戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1587/015.hmos

シメアンは、ブゼン国に領地を与えられた。カワラからミョウケンまでの一帯だ。

 

ミョウケン城は引き続き、パンタリヤンが治めている。

シメアンの部下たちはさっそく領内の検地から始め、海岸に新政庁の建設も進めながら忙しい日々を過ごしている。

シメアンとの接触を試みたのだが、なかなか大変だった。監視態勢が複雑で厳しい。彼は信徒で、智将で、ジュストの親友で、その元家臣も大勢引き継いだ。

だからカンパクはシメアンの離反を常に警戒しているのだ。

 

周辺国となるアキ王やヨシムネなども、シメアンの動静を常に探っている。

かれらは追放令に乗じてすぐに坊主と手を結んだ連中だから、シメアンを排除したくなったらいつでも罪状をでっち上げてカンパクに密告するだろう。そんなのとも戦わねばならない我々は、慎重に接触を試み、なんとか連絡手段を構築した。

シメアンはニエッキの毒牙に染まっておらず、私とは特に半年間戦場を共にした仲間意識もあって、率直かつ正確無比な情報をくれる。

カンパクは今夏定航船が訪れなかったと聞いて、もう自らの迂闊さを思い知った。絹やサリートリ、黄金など、日本が交易に依存している物資は多い。すでに過ちは認めているが、あれだけ檄を飛ばした手前すぐに撤回してはみっともないから今はほとぼりを冷ましているのだ。

来夏までには覆水も盆に返るだろう。

無用な騒ぎだけは起こさず、静観していればよい。とのことだ。

 

追放令の一件がアマカウへ伝わるのはこの冬だ。

今夏定航船が来なかった理由にはならない。そんな勘違いも含め、カンパクの無知と直情傾向がさらけ出されたわけであるが、ガレオン要請は取り消さないよ。たっぷり反省の機会を与えた上での政権交代を演出しようではないか。

それまでシメアン殿も静観していてください。

 

大山を鳴動させたかに思われた追放令を、今も本気にしているのは一部のネズミどもだけだ。

愚かな役人が、カンパクが禁止したのだぞというその一条だけを根拠に、見逃してやるからと賄賂を要求して回る。そんな光景に触れるたび、信徒も求道者も、坊主ですら、こいつらに正しき道など示せやしないことを容易に察しよう。

各地の信徒はパードレを求める。

隠れ家を準備して、フィラドへ連絡してくる。我々は精査した上で、送り出す。

追放令以後、求道者はかつてないほど真剣な顔で教えを聴くそうだ。吞み込みも早く、実際、信徒数は急増している。しかも質の高さを伴っている。結婚や葬儀を昼間できなくなったり、遠足しながら路傍の地蔵を蹴倒していくのを控えたりなど種々の制約もついて回るとはいえ、我らをめぐる環境はむしろ好転しているとも言えるのだ。

デウスはまさしく、人智を超えた道の拓き方をされるものだということ。私たちは粛々とそのお手伝いをすればよいのである。

 

領主の統治能力は、我々がその地方を拠点化するにおいて、大きな差となって顕れる。

カンパクは統一した方式で全支配領域の検地を行い、この数字を基準にして論功行賞における土地の再分配を行うのだが、このやり方の重大な欠陥が明らかになってきた。

来たばかりの新参者は、任地の歩き方を知らない。

所要時間も見積もれないし、危険地帯がどこにどれだけ潜んでいるかもわからない。

キナイから引っ越してくれば、言葉すら齟齬をきたす。

自分たちは手柄を立てた殊勲者なのだぞという驕りを振りまきながら入ってくると尚、いけない。戦争しに来ただけであっても、その土地を知らないことは大きな不利となる要素なのに、統治となると、いくらでも在地領民に足をすくわれる。

信頼関係も育めずに断絶が進む領地では、我々は容易に地下組織を強くできる。アマクサやナンガサキが代表例だ。

攻撃対象は領主と役人。知らぬは本人ばかりなり。

 

一方、その土地に根ざし、領民とも一体感を培ってきた領主の下でなら我々は堂々と往来を闊歩し、領国のより良き発展のために意見を述べ、行動し、責任を持つ。

アリマが代表例だし、シメアンも新地でこの形を理想としてくれている。

その差はあまりにも大きいのだが、カンパクの単純計算式領地転換方策では、即席無能官僚ばかりが生まれやすいと実証されつつある。

特にアマクサでの失敗は、社会実験の貴重な症例報告として語り継がれるべきだと思う。私にはその余裕がないが、誰かがまとめておいてくれないものかな。

 

フォルナレートが、ゴトウより報告をくれた。長い。でかした。もっと書け。

 

アマクサの漂着船はフェリペナス発だったが、ゴトウのジャンクはアマカウからだった。密貿易船だ。船長はポルトガル人とチイナ人の混血。

ゴトウ領主は、その時点で追放令が届いていたのかどうか定かではないのだが直ちに船員たちを捕縛し、牢に入れた。

船も積荷も没収と、海賊も顔負けの大悪党だ。

 

フォルナレートたちもすぐに捕まった。牢内で事情を聞く。作戦を立て、衛兵を通じて家臣たちと交渉する。ひとまず牢からは出してもらえ、監視付きながら、城内である程度の自由を確保した。

ゴトウには鹿が多く生息し島民は肉食に馴染んでいた。昔、誰かからもこの話聞いたな。トルレスが布教長をやっていた時代だったはずだ。

ゴトウでの布教は昔それなりに盛んだったが、寂れて久しい。今回、数十年ぶりにパードレが訪問したことで島の信徒は狂喜する。

ところが現領主がきわめて狭量な性格の臍曲がりで、猜疑心の塊なのであった。

フォルナレートが「殿をパライゾへお連れしたい」と言うと、「わしを殺すつもりか!」と返ってくる。

こんな被害妄想狂に比べたらカンパクの方がずっとかわいいものだ。冬風が吹き始めたのでジャンクは帰っていった。フォルナレートは、島民に引き止められているのでもう少し滞在するという。

 

大収穫なのは、混血の船長から、今年定航船が来なかった理由を聞き出せたことだ。

 

なんと、ドミンゴスが戻ってこなかったから、代わりの船が手配できなかったのだという。

なんとも情けない。アマカウでは私船を擁する商人集団がいくつもできていて、大半がフェリペナスとの交易に臨む。

日本が選ばれない理由はいくつかある。

時期が制限されること。凶悪な暴風雨に遭遇する危険が大きいこと。旧ポルトガル王室独占事業という建前が、近年非常に手続きを複雑にさせていて面倒なこと等。

ところが今年のように日本便が出なくなると、こっそり出かけて儲けを独占できるのではと考える密貿易船も現れるということだ。

この船長も夢を抱いてやってきたわけだが、目指したフィラドへは辿り着けず、牢に入れられるわ積荷は奪われるわで大損害を蒙った。

二度と、日本へは来ないという。

この噂が広まれば、今後ますます、日本を目指す挑戦者がいなくなるかもしれない。

 

合点はいったが、なんとも残念なことである。

ドミンゴスだって、やさぐれていて早く帰りたがっている。帰りたまえ。ただ、伝えるべきはしっかり伝えてほしい。

来夏は決戦の一番勝負なのだ。必ずガレオンを重武装してよこしてくれ。

見返りはあるぞ。

カンパクを仕留めたら、奴がオーザカに溜め込んでいる黄金をすべて吐き出させる。だから一人でも多くの兵を掻き集めてほしい。

 

カンパクは、たとえ気の迷いだとしてもデウスに楯突いたのだ。これほどの大罪がただで赦されると思うな。だから我々が鉄槌を下す。

その次の年から、またあらためて、商売に励もう。

 

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