戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1587/013.hmos

デウスは、この地上のすべてを創りたもうた。

万物はデウスの思うがままに操られ、私たち人間が人間らしく生きるために提供されている。心優しき親が、子供のぎりぎり手の届く高さにお菓子を置いてあげるようなものだ。それは、必ず攻略できるようにつくられている。

私たちはこの試練に、喜んで立ち向かっていかなくてはならない。

 

悪魔もまた、デウスによる被造物だ。

いろんな種類がいる。ルシヘル、サタナス、デモニオ、モーロ人、坊主、そして、カンパク。

カンパクは最新型なので、なかなか手強くつくられている。どうすれば駆逐できるのか、まだ、よくわからない。

しかし私たちに倒せない難度であるわけはないのだ。正解を知れば、なーんだと思うはずだ。その攻略法を私たち自身で見つけだそう。デウスからのご褒美はどれほど美味しいかしれないぞ。さあ、じっくりと考えてみよう。

 

不世出の英雄カヅサ殿が暗殺されるまで、のちにカンパクと呼ばれるその悪魔は、じっと暗がりに隠れて爪を研いでいた。主君の死を知るや身を乗りだし、瞬く間にかつての同志たちの喉笛を切り裂いて駆け回る。

見た目は醜く、肉体的には無力だ。だがそれは、敵の油断を誘う、彼ならではの武器であった。

今ではそんなカンパクを二重三重に護衛する傀儡の群れが、強靭な複合装甲を形成している。もはや通常攻撃では、かすり傷さえ負わせられぬ。

手強い。手強すぎる悪魔だ。なんとも、心躍るじゃないか。

デウスはどれだけ私たちの戦闘力を高く評価してくれているのだろう、ってね。

 

今は深く反省しているのだが、私たちはカンパクに、まんまと騙された。カンパクはコンパニヤの味方と見せかけて甘い囁きで誘いながら、私たちの能力を吸い取りに来た。

合理的な思考、鋼の意志、勇敢なる冒険心、そして、罪を赦す慈愛の精神。これらすべてを、上辺だけとはいえ模倣されるまで、私たちは、しゃぶられ尽くしたのだ。

カンパクには日本全土を支配するという野望があり、シモを征服するまでは、東部戦線にも目を光らせておく必要があった。それまでは私たちを手懐けておかねばならなかった。

今年、シモの征服は完了した。もう容赦はいらない。化けの皮を自らかなぐり捨てた。悪魔の本性を顕わした。猛然と、デウスを排撃すると宣言したのだ。芝居なら第一幕最大の盛り上がりだね。

そしてカンパクにとってはここが絶頂点。あとは、ひたすら堕ちるだけなのさ。

 

さてと。

反撃の手筋だが、まずはアリマで橋頭堡づくりだ。

毎夜、フィラド各所から舟を出し、アリマ領への物資や人材の送り出しを続けている。

コレジオの機能も移す。ドン・プロタジオと家臣たちが全面協力してくれているからこぞ、できる業だ。反論などさせるわけもないがな。

裏切りの前科者シマバラ方面あたりが最近もまた騒いでいるらしいので、鎮圧のための武器供与も滞りなくやっている。抜かりはないはずだ。

ドン・バルトロメウもドン・フランシスコも帰天した現在、ドン・プロタジオこそは日本における唯一の聖人候補なのだから、この栄誉を手放したくはないだろう。よし、抜かりはない。

 

アリマの対岸アマクサ島では、少し愉快な状況が発生していた。

サツマ軍が、ブンゴ国タケダへアマクサの領主たちを連行し戦わせていたが、その中のひとりドン・ジョアンがタケダ領主ドン・パウロと通じ合って見事サツマを返り討ちした。この一件以来それまで互いに争いあっていたアマクサ小領主たちは皆、ドン・ジョアンを中心にデウスの良きしもべとなる。

アルメイダがしっかり育てあげたアマクサ信徒たちも、堂々とロザリオを掲げて島内を歩けるようになった。すべてが美しい、束の間の平和だった。

アマクサは、行政区分上はヒゴ国に属する。ここへはカンパクが子飼いの家臣を新領主として送りこんだ。

この男の着任後数日のうちに大きな事件が次々と起こる。巨船の漂着と、宣教師追放令だ。

 

ジャンクの漂着はアマクサとゴトウで確認されており、目下我々はこれらについて独自に調査を進めているが、ひとまずアマクサについて述べる。

 

それはフェリペナスからヌエバへ向かう船だった。南風に乗っての航海中で、純粋な遭難だ。船長は現地民に水の補給、上陸許可、船の修理に必要な資材の調達などを求めた。

新ヒゴ王は、乗員を皆殺しにして積荷をすべて奪い盗るか、それが無理でも救援物資を法外な価格で売りつけようと瞬時に画策したようだ。兵を引き連れ、島へ乗り込み、最初は自分たちをポルトガルの良き友人であると頓珍漢な言葉で着飾り、歓迎の態度で迎えたらしい。

アマクサにはその時パードレ・アフォンソ・ゴンサルヴェスが赴任しており、島の信徒たちと共に、遭難者たちの手当てや慰労に即対応していた。船の損傷は軽微で、夏風が吹いているうちに出帆できそうだった。

ここへ土地勘もあやふやな新領主が登場し、愚にもつかない自己紹介をわめきたて、失笑を買う。

追放令が届くとその言説は更に昏迷を深め、支離滅裂に紆余曲折した。武力も奮われるが、ブンゴ帰りの信徒の方がはるかに実戦慣れしている。新ヒゴ王は泣きじゃくりながら退却したそうだ。

やれやれ、デウスよ。アマクサの戦闘力はずいぶん低く見積もられたものですね。

フェリペナスのジャンクは既に日本を離れた。ゴンサルヴェスからは詳細な報告を聞く必要があるので、召喚するつもりだ。雑魚王がまた絡んでくるかもしれないから、先に代わりのパードレを派遣しておいた方がよいな。武装強化もしておくに越したことはないだろう。アリマ経由で手配させよう。

 

さて、次に考えなければならないのは、ブンゴとの連絡だ。

頽廃王ヨシムネは完全に敵と化したが、領内では多くの信徒が救済を求めている。パンタリヤン、ドン・パウロ、いまも潜伏中のパードレたち、そして市民に紛れこんでいるマテウスの団員。

かれら同士のつながりも維持しつつ、外部と通信を送り合える安全確実な経路を確立する必要がある。急務だ。

立候補を募ると、クリストヴァンとセスペデスが手を挙げた。頼もしい奴らだな。任せよう。ただし、セスペデスは早めに戻ってこい。キナイ情勢を分析するのに君の知恵を借りなくてはならないから。

キナイといえば。あれは、どうなった?

コレトウの娘が教会へ来たという話だが。

 

「ああ……ドナ・グラッサですか。受洗しましたよ。結局、あの一度きりしか、教会へは来ていませんが」

 

ん?誰が授洗したんだ?

 

「侍女のマリヤだと聞いています。Lはどこまで御存知でしたっけ」

 

君の報告でしか読んでいない。復活祭に突然現れ、男どもがタンゴジジュウの邸まで跡をつけたところまでだ。

ちなみに私も夫の方を探ってみたのだが、会えなかった。

 

「私も断片的にしか把握していないので、オーザカに駐在していたプレネスティーノに聞いていただく方がよいかと思いますが。あ、彼はいまアリマにいるのか。

……そうですね。彼女は、常に、厳しい監視の下にありました。

邸内は夫への密告者だらけなので、初めてデウスに触れたあの日以降、連絡はすべて彼女に味方する侍女や従僕が書翰を持ち運ぶ形で行われました。追放令でキナイじゅうが騒然となったとき、グラッサは邸から逃げ出してわれわれと同じ船でシモへ来ようと考えたようです。絶対にばれるし、カンパクの逆鱗にも触れるでしょう。そこで、すでに信徒となっていた侍女マリヤに授洗資格を与え、邸の中で洗礼させることで妥協させたのです。これを取り仕切ったのは、OGSです」

 

なんだと?また、あいつか。

それ以外に良策はなかったものなのかね?

 

「私もあとから聞いただけなので、それはわかりません。ただ……グラッサからの手紙に返事を書くのはいつもOGSの仕事でした。彼は非常な情熱をかけてグラッサに入れ込んでいたようですから。察してください。

だから私も含め、あの二人の間に割って入ろうとする者は、まず、いませんでした。OGSがキナイを離れがたくてユノ島へ潜伏しているのも、原動力は、そこにあるのでしょう」

 

私は、開いた口が塞がらなかった。

頽廃にも限度があるぞ、ニエッキ。貴様は、破門だ。

 

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