戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1586/007.hmos

行ったことはないが、イタリヤ半島の爪先にシチリア島があって、その脇にマルタという小さな島が浮かんでいる。

カミ島・アワジ島・ユノ島の関係も、これに近いと言えようか。

 

地中海におけるシチリア。セト内海におけるアワジ。その戦略的な重要性は地図を見ただけで察せられるが、マルタもユノも、これを背面から突くことのできる要衝である。

目立ちにくい存在だが、アワジを取ったり取られたり前には必ずユノ島が戦場となってきたはずだ。一見純朴そのものにしか映らない島民たちの歓迎を受けながら、この島の地図は過去どれだけ書き換えられてきたのだろうかと、思いを馳せるのであった。

 

島の有力者たちは、アゴスチニヨから構想を説明され、目の色を変えたはずだ。

これから、ユノ島は、セト内海の主役となる。サカイに肩を並べる富商が生まれ、アワジや、オーザカにまで別荘を持てるようになるだろう。

そう約束してくれたアゴスチニヨが、とうとう、本物のエウロパ人を連れてきたのだ。島民は、競い合って家々から仏像や祭具をかき集め、うず高く積み上げた。

逃げ遅れた坊主どもを縛りつけて整列させ、その眼前で火を付けさせる。かれらなりの、精一杯のもてなしであろう。

 

セスペデスは、従僕の現地調達には困らないからイルマンを2人だけ付けてほしいと言った。殊勝なことだ。

あとを任せて、布教長一行は、すぐ次へと向かう。

 

イヨ国ユヅキの城に、領主を訪ねる。カンパクはここに、アキ王の親族を配置した。

ユヅキの殿は、デウスの誘致にたいへん積極的であり、すでに教会用地も準備してくれていたが、シモへの出陣を控えて大忙しの最中だったため、本人への説教は、叶わなかった。

留守役の家臣には教えを説いたが、並々ならぬ熱心さが感じられて、期待も膨らむばかりだ。城下は硫黄の産地なので、サリートリさえあればすぐに火薬の製造を始めることができる。

新天地へ赴任してすぐ産業基盤の整備と振興に取り組む姿勢は、我々も見習うべきかもしれない。

 

アゴスチニヨも、サカイの商人たちもそうだが、近頃の日本人は本当に賢く、逞しくなった。

この成長を導いてきたのは、イエズスのコンパニヤである。フェリペナスで手ぐすね引いている、裸足派の助けはいらない。

そのことが明晰に証明できていることが誇らしいし、私はこれを何度でも主張し続けていくつもりだ。

 

ユヅキ家臣たちの郷里であるアキ国について、探りを入れてみた。

アマングチには何十年も迫害され続けている信徒たちがいる。その状況を打開する機会を掴めないかとの期待を持った。すぐにユヅキ王より、アキ王へ要望を出してもらえることになった。アマングチに教会をつくり、パードレを迎え、布教許可証も発行するようにと。

なんだか、あまりにもうまく進みすぎて怖いくらいだ。

揉める可能性はほとんどありえないと誰しもが考えている。坊主たちが反対を表明する惧れすら、現実味を持たない。イヨ国の坊主たちも自らどこへともなく逃げ出していったし、理性ある者なら僧衣を脱いで教えを聴きにやってくる。

文字が読める者は大抵坊主なので誤魔化しもきかないのだが、それにしても変わったものだ。

以前の坊主は求道しながらも、憎まれ口を絶やさないのが常であった。今は素直すぎて、逆に気持ち悪い。フォトケの命運は完全に尽きたのだ。

あとは、カミだな。

サツマはまだ素直になれないでいるようだから。

 

イヨ国を去り、我々は対岸のブンゴ国ウスキへと入港する。

ドン・フランシスコは先に帰国しており、ブンゴの全領民へ向けて、カンパク殿が味方に就いてくれることを高らかに宣言していた。すでにフナイへイヨ国ほかからの軍勢が到着しており、なおも停戦に応じないサツマへの勧告を繰り返しているという。

 

え。サツマは屈伏しないのか。

あくまでカンパクに楯突くつもりか。さすがだな。

 

中途半端に幕を閉じて旧領の支配を認めてやるより、最後の一兵まで玉砕してもらって歴史から消滅してくれるほうが戦後の分割も楽になるし、君たち以外の全勢力がそれをこそ望んでいるのは事実だが、いいのかね。いいんだったら、ありがたく総力戦を開始させていただこう。

近頃は軍師の出番がなかなか無くてね。私も勘を取り戻す、いい機会にしたいと思う。

 

ウスキには、教会と、ノビシヤドがある。

ゴーメスやレイマンとも、やっと再会を果たす。サツマがヒゼン–ブンゴ間の交通を遮断して以来の状況を語り合い、今後の計画についても、すべてを明かした。

 

今年の定航船寄港地は、フィラド。来夏にはナンガサキは解放されているだろうから、その後は戻す予定。

我々はこれより、アカマに司令部を据える。

ナンガサキとアリマ、オオムラ領の会士たちはそれぞれ頼れる信徒のもとに匿われ、サツマの役人たちが撤収するまでは表に出てこない。

ブンゴ国内の会士は、引き続き領内で信徒と教会施設を守り抜くこと。カンパク殿がシモ島の国境を再策定したのちに、あらためてわれわれの配置転換も行う。早ければ今年中。遅くとも来春には結着がつくだろう。

 

オーザカのまざましい発展、カンパク殿によるコンパニヤの絶対的な庇護、そしてユノ島を中心としたセト商圏の誕生。どの話題もが、場を盛り上げた。しかし、浮かれすぎていてもいけない。サツマは一撃必殺の暗殺部隊を有しており、ヒュウガ方面以外ではまだほとんど無傷の状態だ。

我々はサツマの面子をものの見事に潰して、キナイまで行って、ブンゴへ戻ってきた。この痛快劇が語り継がれる限り、サツマは布教長を怨むと思うのだ。気を抜いてはならない。かれらの魔の手から逃げ切るためには、その手には届かない高度を飛び続けている必要がある。忘れるべからず。

 

滞在中、ウスキの城から、ドン・フランシスコの娘ふたりが、教会へミサを聴きにやってくるという珍事もあった。

彼女たちは、実母のナタと一緒に暮らしているのだが、ナタのデウス嫌いも、今やすっかり拘束力を失ったようだ。

思えばブンゴがサツマと戦争を始めたときから、カミを崇拝する者同士でいがみ合うという矛盾を抱えていたわけだ、ナタとその一族は。

しかし未来ある娘たちには、正しい道を歩む資格があるのだから、真実へ向かってまっすぐ突き進むことが妨げられるなど、あってはならない。

同じくドン・フランシスコの子供であるブンゴ王ヨシムネは、今どんな感じなのかな。

ゴーメスに聞いてみた。

 

「ヨシムネ王は、デウスの教えからはすっかり心が離れてしまっておりますが、かつてのナタやチカカタほど、敵意を剥き出しにしてくるような態度ではありません。

ドン・フランシスコは戻ってきてすぐ彼と会見しているのですが、カンパクの采配と、援軍をよこしてくれるという決定には深く感謝をしており、カンパク殿へあらためて忠誠を誓う旨、使者を派遣して回答したと聞いています。

そこで、ですね。

私はこれからフナイへ向かいますが、布教を妨げる者はカンパク殿から罰せられるとの勅命を堂々と掲げ、揺さぶりをかけてみたいと思います。

今後は、デウスの信徒であるからという理由で家臣を冷遇したりなど、できなくなると期待しうるでしょう」

 

パードレ・ゴーメスよ。やり方は君に一任するが、いささか、手ぬるいようにも感じる。

これまで冷遇されていた者、王のせいで求道すらできなかった者へは、充分な補償を払わせるべきだ。もちろん今後一切の妨害行為は厳罰に処されなければならない。カンパクに忠誠を誓うならば、当然、デウスに対してはそれ以上でなくてはならん。

一切の叛意はゆるされないのだということを、きちんと伝えてくれたまえ。

 

このような会議を連日重ねたあと、いよいよ私たちは、アカマへと向かった。

 

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