戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1589/001.hmos

ドン・プロタジオの城があるアリマ領タカクへ、12名のパードレを招聘した。

 

ここで最終決定を作成する。

各地で、場合によってはイルマンや日本人も参加させたりしてきたが、いよいよここからは責任と権限を有する首脳陣だけによる、本音での殴り合いだ。

 

何人かは白紙委任状を出してきた。結局、私を含めて参加者は7名である。

コエリュは最後の署名をさせるために必要だが、椅子に座らせるとお漏らしを始めるので、別室に閉じこめた。よって、実質6名となる。

 

この中では私は、ただ一票を投じられるだけの存在にすぎない。たすかる。気が楽だ。

裏切者の女たらしも来ているが、今日は何でも喋らせてやろう。

そのくらい、私の心は、澄んでいる。

 

最大の焦点は、ヴァリニャーノへどう伝え、彼がどう動くかだ。

ペレイラによると、追放令を知った彼はすぐにゴアを発ち、日本へ向かうと連絡してきた。そろそろアマカウへ着いているかもしれない。だから、今夏、やってくる。

ペレイラには、日本からの報告を持ち帰る任務が課せられた。

私からの年次報告はドミンゴスにも託したし、88年度分も相当な量を書き上げているが、重要なのはそれらも踏まえた上での、具体的な善後策だ。

最終決定権は、ヴァリニャーノが持つ。

ただ日本準管区における、総意としての最善策も提出しておく。それを、ここで、つくるのだ。

では、始めよう。

 

1番目。パードレ・ペドロ・ゴーメス。

83年来日。主にブンゴを担当してきた。

「パードレ・ヴァリニャーノはコンパニヤの巡察師として来日することになるが、同時に、インディア王の使節という肩書きを持たせるべきだと思う。パードレというだけでは、カンパクは会おうとすらしないかもしれないからだ。

それから使節の安全を確保する軍隊が護衛することは国際法上の常識であり、カンパクにもヴァリニャーノにも、これを認めさせた上で会見を設定する必要がある。アマカウに軍事援助を期待できないならば、マニラに依頼するべき。強力な軍隊が後ろについているのといないのとでは、外交の展開はまったく違ったものとなる。

武力行使は最後の手段として原則封印だが、その力を見せ合った上で交渉に入ることは、互いの勇敢さや自制力を尊重し合う関係にもつながる。一日も早く彼我の関係修復を図るためには、力も見せておいた方がいい。以上が、私の意見だ」

 

2番目。ニエッキ・ソルド・オルガンティーノ。

70年来日。ずっとキナイ担当だった。日本語が堪能だ。

「私は武装も軍事援助も反対だ。パードレ・ヴァリニャーノには、あくまで巡察師として、友愛の体現者として、来ていただきたい。

あれほどコンパニヤに好意的だったカンパクが激昂したからには、それなりの原因があったはずだ。それを説明してもらい、悪かったところがあれば認め、謝罪し、改めよう。その姿勢を示すことで関係修復を実現するべきだと考える。

日本にはまだまだ、虐げられた、かわいそうな人々が多くいる。一日も早く、彼ら彼女らに笑顔を取り戻させたい。

われらが範を示すことで、日本人からも武器を捨てさせられる。実際カンパクは日本全土からの武器撤廃という未曾有の大事業に着手している最中であり、我々がこの流れを遮る原因になってはならないと強く危惧する。

イエズスに倣おう。それが我々の使命だ」

 

3番目。パードレ・ベルシヨール・モウラ。

77年来日。アリマ担当で、セミナリヨの院長をつとめている。

「パードレ・ヴァリニャーノの性格を考えるに、彼は武装化して乗りこむことを拒絶するのではないだろうか。

そしてカンパクの性格を鑑みるならば、彼がイエズスに倣える人物になりえるとは到底思えない。

丸腰のヴァリニャーノは、カンパクからどこまでも屈辱的な条件を突きつけられ、それを呑まざるを得なくなるだろう。たとえヴァリニャーノが望んでいても、私は、彼の来日自体が危険だと考えてしまう。

ところで、マニラへの軍事援助要請は、早めにしておいた方がいいんじゃないか。とにかく状況を知らせておくのだ。私が交渉役として行ってきてもよい。許されるなら、その後でラウマへも赴き、日本の正確な実態を伝えてくる」

 

4番目。パードレ・ゴンサロ・ラベロ。

77年来日。ブンゴ担当のひとり。

「パードレ・ヴァリニャーノは巡察師として謁見を申し込む。別にインディア王使節を立て、外交については使節が対応する。という形でならどうか。

使節は武力行使に積極的だが巡察師が何度もそれを制止する、という小芝居を絡めるのもよい。宣教師がいるからこそ布教区は平和でいられるのだということをカンパクも納得するのではないだろうか。

ところで軍事援助をマニラに依頼するとなると、インディア管区だけではなく、フェリペナス総督との調整も必要になってくるのだが、ここに利権のもつれは生じないかな。マニラも、兵を出す以上はそれなりの取り分を要求するぞ。

事前にしっかりと協議しておかなくてはならないだろう。巡察師が来日してからでは間に合わない。問題があるとしたら、そこだな」

 

5番目。パードレ・フランシスコ・ラグーナ。

77年来日。ドン・フランシスコ専属だった。

「すまないが、そもそも、追放令は、なにが原因だったんだ?

私は今もそれがわからないでいて、だから、巡察師に何をしてもらうべきなのかも、明確に答えられないのだ。発端がわからず、こじれにこじれているのが今の状況のように感じられる。今日もここまで来て、聞いていたけど、やっぱりわからない。誰か、教えてもらえないだろうか」

 

最後に、私だ。ルイス・フロイス。

63年来日。日本布教長パードレ・ガスパル・コエリュの秘書をしている。

パードレ・ラグーナの疑問に答えよう。

追放令は純粋に政治的な意図で発せられた。カンパクは類い稀な人民支配体制の構築者であり、一見、すべての勢力に公平な恩情を与えているようでありながら、個別に対立を煽り、強い者から無力化していくという手練手管に熟達している。

彼は当初こそコンパニヤを厚遇していたが、同様にカミ・フォトケ宗派へも優遇措置を怠らなかった。

束の間の自由競争市場で、デウスの信徒は急増し、坊主どもは劣勢からの挽回に必死となる。陳情が繰り返され、ここでカンパクも脅威を感じ始めたのだろう。デウスを追放し、坊主たちは仲良く並んで跪けとする政策を承認した。

ちなみに黒幕はヤクインという側近だ。そこまで調べがついている。

いいかな、諸君。これは極めて不当な、およそ道理にも反した愚策によってもたらされた混乱であり、コンパニヤは何ひとつ、過ちを犯してなどいない。

カンパクは我々のことを、ゼンチョにしては非常に念入りに研究してはいるが、あくまで、自分にとっていかに利用価値があるか、という観点からでしかない。彼を改心させようと試すのは危険であり、たとえ脅迫されてもカンパクに洗礼を授けてはならないと私は考えている。

しかしヴァリニャーノが誤った予備知識を持って、あるいはまったく予備知識を与えられないでカンパクと対面すれば、カンパクは易々と、相手の同情を惹くだろう。私が最も恐れるのは、その可能性なのだ。

 

我々は議論を重ね、入念に報告書を作成した。

どう読まれても誤解が生じないよう、曖昧な表現を避け、明白な事実だけを記述し、切実に救援を求めていることを力説した。

 

最後にコエリュの署名が必要だったが、ペンすらまっすぐ握れないので、私が書いた。筆跡なら完璧だ。

それにしても、こんな仕事すらつとまらないか。罰だ。三日ほど、食事抜き。

 

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