戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1587/012.hmos

ブンゴから護送されてきた一団の中に、ラグーナがいた。ドン・フランシスコの旅立ちを見届けたパードレだ。

 

「ブゼンでカンパクに会って、戻ってきてからは、毎日のように泣いていましたよ。あまりに衰弱が激しいから、肉食禁止の誓いをやめさせました。

代わりに新たな信徒を1000人勧誘することを誓わせたのですが、これを果たせないまま、御主のみもとへ旅立たれてしまいました。

東廻り方面軍に随いてフナイ、ウスキまで来て、ツクミの邸跡に定住。そこでもずっと寝たきりで、奥方ドナ・ジュリヤの看病を受けていました。

サツマ敗北後、カンパクより、ドン・フランシスコ隠棲の地としてヒュウガ国の一部を与えるという異例の恩典が提示されますが、ドン・フランシスコは辞退します。自分がヒュウガへ足を踏み入れれば、必ずやまた戦争の火種になるからと。

それからほどなく、帰天しました。

最期の瞬間までヂシピリナをせがまれましたが、その一撃がとどめをさすのがわかっていたので、パライゾで好きなだけ打ってもらえと説得しました。ジュリヤ、セバスチアン、レジイナらが立ち会いました。三男のパンタリヤンと、当時まだ信徒だった長男は、従軍中のため葬儀へも来ていません」

 

セバスチアンは、出来損ないの次男だな。レジイナは、マセンシアの妹か。ちなみに……前妻のナタはどうしている?

 

「ナタは、今年、疫病で死にました。ウスキ城とその周辺の死体は坊主どもがまとめて焼却したんですが、一緒に焼かれたかもしれませんね。あの当時、城内にいて助かった者はいないと言われています」

 

ふうん。チカカタの消息はわかるか?

 

「チカカタはフナイで護衛に囲まれたまま引き籠ってました。カンパク軍が来るとすぐに出迎えて、ちゃっかり働き者の印象を与えることに成功した模様です。

ドン・フランシスコの葬儀にも来て、ゼンチョ相手に前王の偉業を演説していたみたいですが、そういうところにだけは異様に機転のきく男ですね」

 

ラグーナは4年間にわたりドン・フランシスコゆかりの品々を蒐集していたが、その多くは今もブンゴに隠されている。

今回いくつかの聖遺物を持ち出すことに成功したが、有無を言わせぬ説得力という点では物足りないものばかりだ。

いずれにせよドン・フランシスコの名は日本よりラウマでの方が轟いているので、鑑定書を付けて発送するまでが、私の仕事となる。

 

ナンガサキからは、地区長のローペスが護送されてきた。

まだ捕まえられていないパードレが若干名、潜伏している。カンパク軍が住民を監視・支配するやり方はサツマの役人どもと大いに異なっており、今後は新体制に特化した対応が求められるという。

さっそく討議を始める。

カンパク軍はナンガサキへ到着するやいなや、一切の争い事を禁止すると発令した。直轄領では特にこれを厳しく取り締まるようだ。

サツマの役人が逃亡したあとナンガサキは市民自治体によって統制されていたが、全員が解雇され、庁舎から追い出された。

 

新しい役人たちはすぐに独自の住民簿を作り始め、完了した地区から随時、武器の供出を求めた。戦場から拾ってきた鎧とか、武士が借金と引き換えに預けていった刀だとか、たいていの家には何がしかの戦利品が転がっているものだが、これらすべてが対象とされる。

最初は任意というのが小狡い。役人が土地に慣れてきてからは、容赦ない没収に変わるだろうと誰もが予想している。おそらくだが、任意で供出が進まなかった地区は要警戒対象にしておくとか、すでに調査は始まっているのだ。

普通の戦場でも、敵を武装解除することは決して容易な作業ではない。ハシバがすでに相当の経験を全国で重ねていることを、軽視するわけにはいかない。

 

依然、日本人の移動は制限されている。領主の許可証を持っていることが、国境を越えられるほぼ唯一の条件だ。

現在の我々にとって、許可証を希望通りに発行してもらえる領国はアリマだけである。

ナンガサキは深く切り込んだ入江の中にあり、港も一箇所しかないため、常に見張られている。領主も敵だ。今後、ナンガサキでの活動はますます厳しく抑圧されることになる。

 

フィラドは、現状、公然と我々が滞在できる唯一の地区だ。

周辺の小島も多く、夜間の出入りならしやすいが、領主は信用ならない。顔の割れている布教長や私は当分フィラドに留まらなくてはならないが、主勢力は少しずつアリマへ移動させよう。ドン・プロタジオならば、絶対に我々を裏切ったりすまい。

現在もアリマに匿われているパードレ・モウラを、抵抗勢力第一本部長とする。

アリマ領からならオオムラとナンガサキは陸伝いに交信できるから、日本人をうまく使って、連絡を取り合ってくれ。

 

行動はすぐに始められた。日没から夜明けまでしか動けないとなると、フィラドからアリマまでは往復に最短でも一週間かかる。ぐずぐずしている余裕はないのだ。

その次にキナイ勢がフィラドへ到着した。100人以上の大所帯だ。何をしでかしたのかと一斉に聞かれる。ええい静まれ。静まれ。静まれ。

犯人の目星はついているが、我々の安全のためにまだ明かせない。それよりも君たちが無事脱出できたことを喜びたいし、君たちからの情報も切実に必要なのだ。今しばらく時間をくれ。それでは……あれ?

ニエッキの姿が見えないが……

 

「OGSは潜伏中だ。あとで詳細を話す。それより私も情報を求めている。交換させてほしい」

 

もちろんだ、セスペデス。君が一番頼りになるのはわかっている。全体会議の前に、少し時間をつくろう。

 

カンパクからの指令は、翌日にはキナイへ届いたようだ。

かなりの尾鰭がついて、信徒たちを恐怖のどん底へ突き落とした。セスペデスは、アゴスチニヨの態度が豹変したことに最も驚いたという。

私は、カンパクの命令で我々のフスタが彼の主力艦を沈めた件を話す。

アゴスチニヨはそれを、コンパニヤが日本に宣戦布告したという風に伝えられたのではないだろうか。

まったくひどい話だ。これも敵による分断作戦の一端だろう。アゴスチニヨの誤解を溶かさねばな。

 

「ジュストならOGSと一緒のはずだ。アゴスチニヨがユノ島に匿っている。連絡はつく。アゴスチニヨの家臣が定期的にフィラドへ立ち寄るから、その者に託せば届けてもらえる」

 

なんだって?身柄を押さえたのか。よくやった……と言いたいが、不思議だな。

ジュスト殿が今度の陰謀に巻き込まれていることを、どうしてニエッキは知ったんだ?

 

「Lよ。あなたには耳の痛い話かもしれないが、包み隠さず語る必要を感じる。

OGSは長年にわたるLからの仕打ちに、烈火のごとく憤りを溜め込んでいるのだ。

OGSはいつも笑顔で信徒たちに接し、決して他人の悪口を言わぬことを信条としているが、ジュストやアゴスチニヨにはその胸のうちを打ち明けているようだ。かれらの間には強固な連帯感が醸成されており、必然的に、Lはひどい悪役という位置付けになっている。

ジュストは追放されてすぐ、アゴスチニヨの船でアカシに戻ってきて、OGSを呼び出し相談した。

ユノ島へ潜伏したことは日本人イルマンの掴んできた情報だが、私には知らされていない。OGSから見れば私はLの味方だからということなのだろうと思う。

Lよ、私は今ようやくこの状況を説明することができた。早急に分断を解消するべきだ。そのためには事態を正確に把握せねばならない。いったい、シモで、何が起こったのだ?」

 

私は激しい憤りで身の焦がれる思いだった。ニエッキめ、おのれの未熟さと愚鈍な仕事ぶりを棚に上げて、私を肴に誹謗中傷三昧か。カヅサ殿の男色を私と強引に結びつけた時から、おまえは人を陥れる悪巧みばかりしてきたじゃないか。ちゃっかり純朴な正直者の仮面をかぶる知恵だけ身につけやがって。

ジュストを人質に籠城戦のつもりか。よかろう、ユノ島ごとおまえを火炙りにしてやる。

 

セスペデスよ、よくわかった。ありがとう。分断を一刻も早く解消しよう。真相は、こういうことだ……

 

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