戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1586/012.hmos

カワラ城は、小高い丘の頂にある砦だ。

敵は弓と鉄炮で武装しているため、包囲して消耗させてから叩くことになった。少し時間をかけての攻略となる。

今回も地味ですね、とシメアンは苦笑した。

 

ダミヤンはこの付近に住んでいたことがあり、山道を知っていた。兵たちと共に哨戒に出て、隠れている敵兵を捕まえてきては、指揮所へと連れてくる。

尋問はシメアンの部下たちが行う。城の構造や備蓄状況などを吐かせた上で、上級将官の身内など人質としての価値が高そうな場合はシメアンに報告される。

シメアン自ら捕虜と語らい、様々な情報を引き出してみせるのだが、この過程で多くの敵兵が求道者へと変身する。

シメアンは布教の心得も一流なのだ。

 

「何事についても、教えを聴くだけでは、頭に残りません。人に説明することで、初めて、知識も血肉になるのです。

ただしこれも、上司から部下へ語るのではほとんど意味がない。捕虜は邪宗徒です。疑問や反論がすぐさま、鋭く、返ってきます。

私も真剣に考えて答えねばなりません。私はいまデウスの教えを体得するのにこれ以上ないほど最適の立場にいます。この機会を逃す手は、ないでしょう」

 

ひとりでは大変だろうからイルマンにも手伝わせるか、私が交代してもよいが、と告げたのだがシメアンは丁重に断る。どうしても手に負えないときは助力を願う、とは言われたが。

シメアンから私への質問や相談は、日増しに難解な領域へと踏み込んでゆく。そのうち、洗礼を希望しその条件も完全に満たした捕虜が差し出されてくるだろう。

頼もしいというべきか、末恐ろしいというべきか。

 

ブンゴ国へは、南側からサツマの大規模軍勢が侵攻との情報が入る。

サツマはいよいよ鉄炮隊を本格投入するようになったが、まだその扱いは稚拙なようだ。一方ブンゴへは最近ようやく弾薬の供給が可能になり、射手を陣地へ巧みに配置して効果的な応戦をしているとのこと。

気になるのはサツマが大型の炮を運用しているとの情報。

カフルに撃たせているらしい。ナンガサキから連れてきたとしか考えられないが、ブンゴ軍からの射程に入る前に逃げ出してもらいたいと願う。死ぬのはサツマ兵だけでいい。

 

フナイ手前でも激戦があったと噂だけ聞くが、詳細が伝わってこないところから察するに、ブンゴ側が大敗したと考える。

我々北方方面軍への応援要請もきていないから放置の構えでいるが、きても、シメアンは援軍を送らないだろう。

かれらには、懲りて学習する機会を与えねばならぬ。

今ほどそれに適した状況はないだろうから、という。

 

私は、アカマとカワラを頻繁に往復していた。

キナイの事情、とくにセスペデスからの通信を、届き次第読む必要があった。

年が明ける直前に、それは、もたらされた。

深呼吸を何度もしてから、封を開けた。

 

「Lよ。ルカスはパライゾにいる。

私が見届けた。

顛末を語る。

 

2箇月ほど前の夜、ルカスは取引先の相手4~5人を招いて酒宴を催した。うち3人はゼン宗徒だった。

結果から述べる。

その3人がカタナで斬り殺された。ルカスは無傷で、酔って寝ていた。

ルカスの供述では、招いてない客人がもう1人いた。死んだうちの誰かが連れてきたのだというが不明のまま。

ルカスはその男の捜索と召喚・証言を求めるが、見つからない。

被害者の遺族はルカスが時間稼ぎのために虚言を弄しているのだとして、より厳罰を要求した。

 

サカイでは市長が交代したばかりだったが、2人体制で、ひとりは古参信徒ジョウチン。もうひとりはジブノショウ。リンザイ宗徒だ。

表向き険悪な関係ではないが、生活信条が異なりすぎるためか、議論を尽くさない印象を受ける。

とくに一方が強く関わる案件には、もう一方はつとめて踏み込まないという暗黙の了解が成立しているようだ。

 

オーザカでは以前より、市民同士の争いは全面禁止とされ、役人と軍人以外は武器の携帯だけでも犯罪となる。サカイでも市長交代後、この方針が徹底された。

その直後の殺人事件は衆目を集め、デウス信徒がゼン宗徒を謀殺したという体で書き立てられた。

ジブノショウは事件後すぐルカスとその家族を身柄拘束。ヒビヤの店は操業停止を余儀なくされ、ディオゴを筆頭に親族も全員、OGSを頼って安全地帯に匿われている。

これが更にゼンチョの怒りを煽って、ルカスの立場を悪くした。

聖セシリアの祝日に、ルカスは処刑を宣告された。

 

私は間に合い、直前の面会を許可された。

ルカスと、その家族とは別々の牢へ入れられており、かれら同士の面会は最後まで禁止だった。

ルカスは号泣しながら、これがデウスの為したもう導きであるのかと不遜きわまる呪いの言葉を吐き出したが、私は聞かなかったことにした。

ここでデウスに叛けば、パライゾで妻や子供たちに会えなくなるぞとしつこく諭してやっと納得させたあとで、ジブノショウからの恩情判決が通達される。

処刑はルカスのみ。彼の妻と4人の子供たちは追放令に軽減されるとのことだ。

 

ルカスは喜んだ。彼は真心からデウスへの感謝を捧げ、そのあとすぐ槍で刺され、息絶えた。

聖遺物は、ロザリオだ。

最期まで身に付けさせていたから、血まみれで、たっぷりヴィルトゥスが封じ込まれている。盛式三誓願修道士の鑑定書を添付すれば、高額な値がつくだろう。

厳重に封緘して、同梱する。GS」

 

よくやってくれた、セスペデス。完璧な処置だ。

この件についてのデウスの真意は私にも不明だが、きっと深い意味が隠されているのだろう。ルカスよ、君が道を踏み外さなくてよかった。

ほんの少しの間、パライゾで待っていてくれたまえ。

 

日本準管区布教長代理として、留意しておくべき点がある。

サカイでは、存外まだ坊主勢力が根強くはびこっており、為政者次第で不正な裁判が簡単にまかり通ってしまうという実態が、明らかとなった。

デウスはこの危険を我々に知らしめたのかもしれない。

ルカスはそのための、尊い生贄に選ばれたということか。

 

争いを禁じるという法令自体は、善き政治ではないかと思う。ただ、少しばかり性急であるし、やるならデウスのお導きに沿ってするべきだ。

ハシバは信徒ではないし、求道者としてもまだまだ常識知らずだから、そこがよくわかっていないのである。

ジュスト殿が側についていてやっとここまできている、というところだろう。しかしまだ脇が甘い。

これでは、世俗の王として民衆の統治を任せておくには些か難あり、という評価を下さざるを得まい。

ジュスト殿。準備はよろしいですか?

日本の王は、やはりあなたにやってもらわなくてはなりません。

 

事務処理を片付けていると、コクラ城を守っていた、アキ王の親族の一人が病死したと聞かされる。

冴えない死に方だな。洗礼前だったのだね?じゃあ……いや、いいよ。誰か遣るから、デウスの作法に則って、葬儀を執り行ってやってくれ。私はすぐカワラへ戻らなくちゃならないので。

 

そして私がカワラへ戻ると、イルマン・ダミヤンが死んでいた。

こちらは、前線における、堂々たる戦死。

すなわち、マルチルだ。

 

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