戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1583/006.hmos

ニエッキに返事を書こうとしていた矢先、セスペデスからの報告が届く。

 

ハシバは、我々が報告を送り合っている間に、次々と新しい手を打ってくる。こんな将棋、勝負にならない。将棋なら規則を盾に無効を申し立てできるかもしれないが、これは戦争だ。

対抗手段を持ち得なければ、叫ぼうとしている間に呑みこまれ、絶滅させられるだけだ。

 

ハシバは、シバタ殿が死んだことで、エチゼン、カンガ、その先の領国までをまるごと手に入れた。これに異議を唱えられる者は現状、存在しない。

 

支配地域には直ちに、ハシバの家臣から選抜された者が、領主として送りこまれる。

領主は領民より税を取るほか、労働力を徴収し、土木工事に使役したり、城や砦を築いて防衛に務めさせたりする。ひとたび号令をかければ、かれらは直ちに兵員となり、戦場に赴く。

これ自体は、従来通りだ。

 

ハシバの統治ぶりがいかに特徴的か、カンガ国での実態が述べられている。調べてきたのはファビアンだ。

村の地主が役人に賄賂を握らせて税収を加減してもらうやり方が、通用しなくなっている。中央から派遣された調査団は、耕作地を見て、記録して、すぐ去っていく。測量班が別に来て、こちらは住民とは触れ合わず、地図をつくることに専念する。このとき、道よりも川に注目しているそうだ。村や町の中を、どのように水路が流れているか。これに比べると、たとえば道幅などは控えもしないらしい。

 

収穫量を求めるだけが目的ならば、わざわざ水源を確かめに行ったりなどはすまい。

私の知る限り、カヅサ殿でさえ、このような命令を下したことはなかった。

 

カンガ国ではとくに、隠れイコ宗がまだまだ潜伏している。かれらはゼン宗やフォッケ宗の皮をかぶる。嘘偽りが平気で、高度な交渉術も身につけていた。役人を手玉にとることなど、雑作も無かった。

しかしハシバが送りこむ役人はイコ宗でないかどうかをそもそも問わないから、この術が通用しない。どこの宗派だろうが一律な計算で記録をしていくのみ。抵抗しない限りはそれ以上のことをしない。むしろ、異議を唱えれば誰であろうと懲罰を受ける。

 

ハシバがつくろうとしている新しい都市について、セスペデスは確定したと伝える。

オーザカだ。

ハシバは、オーザカに、アヅチを超える規模の街をつくることを決定したのだ。

 

オーザカは、難攻不落の城だった。カヅサ殿は要塞としての完成度の高さから、この城を無傷で手に入れたいと願い、サクマ殿に命じて長期にわたる攻囲戦を敷いた。

他方ハシバは西へ向かい、アキ軍に属する城を次々と陥としていった前線の指揮官である。サクマ殿がひとつの城にいつまでも手こずっていることを、どう見ていたのだろう。

イコ宗の頭領は、立ち去る際にオーザカの城を灰にした。その城を囲む市街地には、今もイコ宗の残党が住んでいる。

そんな呪われた土地を再開発するなど、常識的には考え難い。

もし、これを、ニエッキからの報告で読んでいたら、私は一笑に付していたと思う。

 

セスペデスは、これもおそらくファビアンに意見を求めている。

最終的にはポルトガル語で、あくまで私見としての分析だと述べられているが、セスペデスだけでこの結論へは達せまい。

衝撃的な内容だが、すべての辻褄が合う以上、受け入れざるを得ない。

 

ハシバは、イコ宗と同盟した。

 

カヅサ殿の宿敵であり、何度も何度も裏切りを重ねた狂信者の群れ。他宗の坊主どもからさえ人とすら認められていない、あのイコ宗と、手を結ぶ?

ありえないにもほどがある。しかしすべてが腑に落ちる。

ハシバよ、きさまは、勝つためならどんなことでもするつもりか。悪魔とでも、平気で手を結ぶのか。

いいさ。それなら今だけ、勝ち誇っておくことだ。

きさまはさぞかし惨めきわまりない死に方をすることだろう。デウスの裁きからは逃げられない。思い知るがよい。

 

しかしだ。

ハシバを倒せる武将というと、今は適当な人物が思い浮かばない。

いや、すぐ思い浮かぶような人物がいれば、ハシバは彼を警戒し、すみやかに排除すべく手を打つだろう。

ハシバが油断するまで、時期をうかがうべきだ。それまで耐え忍ぶことの重要性を理解している者も、きっと大勢いるはずだ。

あるいは裏切り上手なイコ宗がいずれハシバを用無しと判断して、適切に処理してくれるだろう。再びイコ宗が勢いを持つことは快い想像ではないが、その際オーザカを戦場にハシバ軍とも大いに潰し合ってくれることを期待しよう。

 

ところで今まで深く考えたことがなかったのだが、アキ王とは、どんな人物なのだろうか。

元クボウや、オーザカともつるみ合ってカヅサ殿に抵抗し続けた大国の主ではあるが。最前線でいくつもの城を落としてきたハシバを、憎悪する筆頭に上げていることは間違いあるまい。

なんとか情報を得る手段がないものか。利用できる人材なら、活躍してもらいたいと思うが。

 

セスペデスは、ムロのアゴスチニヨも訪問した。

アキ国攻めでは、ハシバの下でセト内海の戦域を担当した部将だ。その働きを認められ、アゴスチニヨの父親ジョウチン殿が、今はサカイの評議員に昇進。市の財務長官に任命されているという。

ジュスト殿もだが、優秀な武官であることがまず重要だ。ハシバへの恩義をあまり過度に持たれると、後々困るがな。

今のうちから、ハシバ軍を内部崩壊させるための手駒として、教育しておくべきか。

 

まずはかれらとの繋がりを密にし、ハシバの肚の内を探る道をつけておくことだ。地道に。堅実に。

祈っているだけでは、楽園には辿りつけない。私たちは明確な目標を見据えて、一歩一歩、突き進んでいかなくてはならないのである。

日々、こつこつと。

 

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