戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1583/008.hmos

パードレ・ルイス・アルメイダ。

アマクサ島カチウラにて、御主のみもとへ旅立つ。

報せを聞いてすぐに、イルマンたちを派遣した。

 

アルメイダは眠るように息を引き取ったという。島じゅうの信徒が駆けつけて厳粛な葬儀を営んだ。生前、典礼の次第を事細かに教えこんでおいたようだ。

アマクサには5人の小領主がいて、いずれもサツマへの服従を誓わされており、各領地の信徒たちも自由な移動を制限されている。それでも、いや、それだからこそか。内なる結束と信仰はことのほか強い。

アマクサでの布教と指導については現地の信徒たちに一任してよいようである。

報告では、そのようにまとめられている。

 

たしかに、ブンゴ国のノヅやユウなど前例はある。

村や町のまとめ役を信徒にし、かつ彼らが有能で求心力を持つ人物であれば、地域の布教は一気に進む。我々も楽ができる。

ただ、最低でも年に一度はパードレが巡回し、聖務が正しく実行されていることを確認しなければならない。

日本でありがちなのは、祈りのしぐさが徐々に仏宗式へ変化していくことだ。

かれらにとっては長年慣れ親しんできた作法だから無理もないとはいえる。だがそんなものを混ぜられてはたまらないし、そうならないよう指導しながら見守り続けるのはパードレの使命なのである。

だから現地に一任してよいというイルマンたちの意見を認めるわけにはいかない。

 

とはいえアマクサ島については、昨年様子を見に行かせたときよりさらに警戒が厳しくなっている。

サツマは最近、宣教師招聘要請にあまり積極的でなくなってきたが、アマクサへの上陸にもなかなか許可が下りない雰囲気から勘繰るならば、我々をいよいよ敵視しはじめたようにも感ずるのだ。

かれらは昔から、交易の利潤しか眼中になかった。デウスの教えを理解しようとする出発点にすら立とうとしない連中だった。

だから敵対すること自体は望むところなのだが、アマクサの純朴たる信徒たちを救えないことを歯がゆく思う。

なんとか早いうちにサツマの息の根を止めたい。

 

アルメイダよ、見ていてくれ。

君が育てたアマクサの信徒たちを、私は全員、パライゾへ導こう。

サツマを滅ぼし、ハシバを倒し、日本史を大団円で完結させてから、私も君たちのもとへ集う。約束だ。

さあて、ぼやぼやしている暇はないぞ。

 

南からはサツマの脅威。そして北からは、スコがにじり寄ってきている。

危険度でいえば、スコの方が油断ならない。スコ王の息子は我々との友好を望んでいるが、あいかわらず父親は鬼畜だ。

オオムラ王ドン・バルトロメウは、長男を人質にとられている。今年、スコ王からこう言ってきた。長男を返すから代わりにその弟を2人、新たに人質によこせと。

ドン・バルトロメウは抵抗したが、逆らえなかった。

少年ふたりがスコへ送られた。

長男は今も帰ってきていない。

まんまと、3人も人質にとられたのだ。王の悲しみは、筆舌に尽くしがたい。

 

ドン・バルトロメウにはもうひとり、5歳になる末の男の子がいる。霊名をルイスという。

この子までとられてしまえば、王家は滅びる。

そこで、甥であるアリマ王ドン・プロタジオへ預けることにした。

ドン・バルトロメウの窮状は、パードレ・ルセナから逐次伝わってきているが、あまりにひどすぎる。スコの圧力にただひたすら屈するばかりなのだ。

 

オオムラとアリマの連携が崩れることは考えにくいが、ここに最悪の想定が提出されている。

スコがいよいよアリマへ攻めこむことになったら、オオムラ軍はその先鋒を務めさせられるだろう。

オオムラが逆らえば、スコはただちに、ドン・バルトロメウの3人の息子たちを殺すやもしれぬ。なんとしても回避せねば。

 

具体的には、二通りの方策がある。

まず、スコの息子と我々とがより密接に通じ合い、父親を退位させるという戦略。

大人しく隠居して黙ってくれるタマではないだろうから、ひと思いに暗殺することになるだろうか。

困ったのはデウスの受け入れに最も積極的な息子というのが三男であり、おまけに王の実子でもないということだ。父親を排除して即、彼が王になれるというなら、唆し甲斐もあるというものだが。

ことが明るみに出れば、コンパニヤとしても損害を被るため、この計画は慎重に、入念に進めていかなければならない。

 

もう一つは、スコの目を当面、オオムラからもアリマからも反らさせるというものである。

我々の今いるヒゼン国より東に、ヒゴという領国がある。サツマは現在、南からこのヒゴ国に侵攻中であるが、スコだってむざむざサツマの勢力拡大を見過ごしておきたくはないだろう。

ヒゴもまた、ブンゴ衰退後は小領主の乱立状態に陥っているが、ブンゴに攻め入るほどの勢力は生まれていない。だからサツマに呑まれるのだ。

ここをスコにも狙わせて、ヒゴを舞台に両者が戦争を始めてくれれば、ヒゼン諸領主はひとまず息がつける。

スコ王の息子たちにとっても手柄を立てるよい機会だ。うまく誘導できれば、いける。

 

コンパニヤとしては、残酷なことだがアリマ領を最終防衛線として拠点化を進める。

いざとなるとドン・バルトロメウは我々に敵対するかもしれないので、オオムラ領の防備に予算をかけることは無駄になるばかりでなく利敵行為となってしまうおそれがある。

ただナンガサキとモギは、承認待ちとはいえポルトガル領なのであるから、我々自身の権限において武装化を徹底するし、何があろうと死守せねばならない。

敵が迫ってくれば、オオムラ兵だろうとスコ兵であろうと排除する。当然だろう。

 

このような会議を連日、コエリュを交えたり交えなかったりしながら調整している。

 

ニエッキを誰と交代させるかの案件だが、現在フナイでコレジオ院長をしているパードレ・フィゲイレドが、キナイへの転属を諒承してくれて、ほっとしている。

統率力のあるパードレでなければならぬが、セスペデスもカリオンも、まだこの点では力不足だ。いくらニエッキやステファノーニよりマシだといっても。

フィゲイレドは、キナイの地理や政情に慣れるまではニエッキたちも置いてほしいと言っている。いいだろう。あいつらの用が無くなったら知らせてくれ。辞令を出す。

 

オーザカの街づくりは、恐るべき速度で進んでいる。

懸念していた通り、ニエッキには資材の調達も工員の手配もさっぱりできていなかった。

見かねたジュスト殿が、配下の兵に命じてカワチ国の物件を解体・運搬させて、オーザカの教会をなんとかつくってくれている。

降誕祭には間に合いそうだという。セスペデスからの報告だ。

 

最終的に、すべてを把握し采配し、コンパニヤの運営を舵取りしているのは間違いなく、私だ。その足にまとわりつく蛭のような邪魔者どもが煩わしくてたまらない。そろそろ、具体的な策を打つべき段階である。

ただ、一手一手、着実にだ。

日本布教長の排除にはアマカウやゴアへの根回しも必要になるから、先にキナイを片付けよう。

フィゲイレドよ、私は君に期待する。くれぐれも、し損じてくれるなよ。

 

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