戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1583/005.hmos

聖クリストバルの祝日。定航船団が無事、到着した。

 

カブラルがしっかり手回ししてくれたおかげで、昨年とは船員たちの練度が違う。

皆てきぱきと作業してナンガサキおよびコチノスの組頭たちと連携し、初日から市を開き、大盛況となった。商人たちも瞳を輝かせ、拳を握りしめて競りに挑む。

勝っても負けても讃え合い、すぐ次の勝負のことを考える。子供たちまでもが、そんな大人たちの真剣な気迫を固唾を呑んで見守っている。

セミナリヨの生徒たちにも、この緊張感に触れさせることを提案してみようかな。これこそ生きた教科書の最たるものじゃないかと私は思う。

 

今年上陸したパードレに、力天使さながらの偉丈夫がいる。名はペドロ・ゴーメス。

昨年の船に乗っていたが難破し、孤島に漂着して半年ほど露営の生活に耐え忍んだ。植物と魚の脂から濃い煙を吐き出す烽火をつくることに成功し、これを連日たなびかせていたら、沖の船に発見され救助されたという。

知力、体力、幸運力のすべてに秀でた彼を私は即、将来の布教長候補に推す。だが、ひとまずは研修期間を置こう。

ブンゴで日本語の研修に励んでくれたまえ。

 

ポルトガルがエスパニヤ連合に組み込まれたことを昨年知ったが、一年後の経過も伝えられた。

統治者フェリペ王はポルトガル国民をエスパニヤ流儀で従わせようといった考えはお持ちでないらしく、現状きわめて恩情ある治世が行われている模様だ。なんとありがたい。

ただ経済、とくに国外における交易権を従来どおり分割することの意味はなくなったため、今後はやはりインディアへもエスパニヤ系の商人が参入してくることを覚悟せねばならない。

カウトリカの修道会についても、メノール、ドミニコ、アウグスティノなどが乱入してくるだろう。

ただし日本布教区に限っては、長年にわたるイエズス会の投資が巨額であることと、地域性の特殊さが考慮され、今後とも独占が認められるとのこと。

ほっとした。日本はこれからも、我々がじっくり時間と手間をかけて育てていってよいのだ。

これを承認できる新王は、巡察師並みに理解が早く、行動にも柔軟性があるのではないかと思われる。ともかく、よかった。

 

タカツキから、気になる話題が届いている。

大きな戦いが終わったので、ジュスト殿が城へ戻ってきた。そして、ニエッキを呼びつける。

ニエッキは戦勝祝いのつもりで音楽隊を連れていったが、ジュスト殿はニエッキだけを別室へ招き、終始ニコリともせず、今後ハシバ殿と付き合っていく上でコンパニヤが胆に銘じなくてはならないことを、滔々と説いた。

 

その1。

すみやかにキナイ布教長としてハシバ殿への会見を申し込むべし。

ハシバ殿はきわめて多忙なので、ジュスト殿の紹介状があってすら、約束がとれるのは何箇月も先になるだろう。

贈物はこれまでカヅサ殿にも見せたことがないような、とびきり珍しいものでなければならぬ。

すでにデウスは仏宗勢よりはるかに出遅れており、この差を縮める努力をしなければならぬ。

 

その2。

新教会を建設する準備を、直ちに始めるべし。

予算・資材の調達に、人足の確保。ハシバ殿は現在、アヅチを超える都市と城をどこかに建設する策定を進めている。彼の工事計画はおそろしく迅速である。それに合わせなくてはならない。

デウスの教会は造りが特殊なため、ここでも仏宗の寺社建設に比べて不利である。

街の景観を乱せば、これもまたハシバ殿の機嫌を損ねる要因となる。努力しましたは通用しない。完璧を尽くさねばならない。

この覚悟を、只今をもって、始めるべし。

 

その3。

検地に備えよ。

ハシバ殿は、支配地域には速やかに調査団を送りこみ、地図を作成させる。何班かを段階的に構成しており、同じ土地に複数の調査団を派遣し、その結果を照合する。

従来、検地といえば、村単位での収穫量を記録して税の量を決めるものだった。

ハシバ殿の方式はもっと複雑であり、田畑以外の家屋敷や倉庫の数まで記録し、これも課税対象に加える。その領内にいくつの寺社があるかも一軒ごと調べられており、デウスの教会も例外ではない。

タカツキではジュスト殿が一括して管理責任を負っているが、他領の教会についても同様であることを留意すべし。

 

すなわち今後、領主の許可さえとれば教会を好きなところに建てられるといったものではなくなる、ということだ。

私は何度か読み返して、やっとこの報告の恐ろしさに気付いたが、ニエッキは理解しているのだろうか。

していないと思う。ステファノーニとは相談したらしいが。セスペデスは出張中で、不在だったようだ。

 

ハシバは、地図をつくっている。明確な目的をもって。

 

戦場で勝つためではなく、旅行をするためでもない。

税をとるため。そう。半分は、その通りだろう。

何度かに分けて、おそらく調査団どうしを競わせることによって、より正確な数値を求めようとしている。

なぜ、ここまで、手の込んだことをするか。

 

ハシバが知ろうとしているのは、その土地を封鎖し無力化する場合どれだけの抵抗力を想定しうるか、どれだけの時間で全滅まで追いこめるか、ということではないのか。

しかもその調査は、現在敵対している陣営に向けてのものではない。

味方となった領地に対し、裏切りを許さないぞという意図が見える。

アキ国を追いつめていきながら磨き抜いていった発想なのか。そんな想像をめぐらす。

 

すでに、あらゆる宗派の坊主どもがハシバに会見を申し込んでいるとある。

 

新しい町ができる。その中に地所をもらう。それだけだろうか。

カヅサ殿は、テラに便宜など図らなかった。

ハシバの方から、服属を要求しているのかもしれない。

私だってハシバが覇者となることなど今も信じていないから、ニエッキが出遅れたことを責めることはできないが、坊主どもがやっていることを我々だけがしていないという事態は大いに憂慮すべきだ。

 

セスペデスなら、ファビアンからより深い分析を引き出せるのではなかろうか。

君たちの力がどうしても必要だ。

早く帰ってこい。

 

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