戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1584/010.hmos

マナセ・イッケイ。

ミヤコで評判の医者。70歳超。

引退しているが、相談客が絶えないため、自宅で診療に応じている。

 

エウロパ基準では、こんなものを医者とは呼ばない。まじない師だ。

そもそも日本に医学は存在しないし、免許制ですらない。医術とは、坊主のなり損ないが香を焚き怪しい踊りと念仏でお札を売りつける行為を指す。病人は苦しみながら死んでいき、それでも名医のおかげで幸せそうでしたよと評判だけ遺れば、成功だ。

 

マナセは老人相手の軽妙な猥談が得意で、それで人気があったらしい。

若い頃から議論好きでもあったようで、ゼン宗をよくやりこめたとも聞く。デウスの教えにも、以前から興味は持っていたようだ。

そこへフィゲイレドが、通訳にファビアンを連れて、訪れた。腰の痛みが耐えられなくてと。まさか治せるとは期待してなかったと思うが。

しばらく通い続け、ついにマナセを陥落させる。

霊名、ベルシヨール。

 

キナイ中を騒然とさせる、大事件だった。

坊主たちは言うに及ばず、クゲ連中からも誹謗中傷、罵詈雑言の嵐。マナセは高齢で正常な判断力を失っていると冷笑する者も大勢現れたが、ベルシヨールはまったく動じず、言わせておけ構う時間がもったいないと寸暇を惜しんで聖書を読み、鋭い質問を次々と宣教師や信徒に浴びせかけるのだった。

 

来たる降誕祭には、ベルシヨールからの所信表明が演目のひとつに準備されており、これも相当の話題を呼んでいる。教会では手狭すぎるから広い会堂を見つけるか、本にして販売すべきだろうかと、パードレたちが東奔西走していると書いてある。面白いことになってきたものだ。

 

面白くない話題も書いてある。ヲアリの戦いが幕を閉じた。

あっけなくも和睦が成立したのだ。

今春、ハシバのキノ国反乱鎮圧命令に乗じて挙兵したノフカツ殿が、ヲアリに陣取りハシバを背後から突こうとしたことが発端だった。

ヲアリの東からミカワ王がこれに全面支援を表明したことで、ハシバは予断を許されない状況となり、全軍をヲアリに振り向けた。

ハシバの戦術を熟知するヲアリ・ミカワ連合軍は、敵を陣地に誘い込んでは撃退するという機動力の高さを見せつけ、ハシバの兵力をどんどん削っていった。

夏の終わり、ハシバは前線から退き、オーザカで遊び呆け始める。

私はこれを、ハシバの自信喪失と解釈した。戦局を好転させる見込みが無く、どうしていいかわからなくなって、逃避したのだろうと。

 

そんな私の憶測はさておき、ハシバは、ノフカツ殿と単独講和に及んだ。

 

ミカワ王がその場にいれば、認めさせなかったのではあるまいか。ハシバをこれ以上調子づかせる必要はないし、本来ならオーザカ城が完成する前にとどめを刺しておきたかったはずだ。

カヅサ殿があれほど手こずった魔都オーザカ。ここに立て籠もられては、次に倒せる機会はなかなか巡ってこない。

歯がゆいことに、ミカワ王は、ノフカツ殿に制されて素直に従った。亡き主君カヅサ殿に立てた誓いを遵守したのだ。ハシバと違って。

 

ハシバは主君の死を徹底的に利用する。

成人した遺児が二人もいるのに、相続権は幼孫にあると主張し、自分がその後見人たるべしと譲らなかった。

謀反人コレトウを成敗した忠臣こそ我なり、と当時は勢いで押し通したが、あまりに強引に過ぎる。

 

政治的信条も、カヅサ殿がアヅチにつくりあげようとしていた理想郷の精神を毛ほども理解していない。

オーザカの都市計画はデタラメだ。アヅチよりも大きく。それしかない。

コンパニヤの教会を厚遇してくれている?ハシバは、デウスの教えに、まだ興味を持ち始めたばかりの段階だぞ。それで地所拡張を一発号令か。

その場の雰囲気で調子に乗っているだけではないか。

こんな奴はある日突然、平気で掌を返す。せめてベルシヨール並みの、学ぼうとする姿勢くらい見せろ。

ハシバにはそれがない。

人殺しの技術だけを磨いてきた、哀れな道化にすぎない。

そんな奴には、スコ王と同じような末路しか待っていないだろう。ニエッキよ、早く目を醒ませ。

 

スコといえば、かれらは春の撤兵後ブンゴと戦い始め、秋になって休戦した。

 

ブンゴ側の総指揮官はヨシムネ王だが、最近の評判はすこぶる悪い。

側近はデウス嫌いで固められ、その結果として、軍としての統制が機能しなくなっている。だから対スコ戦だって蛮族同士の泥仕合と化しているのだ。

発端も、主君を失い混乱したスコ領へブンゴから攻め入ったと聞いている。ただの火事場泥棒じゃないか。

それでいて、ブンゴは何度も敗退。手痛い犠牲を重ねた。

スコ領は低湿地帯で、大小の水路が縦横に交錯している。スコ兵はこの地形を熟知しているが、ブンゴ兵はすぐ罠に嵌まる。

少しは地図をつくりながら学習してみないかと言いたくなるほどだが、ヨシムネは頑迷に突撃命令を出し続ける。

君はいつからそんな愚か者に堕してしまったのか。私は哀しい。

 

実際のところ、前王ドン・フランシスコも呆れていて、自分が死んでもヨシムネは葬儀に来なくていいとまで言っている。せつないね。

 

降誕祭は今年もウスキが一番派手にやるだろうか。

完全隠居してからのドン・フランシスコは、祭典を盛り上げることに並々ならぬ情熱を燃やし、その熱量は他所の追随を許さない。劇に、歌に、ヂシピリナに、どこよりもカネと時間を注ぎこみ、食事も一番豪勢だ。

フナイやノヅからわざわざ出向いていく信徒も年々増えている。

良いことだ。

ドン・フランシスコにはずっと長生きしてもらって、ヴィルトゥスの源泉になっていてもらいたい。

ブンゴからシモ全域へ、そして日本中に、この聖なる輝きを満ち溢れさせ、日本人が持って生まれる邪悪を一掃し、清き祝福によって永遠平和を成就するのだ。

ああ、つい、そんな夢のような未来を願ってしまうよ。

 

今年は最悪の事件が続きすぎた。もう限界だ。

少しくらい休ませてくれ。アーメン。

 

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