戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1584/001.hmos

我々は、スコを侮りすぎていたかもしれない。

 

とにかく野蛮な連中で、覇権欲、領土欲の権化だと聞いていた。まだ小さな領主だった数十年前から、ドン・バルトロメウと何度も戦争を繰り返した。

いつのまにか、ヒゼン国の中央付近でそこそこの領土を支配するまでになった。

ブンゴ国の衰退に乗じ、幾度もしつこく侵入を繰り返した。商都ファカタはかれらによって壊滅させられた。

そして今また、ヒゼン国の南部へ進軍し、オオムラ領の実効支配を完了し、残るアリマ領へ矛先を向けたところだ。

いつのまにやら、と言うしかない。

 

馬と槍で突撃するしか能の無い、腕力だけに依存する獣の群れという印象を私は抱いていたのだが、ドン・バルトロメウから3人の息子を人質にとり逆らえなくさせたところを見ると、知恵もそれなりにあるようだ。そこまでは考えた。

しかし、この度のナンガサキ放火事件をスコの仕業と認めるならば、我々ははるかに大きな軌道修正を迫られることになる。スコを侮ってはならない。

 

聖パウロ御受難の日。

ナンガサキで大きな火事が起きた。

教会近くの倉庫が5棟ほど、全焼した。

 

それだけですんだことは幸いであった。倉庫の中には、備蓄の弾丸や火薬が詰めこまれていたからだ。

これらに引火していたら途轍もない爆発が起きていたはずだ。しかし、起こらなかった。なぜだろう。

盗み出されたあとで放火されたからだ。

 

火の手が上がるのと前後して、港から数隻の小舟が逃げるように出て行った。

定航船の乗員がこれに気付き、小型のフスタで追いかけた。

闇夜の中ゆえ、取り逃がしてしまった。

しかし方向は、一目散に北へだったという。

 

南ならサツマの疑いもあるが、北ということはスコか、あるいはフィラドだ。

この一連の報告に加えて、私は知る。スコ軍は大規模な鉄炮隊を有しており、その数は最盛期のブンゴ軍にも匹敵すると。

冗談だろう?おい。

ならばますますスコ軍が怪しい。サツマには鉄砲がないし、フィラドは軍そのものを持っていない。

フィラドはスコに上納金を支払うことで侵攻されずにすんでいる。それはそれで赦しがたいが、今は構っていられない。

 

犯人がスコなら、注意すべきことは二つ。

ひとつ、かれらはナンガサキの軍事機密を知っている。あるいは内通者を味方につけている。

もうひとつは、我々の戦力をそっくりかれらに奪われてしまったという事実だ。

形勢は、極端なまでに、不利となった。対策を急がねばならない。だが、どうやって?

 

アリマ王ドン・プロタジオに報告は上げた。ただちに領内には厳戒態勢が敷かれる。

我々も、新たな情報を得る。

スコ王はオオムラ王ドン・バルトロメウに退位を迫り、代わりに、人質にしていた長男ドン・サンチョをオオムラ王にすべしと命令してきたらしい。

 

ドン・プロタジオ調べでは、王子サンチョは2年の監禁生活を経て、すっかりスコの奴隷と化してしまったらしい。

すでに棄教もしているはずだという。坊主の軍門に降ったか。

スコ王はデウスを憎んでおり、オオムラやアリマへ向ける敵愾心は、単なる領土征服を超える執着を示しているそうだ。

すなわち、フィラドのようにカネで解決などは望むべくもない。

武力制圧後、デウス信徒である王や家臣は容赦なく処刑され、領内の教会施設はことごとく破壊され、住民は棄教させられる。そこまでしてもなお、坊主たちは被占領地の民衆を同胞とは認めない。

フォトケを二度も裏切った人非人のナレノハテだと虐げられ蔑まれ続ける生活しか与えられないのだ。

それがスコという領国の本性である。

 

我々は、こんなやつらに敗れるわけにはいかない。

ドン・プロタジオは率直に、コンパニヤの持つ戦力はどれほどかと私に尋ねた。

コチノスに保管してある弾薬と、各拠点に用意してある火器類の配備状況を私は答える。ナンガサキの失態は、ナンガサキの住民自身に支払ってもらうべきでしょう。アリマはアリマの防衛をせねばなりません。オオムラ領からアリマ領へ移動するには、通常は海路の方が早いです。しかし大量の軍勢は送れないでしょうし、上陸前なら鉄砲で仕留められます。陸路からなら、北のシマバラ領を通過してくる形になるでしょう。ここが戦場になるとすると、シマバラの領主は、どう動くでしょうか……

 

聞くまでもないことであった。シマバラはスコ側に就くだろう。

領内にも信徒はいるが、シマバラ王自身は邪宗徒だし、スコの軍勢を身を張って食い止める真似をしてくれるはずもない。どうぞどうぞと通過させ、アリマを戦場にしたあとでスコ王とは和議を結ぶのだ。すでに結んでいるか。

そうなる前提で想定戦を繰り広げてみたが、どのみち苦しい戦いになる。

ブンゴの支援も当てにできない。今のヨシムネ王はすっかり邪宗徒だ。

ああ、重ねがさね、どうしてこうなってしまったのだ。絶体絶命ではないか。

 

今も教会で祈っているだけの白豚のせいか。

わしには世俗の話はわからぬ、行っても無駄なだけだろう、と事前打ち合わせもぼんやり聞き流していただけの男が最高責任者なのが悪いのか。その通りである。

しかし、私まで愚かであるべきではない。

知力を尽くして戦うのだ最後まで。そしてコエリュ、あなたは責任をとるためにそこにいるのだからな。それだけは忘れるな。

 

「薩摩に、遣いを出そう。有馬と大村の領地さえ守られるならば、我々の処遇は薩摩の思うがままにしてもらって構わぬと申し添えよう。ただ……」

 

ただ……?

 

「長崎は別として、有馬領内の教会はじめパードレの財産についても、薩摩の意向に服従せねばなりません。

薩摩も、デウス嫌いにかけては最近かなり強硬です。全領地からの立ち退きを求められる可能性もあります。

パードレ殿らが抵抗されれば、私たちの誓約も一切無効となりかねません。それだけの覚悟を必要とする、救援要請となります。

呑んでいただけますか?」

 

本来ならば、私の一存で答えるなど、許されない問題だろう。しかしコエリュがここにいたとして進む話でもない。

私が決めることになるのはわかっている。考える時間はもらったが、承諾をした。

条件はつけた。

サツマからの援軍が来たならば、私をその連絡員に指名してほしい。あちらの担当官となるべく懇意にすることで、戦後処理を少しでも有利に展開できるなら、それに賭けたい。

 

可能なら、武将たちに洗礼を授けて、味方に引きこもう。それができるのは、私くらいだ。

 

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