝利した。フィラドに教会が作られることになった。

ちょうど手頃な邸が空き家になっていたので、そこをもらいうけた。

手直しをして、タタミも新しくして、来月には献堂式を挙行できるだろう。

 

3人のパードレとも、抱擁を交わした。

カブラル。コスタ。フィゲイレド。

大物揃い。皆、私より先輩だ。

しかし私も、日本で一年揉まれただけに、堂々としていられた。力強く、かれらの手を握り返した。

ようこそ、日本へ。

ともに戦う、同志たちよ!

 

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